どっかの魔界の魔王城-その1-無数にある世界の一つ。この世界にも魔界がある。
広大な魔界には、魔王城しかない。
あとは、荒涼とした地に無数の魔物がうろついているだけである。
夕暮れ時、魔王シャイターンが城の門をくぐった。
彼は出張で一週間留守にしていた。城は管理人と、城の住人達に任せてある。
予定通り夕食の時間までに帰ってくることが出来た。
彼は早速ウンディーネを探して、真っ直ぐエントランスへと向かった。
「いさ、また夕飯前にポテチなんか食べて」
魔王の頭上高くに浮いている小柄な水の精霊は、ふくれっ面をした。
足を伸ばして座る姿勢で、プカプカと浮遊している。
彼はジャンクフードの袋をひざに抱えていた。
「水波は相変わらずだな」
怒られるのも久しぶりだと言いながら高度を落とす。
透き通るような薄青色の細い身体が、魔王の胸に飛び込んできて着地した。
魔王も彼をぎゅっと抱きしめる。
「寂しかった」と水の精霊。頬から耳ヒレにかけてうっすらと紅潮している。
魔王はそのまま抱きかかえて部屋に戻ろうとしたが、止められた。
「夕飯が先。今日はカレーなんだ」
夕食だけは、魔王城の住人全員で囲む。
この日の料理当番は庭師で、彼の料理は特に美味しいと好評である。
二人で食堂へ行くと、城の住人が全員揃っていた。