その6「ヨレンタが、意外な人物と出会う。」 ヨレンタが目を覚ましたとき、小屋の中はすっかり暗くなっていた。小さな窓からは月明かりが差し込み、干し肉が吊り下がっていたた天井の影が揺れていた。
外から風の音が聞こえる。
だが、その風音に混じって、何か別の音が聞こえた。
小さな足音――それも複数。ヨレンタは瞬時に緊張した。 誰かが小屋の周囲を歩き回っているのだ。
彼女は急いで干し草のベッドの影に隠れ、息を潜めた。馬の鼻息が外から微かに聞こえる。
足音の主が馬の存在に気づいたのではないかと、不安がヨレンタの胸を締め付けた。
「オーイ、誰かいるのか?」
やや低く渋い声が小屋の外から聞こえてきた。
声は近く、扉のすぐ向こうだ。
年老いた男の声だが、一人ではなさそうだった。
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