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    Layla_utsusemi

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    Layla_utsusemi

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    一次創作【空蝉日記】のショートストーリー。傍に誰も寄り添ってくれない時の話。

    【空蝉日記 短編】身を焦がす孤独「はぁ〜……困ったな、全然熱が下がってない……。」

    荒い息混じりに一人呟く少年。手に持った体温計には38.8℃の数字が表示されており、それを持つ彼の手も熱を帯びていた。
    ボーッとした頭と意識を抱えたまま、彼はスマホを手に取ると、自らが通う学校へと連絡をした。

    「はい、星月 叶夜です。はい……いえ、ゴホッ……まだ……熱が下がらなくて……。もう一週間は休むことになりそうです。ゴホッ……はい、ありがとうございます。」

    咳込む喉を抑えながら、自ら担任へ事情を説明すると電話を切る。

    本来、こういった欠席の連絡は保護者が行うべきなのだが、幼くして両親を火事により亡くした彼は自らの身の回りの……その全てのことを一人でやらなければならなかった。

    (ご飯、どうしよう……作る体力無いな……。買い出し行こうと思ってた直後に熱が来たから何も無いし……。)

    気怠い体を動かしながら冷蔵庫の中を確認するが、食べられそうなものは無かった。正確には、風邪の時でも食べられるようなものが無かった。

    (お粥とかスープ……作りたい、けど……キッチンに立ってるのもしんどいな……。)

    結局食事を摂るのは諦めた彼は、そのまま部屋の端のベッドへ向かおうとした。

    その途中、テレビから聞こえてきたニュースの内容がボーッとしていた彼の頭を悪い意味で目覚めさせた。

    〈昨日午後9時頃、○○県○○市の○○商店街にて火災が発生し、周辺の店舗と民家が多大な被害を受けました。火災は近隣住民の通報により発覚し、火元は未だ分かっておらず───〉




    ブツッッ

    ──キャスターの解説を最後まで聞くことなく、乱暴にリモコンの電源ボタンを切った。

    荒くなる息と鼓動。上手く呼吸をしようにも、先程までは出来ていた息を吸って吐くという行為が苦しかった。

    一瞬ではあったが、テレビの画面に映された業火……あれは、あれは確かに、あの時、母と父の身を焦がし灰へと変えたあの光景と同じだったのだ。

    「はぁ……はっ……はっ……落ち着け、大丈夫……大丈夫。」

    暗示のようにそう呟きながら、叶夜はタンスから取り出した薬を口の中へ放り込んだ。精神安定剤だった。

    彼はそのまま逃げるようにしてベッドへ潜り込むと、顔深くまで布団を被り、全てから目を背け思考を放棄した。

    頭が熱く重い。喉の奥がヒリヒリと痛む。

    こんなに辛いのに、誰も傍に寄り添ってくれない。

    誰も「大丈夫?」と聞いてくれない。

    こういう時、普通の家庭ならば親が傍で看病し、作りたての暖かな粥や雑炊を食べることが出来たりしたのだろうか。



    「………………寂しい───。」

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