黒崎家長男黒崎白は下の双子と末っ子に毎日振り回されてます。
可愛い可愛い弟共だから双子が最近クソ生意気になろうが末っ子が自称パパと見た目優男の変態に狙われててそれを逆手にパパ活をしようとしても受け入れ…末っ子のは受け入れねえけどな?隙あらばしようとする末っ子を引っ捕まえるのも骨が折れる。
「無月、テメェは何度言えば理解すんだ。あの二人から金を巻き上げようとすんのはやめろっつったろ。俺の胃に穴開けてえのか」
「お前の胃に穴が開くわけねえだろ。強靭な胃袋しやがって。…でも、金はいくらあっても困らねえだろ」
「困らねえけど困んだよ。出所が問題だ」
猫を引っ捕まえるように摘んで連れ帰った末っ子とリビングの食卓に面談のように座って話していたが、首を傾げる末っ子に項垂れる俺。
分からねえのか、そうか。マジか。俺の胃に穴が開くのは時間の問題?毎回阻止しようとするたび何故か俺も誘われてクソ面倒くせえんだよな。
「俺の言ってることが分からねえなら尚更パパ活なんてもんはやるな。分かってもやるな。言い方が違うだけで援助交際だし、身体求められてもテメェが相手してんのは狡猾なオトナだから逃げられねえぞ。いつも俺が助けられるわけでもねえんだ注意しろ」
少し強めに言ってグシャグシャと頭を撫でれば無月は少し間が合ったが素直に頷いた。これが一護なら手を叩き落とされるし、コンなら子供扱いすんな!って言われるがまだ無月は素直だった。この素直さも来年位にはなくなんだろうな。経験的に。
「じゃあ俺はバイト行って来るから、留守番頼むぞ」
俺が高校一年、双子は小学六年、無月は小学五年という時に俺たちは親父とお袋を亡くした。交通事故だった。
両親の親戚なんて知らなかった俺たちだったけど近所の人や役所の人の手助けがあって無事葬儀をあげてやれた。そして葬儀が終われば他にも色々な手続きが待っていて、その中で兄弟をどうするかって話で双子と末っ子は養護施設に入れたらどうかと言われた時には衝撃で立てなくなりそうなほどの震えが走った。
確かに俺一人じゃどうにも出来ないかもしれねえ。俺もまだ子供で一護達に苦しい生活をさせるより養護施設の方が良いだろう。でも俺はバラバラになるのが嫌で、もう誰かを失うのは嫌で俺の我儘で兄弟全員で暮らす事を決めた。それで大丈夫かと問うてくる近所の人も役所の人も俺を、俺たちを気遣ってくれていた。どちらの選択も苦しいと分かってるから賛成も反対もしねえ、ただ大丈夫かと問うてる。
俺が大丈夫と答えようとした時、そこで現れたのが胡散臭い見た目の駄菓子屋の店主という浦原喜助。その後口八丁で丸め込んで諸々の書類も終わらせた後継人である。なんでも親父とお袋と仲が良かったとか知人だったとか恩人とか先輩後輩とかお得意様とか。関係性はっきりしてねぇなオイ。
まあそんなこんなで色々ありながらも引っ越す事もなく両親と住んでいた家で四人生活を始めて一年とちょい。俺が高三、双子が中二、末っ子が中一となった。
双子の一護とコンはそっくりな見た目の割に中身が真逆すぎて双子なのに余裕で見分けがつく。コンは兄弟内で一番表情が豊かで周囲と溶け込むのは早いし女好きではあるが友達以上にはなれねえ感じが老若男女問わず愛され遊ばれている。一護は愛想はねえし喧嘩を売られに売られているが優し過ぎる一面が周りをハラハラさせて母性だかなんだか知らねえが庇護欲みたいなのを掻き立てるらしく、心配してくれる友達もちゃんといて安心している。
無月は何というか、色気がパネェ。あの歳で色気があると何かと問題が起こるが今のところ防げている。兄弟以外だとあまり表情の変化が無く、一護以上に愛想がないコイツにちゃんと友達いんのか?って心配したが天鎖を家に連れてきて友達だって紹介されて安心した。すげえ安心した。
こんな個性豊かな弟共が不自由なく笑って過ごせるよう俺は今日もバイトに精を出す。
「今日もそこそこ頑張るか」
バイトの後は一護とコンにちょっかいかけた奴等ボコしに行こう。