余所見、寄り道、帰り道。 祭囃子が遠くに聞こえる。そちらに向かっていく人の流れが多数を占めるなか、逆行するように三宙と四季は歩いていた。普段は出店していないような屋台や露店も軒を連ねていて、メインイベントを観なくても祭の雰囲気は十分楽しめるようになっている。
絶賛復興中の街は旧時代の祭を復活させることにも積極的で、今まさに行われていることもそのひとつだった。秋祭が執り行われる報せを知って、真っ先に三宙は四季を誘った。けれども一緒に行くことを了承してもらうのにはかなりの妥協が必要だった。
(やっぱ神輿は担がれてるところが観たかったよな)
風に乗って聞こえてくる笛や太鼓の音に思いを馳せるが、四季からは人波に揉まれるのはごめんだと最初から敢えなく却下を食らってしまっている。出発地点に展示されている神輿を二人で見る約束だけはどうにか取り付けて、その帰り道だ。
2006