沈んで、揺蕩って⑤ 仮縫いされた生地にピンを打って、デザインに合うようラインを修正していく。どうしたって最初は歪みが出るものだから、この作業がなかなか肝心だ。そうして思い描いていたラインに収まっていくと三宙の気分も上々になる。
四季と全く顔を合わせなかったここ三日間とは対照的に、時間が過ぎるのを早く感じていた。アトリエに着いて早めの夕飯を取ってから作業をし始めて、いつの間にか時刻はそろそろ二十二時。修正したものから順に試着してもらったりしていたら、あっという間だった。
別にこんな時間まで作業していなくても、納期に余裕はあるけれど。
三宙は横目で隣の四季を見た。副資材を組ながら、まだ終わらせるつもりはないとその背中には書いてある。休んでいた分でも取り返すつもりだろうか。休ませたのは完全に三宙の個人的な都合だから、四季が気にする必要はひとつもないけれど。
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