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    直弥@

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    直弥@

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    別れ話(ガチ)w
    それでもこの二人は変わらないなあと
    ちょこちょこ話を勧めて行かなければ…

    #長編
    long

    長編 肆 寝台のスプリングが鳴く。
     仰向けの中原を囲うように手をついた太宰は唇が触れる直前に呟いた。
    「ねえ。別れよう」
     それは存外、穏やかな声で告げた言葉。
     中原は口端を上げる。
    「だろうな」
     対する中原の声も落ち着いたもので、太宰は面白くないと言いたげに口端を下げた。
    「別れ話だというのに随分、落ち着いてるんだね」
    「そりゃ、解ってたからな」
     言いながら中原は太宰の右目の縁をなぞる。くすぐったいのか太宰は微かに目を眇めるが、手を払うことはない。
    「俺らがこうなったのは、相棒で居られなくなったからだ」
     横浜を霧が包んだあの事件、それが終わりだった。
     ポートマフィアの双黒は、あの日、終わりを告げ、太宰によって新しい双黒となる若い芽が芽吹いた。三刻構想を含めて、この横濱という街を護るための存在。
    「双黒はポートマフィアに属する。だから、手前は双黒を、俺の相棒を辞めたんだろ」
     力が偏るのは街の均衡を崩す。何より。
    「君の汚辱は破壊の力だ。君自身を含めて私が止めなければ全てを破壊する。それは、街を護るための意に反する」
     中原の手に頬を擦り寄せて太宰は目を細めた。かつて、最年少幹部などと呼ばれていた頃には浮かべることができない柔らかな表情を中原は存外気に入って居る。この死にたがりが本気で護ることを覚えたが故の表情だからだ。
    「それでも他に隣に誰かを置くのも嫌で、なんだかんだ肩を並べるのは互いしか居ねえてんで手前が駄々を捏ねてこの様だ」
    「駄々は捏ねてないし、互いしか居ないっていうのは中也も同じじゃぁないか」
    「知らねえなぁ」
    「可愛くない」
     言いながら太宰は中原の掌に口吻る。その感触に中原が少しばかり眉を寄せるも会話は続いた。
    「今度は相棒に戻る必要ができた。だからこの関係は終わり、それだけだろ」
    「話が早くて助かるよ」
     中原の手を捕まえて、掌から手首、そして腕へを唇を移動させながら太宰は笑う。
    「そうは言っても、双黒には戻らないけどね」
    「手前がポートマフィアに戻るなんて思っちゃ居ねえよ」
     二の腕の内側を舌でなぞる太宰に中原は少々呆れた表情を見せた。
    「話すんのか、やんのか取り敢えずどっちかにしろよ」
     言われた太宰は言葉を止める。そして今度はその唇に口吻るのだった。

    「んで、決行は?」
    「七日後」
     一頻り戯れた後の気だるい空気のまま、中原が問えば太宰は簡潔に答える。
    「あー。思ったよりあんな。挨拶ぐれえはできっか」
    「私は引き継ぎ資料を作れとせっつかれてるよ」
     太宰の言葉に中原が胡乱な視線を向けると苦笑を浮かべて居た。
    「流石に迷惑をかけるだろうからね。辞表を書いたよ」
     それは太宰のけじめと覚悟なのだろう。そうなれば誰も止められない。あの賑やかな面子がどんな顔で太宰を見送るのかは解らないが、この男も残酷な決断をしたものだ。最もその理由の一端を担っている中原は、責めることはできまい。
    「中也は?」
    「あ?」
    「抜けるんでしょ?ポートマフィア」
     当然のように軽く言わる。それでも他でもない太宰が、その重さを理解していないはずはないのだ。軽薄に見せているのは、中原を慮ってのこと。気付かずにいれば一発は殴れたものを、と小さく舌打ちをして中原は答えた。
    「それこそ迷惑をかけられねえからな。首領も、まあ、解っているだろうし問題はねえだろ」
     その言葉を受けて、暫し何かを考えた太宰が笑顔を浮かべて提案する。
    「そうだ!中也も辞表を書き給え」
    「あぁ?」
    「いやぁ。中也から辞表を受け取った森さんが、どんな顔をするのか見ものだねえ」
     心底意地悪く楽しげに笑う太宰に中原が頬を引き攣らせた。
    「マフィアが辞表」
    「そう」
    「否、ねえわ」
     切れ味鋭く答えると、太宰は目を笑みに形作る。そこに浮かぶのは先程までのものとは違う闇が揺蕩う瞳。それを認めた中原は逃れない未来を思って額を抑えた。
    「まあいいわ。それより部屋を引き払うことになるんだから、明日、帰るときに捨てるもん以外は持って帰れよ」
    「あぁ。そうか。部屋の掃除はどうするの?」
    「面倒くせえから業者に全部捨てさせるわ」
    「まあ、そうなるよね」
     情人となった二人が過ごすためだけに借りていた部屋だ。その関係が終わるとなれば部屋そのものが要らなくなるのも当然。互いの仕事のこともあり、見られて困るようなものは、そもそも持ち込むことはなかった。
    「なんだかんだ言って、君とのこの時間も悪くはなかったんだけど」
    「未練でもあんのか?」
     心底、不思議という色を灰簾石に載せた中原に太宰は少しだけ考える。
    「どうかな。確かに悪くはなかったけど、やっぱり相棒のほうがしっくり来るからねえ」
     未練、と言われるとそこまで思い入れはない、と続ける太宰に中原は笑った。どちらにしても隣に立ち肩を並べるのは互いしか居ないのである。
    「お互い様ってやつか」
     呟いて中原は残りの時間にやるべきことを考えるのであった。
     
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