怒らせてはいけない人クリプトとパスがやられた。
俺の心の柔らかいところに触れられた感触。
研ぎ澄まされる神経。
ふつふつと湧き上がるものは何か。
"ユルサナイ"
俺は今どんな顔をしているのだろう?
怒ってる?悲しんでる?
いや、笑ってる。
無言でデコイを出し敵を撹乱。
残る敵はあと2人。
デコイに乱射しまくってる奴にテルミット。
シールドが砕ける音、そのまま敵の眉間を貫いた。
まずは一人。
高低差を利用しながらシールドを回復。
相手が焦って俺を撃ちくだそうとする。
避けつつこちらも攻撃。
互いにシールドの砕ける音。
ショータイムだ。
もう1人の俺を出して敵に向かって駆け出す。
撃たれた。
「「騙されたな」」
勝負あり、俺らのチームの勝ち。
隣に2人が居ないことが虚しく、舞い上がるチャンピオン祝福の紙吹雪をぼんやりと眺めていた。
ここで俺の意識はブラックアウト。
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目が覚めたらドロップシップのベッドの上。
俺の目が開いたことに驚きと喜びを隠せていないクリプト。
パスもにっこりだ。
ライフラインを呼びに行ったパスを見送り、クリプトを見つめる。
「へへっ帰ってきたぜ、おっさん」
突き出した拳に強めの拳が返ってくる。
「無茶しすぎなんだよ、小僧」
フッと笑うクリプトに、あぁようやく帰ってこれたんだと安堵する。
「さっきの俺、超格好よくなかったか?見たかよあの美しきキル!流石俺様だ!勿論録画てくれたよな?」
嬉々と話し、てっきり褒めてもらえると思っていたが、クリプトは少し困った顔をしていた。
「なんだよその顔」
すると寝転ぶ俺の顔横に、クリプトの両手が付かれ途端に縮まる距離。
もう少しで唇が触れる、瞬間的に瞳を閉じた。
触れたのは柔らかい感触ではなく、デコピン。
「って!なんでだよ!?」
思わずつっこめば耐えきれないように笑うクリプトに俺もおかしくなって笑う。
2人の笑いがおさまった頃、クリプトが口を開いた。
「確かに今日のお前は最高に格好良かった。けど、あまり無茶はしてくれるな。俺の心臓がもたない」
その時のクリプトの表情がなんていうんだ?じ、慈愛ってやつに溢れてて心がほわりと毛布で包まれた感覚になった。
今度こそ触れ合う唇。
クリプトの首に腕をまわしもっとと強請る。
2人の呼吸が熱くなり、より深く、甘く…
「やぁ2人とも!ライフラインを呼んできたよ!」
届いた明るい声に、2人して瞬時に離れる。
が、ばっちり見られていて、生ぬるい表情をしたライフラインがパスの手を取り出ていった。
「お幸せに!」
パスの明るい声が遠くで聞こえた。
仲間に見られたことが恥ずかしくて顔を両手でおさえる。
「もう俺、お嫁に行けない」
その手のひらの隙間から見える、珍しいクリプトの赤面。
キュンとしていたら、覆っていた手を取られ再び至近距離で見つめ合う。
「心配しなくてもお前はもう俺の嫁だ」
ぶわりと熱くなる身体。
「何か問題でも?」
追い討ちのようにしかけてくるクリプトに、俺はもう
「問題、ないです」
そう言うことしかできなかった。
にやりと笑う表情が様になっていて。
悔しいがそういうとこも好きなんだ。