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    matubahuki_2go

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    ヨ●ンタの空白の25年間の捏造&妄想IFです。
    その9 【一方その頃のコ〇ベ】
    #ヨの25年間
    5/11追記 ++++より後ろの文章
    資料>https://x.gd/sIRSn 元ネタ>https://x.gd/bmQxz

    #ヨの25年間

    その9 【一方その頃のコルベ】※時系列的に、ヨレンタが異端審問所から脱走した翌日の話です。※

     コルベはいつも通り、ピャスト伯の天文研究所に出勤した。
    割り当てられた研究室の扉を開ける。

    『”おはようございます!コルベさん。”』
    と真っ先に挨拶してくれるヨレンタさんが今日はいなかった。

    「? ヨレンタさんは今日は休み?珍しいな……。
    休みの連絡は貰っていないのだけれど。」

    『あぁ!そう言えば今日は来ていないですね!』と、一緒にいた研究員が大げさに首を傾げた。
    『まぁ、そういう日もあるんじゃないですか?』と続けて誤魔化した。

    何だか、ソワソワしている。彼は何かを隠しているみたいだ。
    「言いたい事があるなら、私に言いなよ。」
    コルベは、研究員に声をかけた。
    彼は、顔を背けて早口で答えた。
    「い、いえ……。何でもないです。じゃあ、僕は仕事があるんで、失礼します!」
    研究員は逃げるように、去っていった。

    (「? 妙だな……ヨレンタさんに何かあったのか?」)
    このところ、コルベには気になることがあった。
    それは、ここ最近になって、頻繁にヨレンタさんの様子がおかしいことだった。
    以前なら、コルベを見かけると嬉しそうな顔で近寄ってきてくれたのだが、
    ヨレンタの論文をコルベ名義でピャスト伯に提出してからは、
    避けられているのか、あまり姿を見掛けない。

    ***(5/5追記)
    (――配属された頃の彼女は、初々しかった…。)
    コルベは、”素直で可愛かった”頃の彼女を回想した。
    「ヨレンタ君。ちょっと、
    聞きたいことがあるんだけれど。」
    コルベは、図書館にいるヨレンタを訪ねた。
    「――ヨレンタ君、探してほしい資料があるんだ。」
    「はい、何でしょう。」
    「ええと、ダンテの叙事詩『神曲』の天国篇に出てくる”惑星に関する資料”について、だ。」
    「は、はい!」
    「月・太陽・木星などの各遊星天が、地球のまわりを同心円状に取り巻く様子を図に……。」
    「え。ええっと……。」
    「ん、ヨレンタ君、どうしたんだい?」
     ヨレンタが、何だかもじもじしていた。
    その様子を不審に思い、コルベは聞いた。
    「あの……いえ、何でもないです!!」

    *****(5/9追記)

     「……え。ええっと……。」
     ヨレンタが言葉に詰まったのは、頼まれた資料が難解だからではなかった。
    ヨレンタは小さく膝を揺らし、視線をコルベの胸元に落としたまま、唇を結んだ。

    (……まずい、行きたい。でも、今このタイミングで言い出すのは……。)
     コルベの澄んだ声が響く。
    「ん?、ヨレンタ君。どうしたんだい?」
     彼女は首を横に振った。
    「い、いえ! 何でもありません!」
    だがその声はわずかに上ずり、姿勢は不自然に固く、足元では両足の踵がこすれ合っていた。

     その原因は、ヨレンタが日々直面していた、ある“問題”があった。

    【閑話休題:ヨレンタのトイレ問題】
    ヨレンタは初の女性研究員だった為、勤務初日に、デリケートな問題にブチ当たった。

    このピャスト伯の天文研究所では、(15世紀の中世ヨーロッパの屋敷なので、現代と比べると)トイレの数が少なかった。
    そして男性研究員たちは、自分の研究室に、各自、小型の携帯おまるを持ち込んで、そこに用を足していた。

    だが、ヨレンタは“女性”であるという理由で、その慣習から外されていた。

    「女性は、屋敷の奥にあるトイレ塔の、使用人用トイレを使うように。」

     初出勤の日、ヨレンタは、案内係の研究員からそう言われた。
     トイレ塔は、とても遠かった。
    「何故ですか?!」
    ヨレンタは抗議した。
    「女性用トイレは、この屋敷にはトイレ塔の一か所にしかない。それに君は女性だ。
    風紀を乱すだろう?だから、おまるの持ち込みも許可出来ない。」
    「……――はい。」
    ヨレンタは悔しさから唇を噛んだ。

    トイレ塔――それは、ピャスト伯の広大な屋敷の最深部にある。
    図書館も備えた研究棟から中庭を越え、さらに廊下を二つ抜けた場所にある、川に面した石造りの塔だった。
    往復だけで少なくとも、二十五分はかかった。
    ヨレンタは毎回、走った。
    それでも、三十分くらい勤務が中断してしまう。

    勤務時間中に席を外すことへの無言の圧力。
    ましてや女性は研究所でも彼女一人。

    (だから……水も、できるだけ飲まないようにしてるのに……!
    こんな事で、天文学を諦めたくない!)

     ヨレンタは、唇を噛みしめた。空腹と脱水と緊張で、すでに視界がにじんでいる。
    それでも彼女は、コルベの顔に目を戻し、無理に笑顔を作った。

     ――この程度、我慢できないと、女性が研究なんて無理だって、言われてしまう。
     ――コルベさんには、余計な心配かけたくない。

     「じゃあ……探してみます。図は……ええと、木星の……あたり……から……」

     言葉が遠のいていく。
    コルベは、不審に思ったように、彼女をじっと見つめていた。
    ++++(5/11追記)
    【近くのトイレを使わせてあげる上司コルベ】

     「……ヨレンタ君。どうしたの?」
     コルベの声が、少しだけ低くなった。
    彼は手にしていた写本をそっと閉じ、彼女の肩に視線を合わせた。
    ヨレンタの身体は小刻みに震えていた。
     「君、……何か、我慢しているね?」
     ヨレンタは、ビクリ!と肩を揺らした。すぐに首を横に振ろうとしたが、その動きは途中で止まった。
    「……すみません。私、大丈夫です。すぐ戻りますから……っ!」
     ヨレンタはそう言って、去ろうとした。
    だが、重心が定まらず、よろける。
    「おっと」
     コルベは、彼女の肘を支えた。
    「……どこへ行くつもり?」
    言葉に詰まるヨレンタ。
    「……ト、トイレです……。あの、奥の、塔の……」
    だがその一言で、すべてを理解したコルベは、眉をひそめた。
    「……塔?まさか!、毎回、あそこまで行っていたの!?」
    「……はい。」
     その瞬間、コルベの目の奥で、何かが鋭く光った。
    「……何で?」
    「女性用のトイレが、奥の塔の使用人用トイレしかないから……です。」
    「知らなかった。なんてことだ……。」
    だが彼は、すぐに穏やかな声に戻して言った。
    「――僕の書斎を使いなさい。」
    「え……?」
    「図書館のすぐ近くだ。二階の西側の隅、あそこに私の書斎がある。近くにトイレもあるし、鍵もかかる。今後、困った時は、そこを使えばいい。」

     ヨレンタは、ぽかんと口を開けたまま、言葉を失った。
    「でも……それは……規則では……」
    「規則?ははっ、君は、そんなものを気にしていたのか。」
     コルベは、鼻で笑った。

    「じゃあ、これは命令だ。ヨレンタ君。今から、私の書斎の小部屋に行きなさい。そこで、おまる(携帯便器)を使えばいい。これは、君の研究効率の向上のため、つまり――天文学の未来のため、だ。」
     その言い方に、ヨレンタの目が大きく見開かれた。
    瞬間、彼女は カァアアッ!と頬を紅潮させた。
    (――は、恥ずかしい!! けれど……!お礼を言わなきゃ!!)
    「コルベさん……ありがとうございます……!」

     コルベはそれを見て、ふっと微笑んだ。
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