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    UchiyosoLove_

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    可愛い子には旅をさせよ
    エメリちゃんが珍しく傷ついた話

    ハニーミルクとある血が流れているだけで地位がほぼ確定してしまう世界は不条理じゃないのか
    砂漠の民として生まれた物は誰もがそう思うだろう。
    勿論エメリも例外では無かった
    砂漠の血と学者の血が流れる混血種、噛み砕けばハーフと言われる血種は生きづらいのだ。
    学者の所へ行くと砂漠の血が流れてるやら穢らわしいやら、砂漠の民の所へ行くと混血種がどの面下げて、中途半端な物はこの苦しみが分からないだろう、等。
    両方の血が流れるとメリットどころかデメリットしか無いのだ、悪く言えばどちらの苦しみも中途半端にしか出来ない、まがい物なのだから。



    「君は本当にそう思っているのか?」
    テノールの声がエメリの耳に響いた。
    彼の名はアルハイゼン、今は仕方なく代理賢者を務めている。草神直々に命じられたその名は決して軽くは無いが、彼はのらりくらりといつもの硬く結ばれた日常を歩んでいる。
    「だ、だってあたし、言われてみれば学者も砂漠の人達にも良い様には見られてなくて……。」
    珍しく人に弱音を吐き出すその姿は、年相応の姿とも言えた、

    時は数十分前に遡る
    エメリは今日もスメール中を探索して、困った人や迷った人、いつものように子供から老人まで手助けをしていた。
    今日も1人の青年を助けた“つもり”だったのだが
    パシッ
    皮膚と皮膚がぶつかり合う鋭い音が響いた
    「……え?」
    「お前に……お前には何が分かるんだよ!この半端者!」
    今思うと完全に八つ当たりだったと思うのだが、その言葉を聞いたエメリは珍しく傷ついたような、唇をきゅっと結びつけた珍しい顔をしていた。
    人助けは必ず善では無い。まだ生まれてから15年しか経ってないのだ、一人一人の心を読める筈も無い
    エメリはただ、ジンジン痛んだ手をぎゅっと握りしめ、プスパカフェで落ち着こうと決めた
    そして落ち込んでいる所に偶然アルハイゼンが来た、という訳だった

    「君がもし血筋で半端者と言われようと、その男に言われる筋合いは無いと思わないか?」
    「アルハイゼンさんは強いや…………あはは。」
    アルハイゼンからよそ見をして温かいハニーミルクを唇に付けてこくりと飲む、ほんのり甘いその少しの甘さが今の心に染みて、ぽかりと全身が温まるような気がした。アルハイゼンも注文していた珈琲を啜る
    「俺は君が、エメリが半端者だとは思わないよ。」
    「…………んえ?」
    アルハイゼンの口から出た、皮肉では無い純粋な肯定の言葉、意外に出たその言葉にエメリは顔をカクンと下げてしまった、アルハイゼンは重要な言葉をいつもの表情でさらさらと述べる癖がある。偶に不意打ちをくらってしまうのだ
    「君はディシアという女性を知っているな、俺は彼女に教令院に入らないかと誘った事がある、そして君も教令院に誘ってもいいと俺は思っている。」
    「……うん?」
    「噛み砕くと砂漠出身者がほとんど居なく、砂漠の民の差別がどれだけ酷かろうが、俺は血筋なんて物は気にしない、君の力だけ見ているんだ。」
    「…それって褒めてるの?!!?」
    「俺は褒めているつもりだが。」
    ガタッと席を立つエメリとは対照的に、珈琲を大人しく飲むのが様になっているアルハイゼンが、落ち着けと一言言ってため息をつく。
    「…はぁ、君は気づいてないかも知れないが、親しい間柄で君の事を血筋で見ている人間なんていないよ、まだ幼い年齢で君を評価してくれる人は沢山いる筈だ。思い返してみるといい。」
    確かに思い返してみると、どの人もエメリを肯定的に、好意的に見てくれてる人が居るのを思い出す
    『エメリちゃんがいてくれて良かった〜!』
    『ありがとうエメリちゃん、助かったよ。』
    『お前はいつも明るいな、エメリ。ハハッ、本当に、アアル村にも暖かくて明るい太陽が居るんだな。』
    『エメリちゃん、踊り子の才能あるよ!私と一緒に踊ってみない?……ふふっ、一緒に踊ると気持ちいいね!』


    ポロッ


    「……え?」
    「泣いているのか?」
    「や、やだなぁそんな事……ひぐっ。」
    「本当に君は分かりやすいな。……まぁ思い出してくれたようで何よりだ、君を否定的に見ている人の方が少数派なんだ。」
    ポロポロと次々から出てくる涙が、ハニーミルクに降り注ぐ。アルハイゼンは事実を述べるだけだ、寄り添いもしない。
    ただその無性な暖かさが、塩辛い涙をまだまろやかにしてくれているハニーミルクのような心が
    ひたすらに欲しかった。
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