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    Tou3yosih9

    @Was1nANdm0

    墓場へおこしやす。供養して下さるとありがたや

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    Tou3yosih9

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    陽だまりとぽん。お越しくださり有難う御座います。
    コンポン小話です。全年齢。

    #🔥🎴
    #ひだぽん

    ヤシロのコン・山のポンコン コン カコン
     日差しが切れ切れに注ぐなか、調子よく軽い音が響く。
     歌うように響くこれは木材がナタで割られている音だ。
     コン コン と、長閑に
     まだまだ続くと思われたのだが…なにか別の音が混じり調子は止んでしまった。
     
    「たんちゃ〜ん炭ちゃん大変だよ」
     馴染みのしわがれ声が響く。
     声の方を向くと、イタチの婆様がシュルリシュルリと樹々の間を器用に抜けて、大慌てで駆けてくる来るのが見えた。
    「どうしたんだ?イタチの婆様。また干物でも盗られたか?」
     この婆様は薬に詳しくて、よく世話になっている。こうして騒ぐ時は、大概干していたヤモリや草を盗まれた時だ。
     婆様は疲れ切ってペしゃりと伏せると、ほぅほぅと息を切れ切れにこう言った。
    「そんなんじゃ無いよ。大変だよ!炭ちゃん!!!ヤシロだ。ヤシロ様が来るよ。」
     尾が二股に分かれたイタチ婆を支えたのは10代中頃の人間の少年だった。
     だが、唯の人の子ではなく、頭の上には赤茶の毛が混じる狸の耳とふわりと膨れた尻尾がある。
     そのまあるい耳には、カラリと音を立てる札の様な耳飾り。
     ぽわりとした赤茶の丸耳をピクとさせて、『炭ちゃん』と呼ばれた少年は、はて?と首を傾げた。
    「ヤシロ…サマ?」
     

     ここは、人間が『雲取』と呼ぶ山の奥深く。獣と大小の神々と精霊、神へのナリカケが住む土地。

     
     婆様に急かされるまま、仕事を放り出して棲家への道を駆ける。分からない事ばかりで胸に抱えたイタチ婆に尋ねた。
    「ヤシロ様?」
    「そうだよたぶん『代替わり』したんだ」
     ヤシロは産屋の大神様の使いをする神達で、命じられた土地を不浄から守っている。
    「わたしらのような、ちっぽけな妖変化とは別格の方々だよ」と、先程より幾分か息の落ち着いた婆様は答えた。
    「だいがわり…?」
     聞き返す少年に、最近の若い子は知らんかねと、婆様は続けた。
    「ヤシロのヤクを次の誰かに継がせたんだ。西のヤシロは此処のとこ、とんと噂を聞かなかったがね…」
     『代替わり』とやらが本当なら、婆様はどうしてこんなにも慌てるのだろう。聞くことは決まっている。
    「えっと?代替わりとは?何が起こるんだ」
     問われた婆様は、
    「そりゃぁ、力比べさ。新しいヤシロが来て領地中の妖の長を試すのさ。目に叶わねば力も土地も取られちまうって話だよ」
     さも当然のように話すが、初めて聞く上に土地を取られるとは穏やかではない話だ。ここに住めなくなるだろうか?
     不穏な言葉に更に問い返す。
    「そうなのか⁉︎じゃぁ、この辺りの長って誰なんだ?」
     ジィ……と、お婆の視線が狸を指す。
    「へっ?お、俺?」
     これは、狸にとって予想外の答えが返って来た。
    「ここいらで一番力があって若いのは、炭ちゃん。あんただろう」
    「いや、でも、長?では無いし」

     確かに、この辺りは老齢の者が多いし、住むものも少なくなった。
     今は亡き父親祖母から聞いていた話で、昔、天災でこの辺り一帯は酷く荒れたらしい。その時にたくさん死んだり、棲家を他所へ移したりした者も居たそうだ。

     自分達、竈門の狸一族はここで何世代もの間『ヒノカミサマ』をお祀りしていたし、人間に化け、炭焼きを生業にして人里と関わりながら暮らしていた。
     森も豊かで里の人間も優しい。
     この山から離れようと思った事は一度もなかった。

    「あたしの若い頃、あんたの爺さんが力比べをしたのを見たよ。そりゃぁ見事だった。炭十郎さん、炭ちゃんのお父ちゃんも亡くなって、ここいらはあたしみたいな年寄りばっかりだし、それに、」
     婆様の昔話は長引きそうだ。それは時間のある時にゆっくり聞きたい。それよりも
    「でもいつだ?その『力比べ』って?」
     婆の話を遮り尋ねた。その問いに答える様に

    「「今だな」」

     何処からか声が響く。
     高くか、遠くか。
     砲の様に一帯を突き抜けた声に、ザザッと草を鳴らして狸は駆けていた足を止めた。
     どこからの声なのか、探るためにグルリと辺りを見渡そうとした、その時
    「へっ⁉︎」
     見渡す前にそれは来た。
     眩む程の光と、木々を軋ませる突風が目の前に降り立つ。    
     ドォンと地面を鳴らせ、土煙を巻き上げるほどの衝撃に足を掬われ、狸の少年はイタチ婆を抱えたままドサリと尻をついた。
    (体が……おかしい……)
     狸は自分の異変に気付く。
     ハッ ハッと荒れる息を整え様とするが、カチカチと鳴る奥歯がそれをさせてくれない。
    (背が逆立つ…なんだこれなんだ!)
     初めて感じる。胃の腑が絞れて、背が、尾が、膨れ上がって酷く波打つ。
     恐怖なのだと理解は出来るが、こんなふうに体がおかしくなってしまうものは初めてだった。
     底の知れないそれに身じろぎも、声も上げられない。
        
     そんな狸の耳元で婆様が気付けようと声を張った。
    「しっかりおし炭治郎あれがヤシロだ。捕まっちまった。言ったろう 『力比べ』に勝てなきゃ、あたしらお山取られちまうよ」
     キンキンと響く婆の声にハッと我に返った。
     家には母と幼い妹弟がいる。家も炭火焼き場も。婆様達も。
     しっかり…しっかりしなければ…。父亡き今、自分が一族の、一家の長なのだから。
    「婆様、母さん達を…」
     腹を括った少年、炭治郎の願いに「任せてときな」と返してイタチ婆はシュルリと腕から抜けると風よりも早く駆けて行った。
     
     ただのひとりになった炭治郎は立ち上がり、目の前の者と向き合った。
     (これがヤシロサマ。やたら眩しいと思ったら…尾が…何本あるんだ余程の力の有る者だ)
     先程から体中を這う恐れの気配に納得する。
     ヤシロサマは大きな金の狐の姿をしていた。背後にとても立派な尾が揺らめいて見えるが、光が強すぎて数がよく分からない。
     獣からうえに上がった者達は尾の大きさと数が力を示すものになる事が多いらしい。
     らしいと云うのは、二股ならあるが、それ以上の尾を持つ者を見た事がなかったからだ。そして、その話は本当の事だと今、理解をした。
     恐れから逸らしていた狐神の面を真っ直ぐに見る。
     次の瞬間に、カチカチと震えていた歯の音がピタリと止んだ。
    (………朱の輪だ…)
     よくよく顔を見る。
     実に品の良い、理知の顔、自信溢れる笑み。だが、隈取を施した釣り上がった眼の目線が合わない。どうにも合わない。
     どこか、自分を通り抜けて遠くを見ている様な感じにも取れる。
     そして、とても…とても……
    (なんて……きれい…)
     一瞬、ぽろりと呟きそうになった言葉を慌てて飲み込んで、炭治郎は尋ねた。
    「あなたはどなたですか?ここに何の御用でしょう?」
     お婆からの話だけを鵜呑みにして対峙するのは軽率だと思ったからだ。
     狐神からは悪意の匂いも、こちらを軽んじる匂いも全くしない。それにも関わらず、横暴を働く何かの理由があるのならば知りたかった。

     金の狐神は、ピリピリと肌に感じる気配とは裏腹に、柔らかくにこりと口の端をあげ問いに答えた。
    「遣いも寄越さず失礼をした。産屋ノ神の使いの一柱、名を煉獄と云う。先代が退き代替わりをした」
     朗朗と答える煉獄の強い背後の光は少し控えられ、姿が先程よりもはっきりとしだした。
     炎を纏っているかの様な羽織、髪の先も炎が灯った様に赤く染まっている。金と思っていた狐神は炎神のようだ。
    「代替わりをしたので護り預かる土地を見て回り、試しをしている。ここいらの長は君だろうか?」
     煉獄に問われた。
    「長などと立派な者ではありません。ですが、この辺りで何か事が起これば立ち向かうのは自分だと思っています」
     先程とは顔つきの変わった狸の少年に、煉獄は「ほぅ」と感心した様に呟くと、二股に分かれた黒い眉を嬉しそうにピンと立てた。
    「良い心がけだ。名を尋ねても良いだろうか」
     神様にそう言われ、まだ自分は名乗っていなかった非礼に気付いた。
     これはいけないと、
    「名乗らず失礼しました。竈門の狸、炭治郎と言います。あの聞いても良いでしょうか?俺が負ければこの山から追われると聞きました。本当でしょうか⁉︎」
     バビッと音がする程、勢い良く頭を下げて、勢いよく名乗り
    、あまつさえ質問までした。
     その様子を見た煉獄は一瞬きょとりと目を丸くしたが、すぅと目を細めると、
    「その通り。更に…見合わぬ者ならば、その身も骨も残さず焼き尽くすだろう」
     口元は変わらずきゅうと上がり笑みを浮かべているが、眼の中に炎が宿った。会話の最中に和らいでいた気迫は初め以上に増し、そのビリビリとした空気に、炭治郎の体は腑を掴まれ引かれるかの様な感覚を味わった。

    (怖い 怖い 怖い 怖い…)
     その場に蹲りそうになる程の恐怖で、額と掌に今までにかいた事のない量の汗が噴き上がる。
    (父さん…父さん……父さん)
     無意識に呟いて手を伸ばすと、腰から下げていたナタに触れた。
     父も使っていたナタ。
     これを使っていた時を覚えている。これだけじゃない。
     全て、見せて教えてくれた。
     大切なものの守り方も、息の整え方も。
     そしてヒノカミ様の事も…。

    (神様といえど、家族を家を傷つけると云うなら…俺は…俺は…)
     炭治郎は、父から教わった通りに息を整え、刃を炎神に向け横一文字にナタ構えた。
     左の指先を刃先に添える。ヒノカミ様を祀る舞を舞う時と同じように…。

     狸の姿を見て「構えた」と取った煉獄は、
    「…よい様だな」
     そう云うと、視線を外す事なく腰にあった刀の柄に手を伸ばした。
     スルリと静かに抜かれた刀身は、赫く、紅く、不思議な色を揺らめかせる。だが、主が一振りすると、辺りを焼き尽くさんばかりの炎を纏いながら空を斬った。

     煉獄の炎の眼が、初めて炭治郎とかち合う。

    (あぁ…おかしいよなぁ…俺)
     炭治郎は自分の気持ちがわからなくなった。
    (あの眼。あんなに恐ろしいのに、震えるほど怖いのに)
     あの眼の色がとてもきれいで…きれいで…。
     棲家を追われるかも知れないのに、これから斬られてしまうかも知れないのに。
     格の違いも、力の差も、恐れも、ない混ぜのまま…
     ただ、あの眼の炎に惹かれて、軽やかに。いつものヒノカミ様の祀りの舞を舞う様に、息を整え、宝具代わりに握ったナタを振るった。


      




    そして…力比べの結末はと云うと…

     
    「ヤシロサマ〜」
    「ヤシロ様」
    ………
    「…れ、、煉獄様」
    …………
    「〜〜〜〜〜ーッ
    煉獄さん」
    「「うむっ」」
     
     雲取の森に大筒を放ったような声が突き抜ける。
     昼餉を包んだ風呂敷を握り、炭治郎は声の方、木の上を見上げた。

     あの『力比べ』の後、俺も家族も山を追われる事はなかった。暮らしぶりも変わる事なく…と言いたいのだけれど、変わった事がたくさんある。
     あのヤシロサマ「煉獄さん」がちょくちょく雲取山に来る様になった。
     澱んだものや不浄のものが入り込んでいないか見廻りをしているそうだ。
     ただ、もし悪いものが入り込んで来たとしても、ある程度のものは祓えるよう、俺に剣を教えてくれたりと師範の様な事もしてくださる。
     そうかと思えば、今日みたいに昼餉を召し上がって行かれるだけだったり、日向でうたた寝をして行かれる事もある。
     後は、そう…
    「ヤシロ様」「煉獄様」と呼ぶと返事をしてくれなくなった。

    「友人に様はおかしいだろう」と、あの炎の眼で真っ直ぐにこちらを見て快活に笑われた。
     その言葉にまごついている俺を見て、
    「友と思うのは…迷惑だろうか…」と、あのピンと上がった眉に立派な御耳がしょーんと下げられてしまった。
     こんな、神々しい、美丈夫と言わんばかりの妖に会うのも、腹がひっくり返りそうになるほど恐ろしい神様に会うのも初めてなのだ。少しは狼狽えさせて欲しい。
     
     どうも…俺は、この美しい炎神様と友人になったらしい。




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     その結果が冒頭の一言。
     そして今、僕は非道い目に遭っていた。

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     漸く頭を濡らし終わっていざシャンプーな訳だけど、ここでも一悶着。
    「待って、松井。それ松井のシャンプーでしょ」
    「そうだけど」
    「僕ので洗ってよ」
    「もう手に出してしまったし、これ髪がサラサラになって」
     松井の髪ならサラサラになっても構わないし、むしろその方が良いんだけれど、僕の髪が 1626