Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hirata_cya

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    hirata_cya

    ☆quiet follow

    和久井譲介の親とテツの話。自分用のメモなのでだらだら長い。

    譲の親の話結論として、譲介は実の親と関わらない、謝罪を受け容れず糾弾もせず事情だけ知って離れる、という結論を導き出している。

    そしてそこに至るまでにテツはいろいろ、それはもう色々とお膳立てしたわけだけれども。
    その際に彼らが親としてどうかをテツが保護者の立場で判断し裁定したのか?と考えてみると、おそらくそうではない。

    テツがしたことは、親から譲介への働きかけを徹底的に封じ、譲介に選択肢と逃げ場を作ること、になる。
    許すのも糾弾するのも、決めるのはあくまで譲介ということ。

    母親は、徹くんの存在が無かったらおそらくもっと話が簡単だった。関わるか関わらないか、関わるなら許すか許さないかだけなので。
    ただ徹くんという「譲介ならば今すぐに命を救える」存在が乗っかってきたことでややこしくなってしまい、調査から裏工作を通って手術までこなさなければならず、テツ大忙しが確定する。
    まず鈴子さんを探して徹くんのことを知り、今の夫に気が付かれないようにひとりだけ喫茶店に呼びだして、譲介の健在を伝えた上で鈴子さんに親子と名乗るなと条件を突き付ける。
    これはおそらく何も知らせずに顔合わせをすると、年頃と面影から鈴子さんが「息子である」と気付いてしまう可能性があるから。
    気付かれたら鈴子さんは母親であると名乗る。
    そのうえで謝るだろう。
    ずっと探していた、駅に置き去りにしたあの日、ほんとうは戻るつもりだったけれど事情があって探せなかった、あの日この手を離さなければ、ごめんね、と謝られたら。
    譲介の性格と性質上、弟を救わないという選択肢は無くなってしまう。
    故に母親から名乗るという手札をまず潰しておいて、それから譲介に連絡を取り、突きつける。
    復讐するかしないか、という言い方で。

    救った場合自分にも少なからず痛手はあるが、相手は自分が救わないと確実に死ぬ、という場面で自己犠牲を迫られ、自己犠牲をしない、助けない。という道を選んだとする。
    外野からなんて冷たい人間だととにかく批判されるということもあるけれど、相手が自分にとって嫌いな人間でなかったのなら、たいていは凄まじい自己嫌悪と罪悪感に潰されそうになるだろう。自分が殺したようなものだと思い詰めてしまうこともあると思う。
    だから実質、救う、しか選択肢が用意されていないことになる。

    この袋小路でテツが用意していた言葉が「復讐」。
    母親への復讐だから、徹くんを救わなくてもお前に咎はない。そういう逃げ道。

    でも譲介は「助ける」と決める。

    助ける、と決めたときに、これを正規の手続きでやろうとすると、名乗らなくちゃいけない。名乗れば鈴子さんはやはり涙ながらに謝罪するだろうし、おそらく今の家族がある以上一緒に暮らすということはできなくても、きっと母親として繋がりを持ちたがる。ここでも譲介に選択肢がない。
    正規のやり方であったなら。

    テツはここを力技でこじ開ける。闇医者という立場とコネクションを最大限に活用して、譲介の肝臓を表向き脳死患者から提供された肝臓であるということにして、和久井譲介が「名乗りをあげるか、あげないか」を彼の意思に委ねている。
    そして名乗らない方向で考えているであろう譲介に、終わったあとに名乗り出ればあの母親は泣いて感謝するだろうと悪態に隠して最終確認までしている。
    この非常に失礼なセリフ、おそらく譲介の気が済むなら一発くらい殴られても良いと思って言っている。
    案の定怒らせて拳を食らいそうになる。テツが悪いよ。わざと怒らせようとしてるの察した観察力と洞察力の高いずと先が止めてくれたけれども。
    「助ける、名乗らない」の譲介の意志がもう揺らがないのだと確信できる術前ギリギリまで待ってようやく捨てられたわけではなかったと教える。
    譲介がやっぱり肝臓提供をやめると言える時間が過ぎて覚悟が本物なのだと判断してから教えたのは、ほんとうは捨てられたことを隠す嘘ではなくて、その事実が「肝臓を提供する」という判断を大きく左右する材料になりえるから。
    おそらくテツは譲介が肝臓を提供しないと決めたら、捨てられたわけではなかった、という真実を明かさないまま隠し続けたんじゃないかなと思う。
    最後の最後まで逃げ道を閉じない。そして譲介が逃げたとしてもきっとテツはそれを糾弾しなかった。
    徹底して母親に選ぶ権利を与えず、譲介がどうしたいか、を丁寧に確認して選ばせる。

    父親のときも同じで、こちらは別れた時が幼すぎるし大して育児にも参加していなさそうなので小細工せずに会わせても気づかれないだろうという判断で同じ監禁場所に突っ込んで名乗るか名乗らないかの選択肢だけ与えた。
    この逃げ道を必ず残す、選択肢を実質ひとつにしない、相手を責める資格があるのは自分ではないと理解している、がポイント高いところ。
    逃げ出すことも進むことも譲介が選ぶことであって、譲介の未来で譲介の世界。権利は徹底して譲介に与えられ、それは親に対する配慮ではない。
    鈴子さんに最後に息子の手を握る時間を与えたのは神代一人であり、京介に息子の消息をはっきり教えたのは黒須一也。テツじゃない。

    で、ここまで細やかに選択肢を潰さないようにして選ばせているのに「死にかけた弟/父のもとへそもそも赴かない」っていう道は何故か無い。いつものハマーで誘拐みたいに迎えに来る。
    このあたりは、たぶんテツのトラウマが原因。
    テツの父親は獄中死、兄は助けようとするも手の届かないところで爆死、何より追い求めた西城カズヤは(おそらく)テツが何かする間もなく病死で、そのことを悔いていると思われる。
    少なくとも悪夢で兄の髪の毛の姿を死神が取るのだから真田徹郎の後悔が真田武志の形をしていることは明白。
    死んだら取り返しがつかない、ということを、テツはとてもよくわかっている。
    「このまま弟の存在を知らずに弟が死んで、自分がいなくなってから母親と再会し、死んだ弟の存在を知りそのときにもし居たら助けられたのにと苦しむかもしれない」「このまま話すら出来ずに父親が死んだら、もし後で会いたくなってもその術はない」と思ったから、引き合わせてくれたんだろうなと思う。
    テツのスタンスを要約すると「相手が死にそうなら手錠付けてでも引き合わせて選択させる、その選択が最善ではなかったとしてもあくまで本人に選ばせる、最善を掴まなくともそれによって生まれた負の感情は引き受ける」

    さすが気が付いたときには何もかも手遅れでなすすべなく此岸に置いていかれるプロ。
    テツのことを考えれば考えるほどお前譲介大好きじゃん……愛じゃん……責任感だけでここまで細やかにやってるとしたら聖人じゃん……と静かに暗い部屋でゲンドウポーズをキメるしかない。

    完敗だ。もう大人しく譲介に死に水を取られてほしい。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖👏😭😭😭😭👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works