「ハロウィン」お菓子ハロウィンの夜、どちらが先にイタズラをするのかをかけてゲームをしている。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
楽しそうに笑いながら手を叩き、シュウはヴォックスからゆっくりと距離をとっていく。
ふらふらと宙を彷徨う手が声に反応し、その方向へ向いた。
距離を詰めたヴォックスは、シュウの手首を掴み取る。
「ふふ、簡単さ。目を瞑っていても、お前の気配はこんなにも分かるのだから」
掴まれた手をぐっと引き寄せられ、反動でヴォックスの体に倒れ込む。
首に頭を預けるように近づき、装飾具の金具がぶつかり合い小さな金属音がした。
喉の奥で響く笑い声と共に、頭にキスをされる。
「今日の衣装、とても似合っているよ…」
背に回っていた手がコルセットへと移動し、細いくびれを撫でる。
そして腰からお尻へと落ちた手が撫でるように衣服を触ると抗議の声が上がった。
「ヴォックス!君がその気なら僕も・・」
大きな襟を押し出し、ヴォックスの首元に牙を立てる。
「それ以上触ったら本気で噛むよ?」
シュウの脅しとは裏腹に、ヴォックスは気にせず触り続ける。
柔らかな肉を摘むと、窪みへと指先が滑っていく。
すると、余裕のある動きを見せていたヴォックスから小さな悲鳴が溢れた。
シュウの牙が皮膚を刺したのだ。
「本当に悪い鬼。いたずらだけじゃ足りないの?…はぁ…お仕置きだよ」
痛みを与えても離れない手に、相手を伺いながら少しずつ、ゆっくりと牙が入っていく。
真皮を裂き毛細血管から少しずつ滲み出る液体が舌に触れると、シュウは体を震わせた。
舌先が執拗に血を求めて首を舐め、唇で血を吸い出そうとする。
「ありぇ…ちゅっ……んっ……いつもより、美味しい」
ぎゅっと腕を回し体を密着させると、シュウは小さな傷口をうっとりしたような表情で舐め続けた。
「んっ、んっ…ヴォックス…もっと…♡」
「シュ、シュウ…それ以上は…」
やんわりと首からシュウを引き離したヴォックスは地面へと力なく座り込んでしまった。
「今日は魔法使いとしても居るから、私の生気に混じり気が混んでいたのだろう……」
顔を両手で覆い、耳まで赤くしたヴォックスを見下ろしたシュウは我に返り、気まずそうに視線をそらした。
「あ、ヴォックス…ごめん…」
「…気にするな」
先程の思わぬ吸血で刺激された感覚に、下半身が存在感を主張していた。
痛みからなのか、それとも恥ずかしさからなのか、少し濡れた視線が重なる。
「君にいたずらをするつもりが、まさか自分が”お菓子”になっていたことに気付かされるとはな…」
シュウは小さく笑うとヴォックスに手を差し伸べ、立ち上がらせた。
“治してあげるから、今日はお腹いっぱいにさせてね?”
そう囁かれた鬼は、ぐつぐつと煮える窯のように、体温が上がっていくのを感じ取った。