ふる〜てぃ〜ず“うり” 近所の公園で本を読むお姉さんになりたかった。
サラサラとした長い髪をふたつに結っていて、この辺では見たことがない中学のセーラー服で、表情はあまり見た事がないが、ミステリアスで不思議な雰囲気をまとっている。
だから、白沢うりの目標になった。
長い銀色の髪をふたつに結んでみたり、コーヒーに挑戦してみたり、頭のてっぺんにリボンをつけてみたり。ちょっと背伸びしてみると、なんだかあのお姉さんに近づけたような気がして嬉しかった。
だからこそ、なんでもできるくせに手を抜く後輩が好きではなかった。
「……だいたい、あんたもあんたよ!私よりも実技できるんだから、もっと本気出しなさいよ!」
「ん〜、おなすはいいんだよぉ。程々でね。」
「いっつもそればっかりじゃない!才能あるのに、そんなんじゃ素敵なレディになれないんだから…。」
--素敵なレディ。
あのお姉さんみたいな素敵なレディ。うりがなりたいもの。うりには歳の離れた兄と姉がいて、末っ子でまだまだ小さなうりは両親にも兄にも姉にも可愛がられていて、子供扱いされるのが好きじゃなかった。
もう4年生なのに。もうすぐ5年生お姉さんなのに。そんな進級する少し前にいつものお姉さんが公園に来なくなった。ピアノのお稽古の行き帰りに必ずあの場所で座って本を読んでいたのに。ちょっと寂しくなりながらも、脳裏に焼き付いて離れないあのお姉さんになりたくて。牛乳を毎日飲んでみたり、お勉強を頑張って、お手伝いもして、お姉さんが読んでた本を買ってみたりした。……もちろん、難しくて読めなかったけれど。
話したことなんてなくて、ただ遠くで見つめるだけだったのでいつかお話できたらいいなと思いながらうりは進級した。
そんなある日だった。
「スクールアイドル戦士養成クラブの入部試験をしますので、興味のあるかたや、先生から通達のある生徒は、次の日曜日に高等部校舎にあるホールに集まってください。以上、オルス学園高等部生徒会でぃっぷ、広報の黄土でした。」
初等部にあるうりの教室に連絡に着た生徒会のお姉さんは、あの公園のお姉さんだった。同じ学校に通っていたのかとびっくりするうり。
「はーい!生徒会の先輩!スクールアイドル戦士ってどんなことするんですかー?」
手を挙げて立ち上がったのはクリっとした目に外ハネが可愛らしい紅さつま。元気で明るいクラスのムードメーカーだ。
「えーっと…お国のために、自分の力を最大限に活かせるヒーローみたいなもの…………って書いてあります。」
ヒーロー、それってとってもかっこよくて、素敵で、まるで……1人前のレディみたい!お姉さんも生徒会ででぃっぷ……ということはスクールアイドル戦士、ふる〜てぃ〜ずなのだ。うりはこうして、スクールアイドル戦士養成クラブへの入部試験に挑むことになるのだ。