応答すべき彼からの着信「あ〜クソ」
やっちまった、スマホがない。どこかに置いてきてしまった。たぶんロッカーの中だろう。まあでも、心配する必要はない。昼時の食堂には、タイミングよくあいつが現れるから。
「なあ、ルースター」
鼻歌の主を見ることもなく声をかけた。
「なんだよ」
その返事は呼びかけた名前と同じ人間の声だった。振り返ると、ルースターは退屈そうにあくびをしているところだった。俺の後ろに並び、同じく俺の方を見ることもなくただ配膳される昼飯を目で追っている。
「ちょっとスマホ貸してくれ」
「自分のは?」
「ロッカーに入れてそのまま忘れてた」
あっそ、とルースターは短く呟き、トレーを片手で持ち直してポケットを探った。そして「ん」とスマホで俺の肩を叩いてそれを寄越した。やはり海軍で持つべきものは、深入りしてこない友人だ。
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