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    nekoruru_haya

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    nekoruru_haya

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    現パロ、ナチュラルに同棲。細かい事は気にしない方へ。
    ちょっとだけ血が出ます。

    #くわまつ
    mulberryPlantation
    #現パロ
    parodyingTheReality

    「僕に洗わせてくれないかな!」

     真っ新な碧空みたいにキラキラした目でそう言われたら、断る事なんて出来ないよねえ。



     事の発端は僕が右手に包帯をして帰ってきたところから。まあ、手のひらをざっくり切ってしまっただけなんだけれど。それを見た松井が何故か喜々として「お風呂はどうするんだい?」って訊くから、どうしようねえ、なんて悠長に返事をしてしまった訳だ。身体はともかく、頭を洗うのは片手では不便かもと一瞬でも浮かんでしまった自分を呪う。
     その結果が冒頭の一言。
     そして今、僕は非道い目に遭っていた。

     先ずは冷水を頭から被せられた。初夏の気候とは言え冷たいには違いない。松井が温度の調節をする間中、冷水と熱湯を交互に掛けられてある意味健康になれそう。そう言う意味では健康だから必要ないんだけれども。
     漸く頭を濡らし終わっていざシャンプーな訳だけど、ここでも一悶着。
    「待って、松井。それ松井のシャンプーでしょ」
    「そうだけど」
    「僕ので洗ってよ」
    「もう手に出してしまったし、これ髪がサラサラになって」
     松井の髪ならサラサラになっても構わないし、むしろその方が良いんだけれど、僕の髪がサラサラになるのは問題有りでは?
    「サラサラの桑名の髪……」
     無言になる松井。
     無言で手の上のシャンプーを流して僕のシャンプーボトルを手にした。なんか複雑な気分。
     それも正面の鏡に映る上機嫌な松井の笑顔を見ていたら、まあ良いかなんて思えてくる。
     松井は一頻り僕の髪で「角~」とか「オールバック!」とか遊んで満足したらしく、いつもの倍くらいの時間を掛けて頭を洗い終わった。
    「ありがと。身体は自分で出来るから」
    「え、いいよ。洗ってあげるって」
     僕はいつもこんなに長くお風呂に入る方じゃないからのぼせそうだし。
    「あー、もしかして恥ずかしい?」
    「まあね。じゃあ松井も脱いでくれたらいいよ」
     振り仰いで松井を捉える。さっきオールバックにされたままだから視界がクリアだ。
    「脱いで、松井」
    「っ!?」
     一気に松井の顔が赤くなり、ぽつりと僕の頬にあたたかい滴が落ちてきた。
    「え、ちょっと、鼻血っ」
    「ごめん……っ」
     慌てて逃げるように身体を返した松井の足元が滑る。ふわりと浮いた身体を咄嗟に受け止めた。
    「びっくりしたあ」
     倒れ掛かった松井の腰を抱いて支えると、ゆっくりと立たせる。鼻を押さえてしゅんと項垂れる松井のサラサラの髪をそっと撫でた。
    「大丈夫?」
    「……上手くいかない……」
     落ち込んだ様子の松井が口を開くのを待つ。
    「前に僕が怪我をした時、桑名が手伝ってくれたからそのお返しがしたかったんだ」
     ぽそりと吐き出された台詞に、そんな事も確かにあったな、なんて思い出す。
    「ありがと、松井」
     もう一度撫でてあげたくて、いつものように右手を伸ばして慌てて引っ込めた。松井の目が大きく見開かれる。
    「くわ、くわなっ、それ?!」
    「血行が良くなり過ぎたのと、さっき咄嗟に利き手使っちゃったから、かな」
     濡れないように被せたビニール袋の中で白かった包帯に赤い滲みが広がっていた。
    「え、あっ、どうしよっ、くわな」
    「大丈夫だから。先に出て待ってて」
     何か言いたげで、でも黙ってこくん、と頷いて出て行く背中が酷く落ち込んでいて、思わず声を掛ける。
    「また明日もお願いね」
    「……いいの?」
     不安に碧空が曇る。
    「松井にしか頼めないでしょ」
    「……まあ、僕しか居ないし、仕方ないか……」
    「松井にしか頼まないよ」
    「……」
     俯いた顔を上げて僕を見る碧。僕が見たいのは真っ新のキラキラの碧空だ。
    「先に出て、新しい包帯を準備しておいてくれる?」
    「うん」
    「明日は松井も一緒に入ろうよ、ね」
     僕の言葉に一瞬視線を外し、今度は内側からの熱で頬を淡く染めた松井が改めて僕に向けた碧は、初夏の碧空のように眩しかった。





    END
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    nekoruru_haya

    PROGRESSくわまつですが書き手以外誰も幸せにならない予定のお話の下書きというか荒書き。ちゃんとしてから後日支部に上げます。
    完結に向けてぼちぼち追記していきますので現状は途中経過の進捗見て見て構ってちゃんなので注意。
    .5や独自設定盛り込んでます。
    biotope歴史は大河の流れのようなもの。
    何れかのサーバーの何某という本丸の誰彼という刀剣男士がそう例えたと云う。果たして事実、そうなのだろう。世界が始まり時間が動き出したのを起点に歴史は流れ始め、時の政府が管理している現時点まで一筋の大きな河として流れ着き、この先へと恐らくは流れ続けていく。歴史の流れは大きく緩やかであった為、その道筋は逸れる事もましてや氾濫する事もなく、ただ過去から現在、そして未来へと流れていくものと思われていた。
    その時、までは。
    ある時、後に歴史修正主義者と呼ばれる未知の存在が現れた。彼等は過去から未来へと流れるだけだった時間を遡り、歴史という過去に起こった事実の改変を開始する。それは水面に小石を投げ入れて波紋を浮かべる程度で済むものから、巨大な岩で流れを堰止め、流れる方向自体を変えてしまうような改変となった。波紋程度であれば歴史という事実認識の強固さ故、自浄作用が働き、大勢に影響はない。だが、流れる方向が変わってしまえば今日までの道筋が違えてしまう。
    2031

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