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    kanamisaniwa

    pixivメインに二次創作(刀剣乱舞、ツイステ、グラブル、FGO等)やってます。超雑食でオリキャラ大好き病を患う腐女子です。ポイピクにはかきかけだったりネタだけの文章を投げたいです。

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    kanamisaniwa

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    トマ人

    「ああ、終わった」

    社奉行当主、神里綾人は別荘の一部屋でぽつりとそう呟いた。
    数代前の当主が作らせたという秘境を利用した『密談』用別荘だ。
    しかし、今ここは煙が徐々に充満し火が迫ってきているのがひしひしと感じられる。しかも建物そのものが揺れていて、崩壊まで幾ばくか、という状況。
    まさに絶体絶命。
    事実、先程まで『密談』していた叔父はここから脱出しようと逃げていったが、逃げた先から悲鳴と潰れるような音が聞こえてきたので無事死んだだろう。
    これで、綾人の人生最後の仕事が終わった。
    神里家に、社奉行に、なによりかわいい妹綾華に対し害悪だった最後の血縁を始末する、それが綾人が己に課した仕事であり、神里家のためにできる最後のことだった。

    「やれやれ、骨が折れたな…まあ、なんとかなったからいいけれど。まったく狡猾で嫌な男だった」

    火と煙が迫る中、綾人は一人のんびりと呟く。
    そこには火への恐怖も焦りもなにもない。計画を立てる段階で己が焼け死ぬ事を組み込んでいるのだから、今更感じることなど綾人にはないのだ。
    そしてそれは、綾人がそうまでしなければ、あの叔父、神里家を潰し自分が社奉行当主につくという野望を持った男を始末できなかったということでもあった。

    叔父は綾人と綾華の父親の同母弟だったが、神里家から臣下筋の家に婿入りしたことで神里の家を離れた男だ。が、それは弟という立場では自分が社奉行の当主になれないからという理由であり、そして表向きは滅私奉公もかくやという働きで社奉行で働き、一方で水面下では虎視眈々と神里家を陥れようと画策していた。
    そんな叔父を綾人は心底嫌っていたが、先代当主夫婦が早世したことで危うくなった神里家を、いや、家族を守るために綾人は叔父の後ろ盾をどうしても必要としていた時期があった。そのときに大きな借りをつくってしまったのだ。おまけにその大きな野心と反比例するように叔父は用心深く策士で冷徹で…そういう部分は酷く綾人に似ていた。
    同族嫌悪、綾人と叔父の間にあったのは、確実にそういう反発だった。








    そも、うまれてこのかた綾人はそういったモノを感じたことはなかった。
    嬉しい、悲しい、苦しい、痛い…そんな、人が生まれたときからもっている喜怒哀楽というもの、それが綾人の中には生まれながらなかった。肉体的にも触覚はあるが冷感も音感も曖昧で、痛覚はほとんど皆無だ。
    そんな自分自身が異常であることを綾人は幼い頃から理解し、そんな自分を守り育ててくれた亡き両親
    とかわいい妹のため、今日この日最後の行動を起こした。
    それこそが今日この秘境の別荘で、神里家に取り入り、利用し、やがては乗っ取ろうと画策する叔父を始末することだった。

    『お互い、生きていても仕方がないでしょう?叔父上』

    まんまと綾人の策にはまって別荘に乗り込んできた叔父に、綾人はにっこり笑ってそう言った。
    叔父はおそらく綾人と"同類"だった。人の痛みが決してわからない怪物という意味で。
    もっとも、綾人は自分自身の痛みも感情もわからない本物の化け物だが、叔父は自分自身のことは可愛かったらしい。


    『此後におよんで神里家をご心配して頂けるとは。ですがご安心を、神里家は綾華が継ぎます。その後は綾華が好いた男を婿に貰って血を繋いでいけばいい。ああ、トーマ辺りだといいですね、彼はいい男だ』

    叔父はなにやら激高して神里の家を女が継ぐなどだの、汚れた血(異国の血を引くことを指しているのか)を神里に入れるなど、とぐちゃぐちゃ言っていたが、綾人は至極大真面目だった。
    綾華は優しくて真面目でなにより人の心や痛みに寄り添える社奉行の当主としてふさわしい、自慢の妹だ。トーマは優秀で心遣いが上手く根回しも得意で何より優しい良い男、勿論寝所でも紳士だし。
    まさに似合いの二人ではないか。
    本人達が聞いたら激怒しそうな事を綾人はなんの感慨もなく考えて、ただ思うがまま口にしていた。
    そんなことをしているうちに煙が充満しはじめ、叔父は死んでたまるかと言いながら逃げ出し…崩壊し始めている別荘の天井梁か岩かなにかに潰されただろう。
    実のところ、そういった危機を考慮し一番安全に作られているのは綾人が今いる部屋なので、逃げないのが正解なのだが、そんなことを叔父は知る由もない…というか、会話の端々で誘導したのだ。

    「もうやり残したことはないかな。遺書は3回読み直して清書したし、幕府への根回しもしたし、冒険者協会への賄賂で旅人さんは今綾華についているはず。あとは…」

    棚にしまっていた好物(これも一般的な好きという感情ではなく、一番効率よくカロリーと水分が補給できるという意味だ)のタピオカミルクティーを出してすすりつつ、綾人は指折り数える。
    煙が充満し、火が燃えるパチパチとはじける音が聞こえていなければ、昼間の社奉行のお屋敷にでもいるかのような様子だ。
    だが、綾人にとってそれが普通なのだ。
    生まれたときから喜怒哀楽を認識できない綾人にとって、ここが死地の場でも自宅でも何も感じないのは同じことだから。

    「あとは…、あぁ…トーマに何か残しておくべきだったかな…?ごほっ、」

    一応恋人、という関係だったのだし。
    煙に咳き込みながら、綾人はほんの少し迷いながら思ったが、すでに後の祭りだ。
    自身の喜怒哀楽を認識できず痛みすら感じない綾人にとって、『恋』などわかろうはずもない。
    でも、逆に磨かれた徹底的な観察眼によって恋というものが凡人にとってどのようなものかは学習したし、有能で手放し難いトーマがそれを己に求めたからそれらしい行動で応えたに過ぎない。
    トーマにしてみれば、とんでもない裏切りだろう。最初から彼を愛しも恋しもしないままそういうふりだけしていたのだ。浮気よりたちが悪い。

    「でもしかたないか…本当に綾華と幸せになって欲しいけれど、げほっ、ごほ!」

    綾人は此後におよんで、自分に恋などしてしまったトーマを憐れみながら、妹と結ばれてくれたらいいのになどと普通に考えてしまう。
    綾人のこういう部分をあの叔父は人でなしの化け物と呼び、そして亡き母は哀れだとさめざめ泣いた。

    『綾人は心というものを認識できないのです。あの子が笑うのも泣くのもすべて綾華の真似をしているにすぎません。あの子に社奉行を、神里家を継がせるのはあまりにも酷です。人の、稲妻の民の心こそ尊ぶこの家では…』

    亡き母が泣きながら父に訴えたそれは、誰よりも綾人を理解し、そして愛したゆえの訴えだった。
    しかし、伝統的な稲妻の家父長制に則って、妹が兄を押し退けて家を継ぐのは難しい。それこそ始末したあの叔父のように付け込もうとする輩を招くだけだ。それゆえに父も綾人の異常を察していながら跡取りから外すことを躊躇して、そして予期せぬ病に倒れそのまま綾人が家を継いでしまった。
    その間違いを今日やっと正すことができる。ここで叔父を始末し綾人が死ぬことで、神里家の男系が絶えて女系筆頭の綾華が当主になることはごく自然でどこからも反対意見はでないはずだ。
    だからこそ、本当は部屋の奥の掛け軸の後ろにある秘密の脱出通路を使わずに、綾人はここに残って焼け死ぬつもりなのだ。
    表向きには、神里家当主と分家の主人との会談中に"火の不始末"が原因で火事が起こり、不幸にも二人共焼死となる。乾燥するこの季節にはままある事故で、幕府からは火器不始末の注意が飛ぶ程度ですむだろう。そのために賄賂もバラマキ済みだった。
    ついに火が部屋の扉まで迫り赤い火がちらつき始め、煙が部屋中に充満する。
    綾人は、咳き込みながら部屋の真ん中に膝から崩れた。

    (呼吸器がしづらい…これが苦しい、というやつかな…肌がピリピリとするのが熱い、だろうか。死ぬ間際にやっとわかるなんて…本当に私は化け物だった…。でも、これで何もかも良くなる…)

    綾人は本当に、心からこの結末に満足だった。
    だから、意識が落ちる寸前聞こえてきた声は噂に聞く走馬灯か幻聴だと信じて疑わなかった。


    ※※※※※

    「今回のお嬢の璃月旅行は、お嬢の身の安全を確保するためなんだ。そのために空に北斗船長を紹介してもらって、その船で璃月に行けるように取り計らったんだ」
    「綾華の身の安全?」
    「なぁ、トーマ、それどういうことだ?綾華はその辺のやつにやられるほど弱くないし、それに綾人もトーマもいるのに」
    「あー、…まあ、物理的なものなら、そうなんだけど」
    「政治的な話ってことだね」
    「政治…って、まさか鎌治と千里のときみたいな?!」
    「当たらずといえども遠からず、かな。神里家の臣下筋にあたる手綱家、そこの当主が曲者の中の曲者でね、若もずっと手を焼いてる…そんな奴が先月、自分の息子とお嬢との縁談を持ちかけてきたんだ」
    「社奉行内での縁談なら、千里さん達のときとは少し違ってそんなに大事にならなそうだけど…その手綱家の当主って人がそんなに嫌な人なの?綾人さんが、綾華のこととはいえ"逃げ(国外脱出)"の手を打つなんて予想外すぎる」
    「空は本当によく若を理解してくれてるね。俺としては心強いよ!って、それはともかく…ああ、手綱義時っていう奴なんだけど、若とお嬢の父君の弟、つまり叔父でね、手綱家に婿養子に入って家を継いだんだ。性格は残忍、冷徹、それを隠す演技と人当たりの良さは気味が悪い、自分自身は一切手を汚さず謀略と奸計で他人を動かしあげく捨てて利益だけを総取りする。そういうやり手だ。今も表向きは社奉行に滅私奉公もかくやな働きぶりをしているけど、裏では神里家を、若を失脚させて自分が社奉行当主になろうと画策してる」
    「うわぁ…一番身内に居てほしくないやつだ…」
    「そんな男の息子に綾華が嫁いだら、一気に手綱家が有利になる?」
    「ああ、間違いない。家督継承の内規に従い、もし若が子供を残さず亡くなったら神里家はお嬢が継ぐ。そしていずれはお嬢の子供達にその権利が与えられる」
    「間接的に神里家を手に入れられるってことだね」
    「うえぇ、なんでおめでたい結婚が毎回こんな面倒事になるんだよ」
    「だが実は奴の計画は、なお悪いんだ」
    「これ以上?!!」
    「ああ、手綱義時はなぜか"神里家"そのものを嫌悪しているふしがある。だから、お嬢を手綱家に迎え入れたあとに若を害して神里家を「男系の跡継ぎが絶えた」と取り潰しにして、女系のお嬢を嫁に迎えたことを正当性にして手綱家を新たな社奉行の筆頭にし、自分がその当主の椅子におさまりたいんだ」
    「なんだそれ、めちゃくちゃ面倒くさくないか?」
    「そこまでして何がなんでも社奉行の当主になりたい?間接的な支配じゃ気がすまないってことなの」
    「つくづく俺もそう思う。だが、そんなことはここでは二の次、大事なのはお嬢をそんな政治の駆け引きの駒にすることは絶対に許しておけないってことさ」
    「おう!それは絶対にそうだな!じゃ、その縁談ぶっ潰して…あ、でもまてよ、綾華に来てる縁談は、そいつじゃなくてそいつの息子の方だよな?そいつが鎌治みたいな奴で味方に出来れば、穏便に話をなかったことにできないか?綾人の奴そういうの得意だろ!」
    「出来ないね。お相手の息子の方は、父親に似ず頭は悪いし短気で喧嘩早くて金遣いは荒くて女癖も悪い、絵に書いたようなドラ息子だ。そして、二週に一度のペースでお嬢に恋文を送りつけてくるぐらいの執着ぶりさ。俺は読んだことはないけど、毎回社奉行内の検閲に引っかかって処分されてるってことで察してくれ。そして、最近は縁談の話が持ち上がったことでもう旦那気取りでお嬢に会いに来ようとしてるんだ」
    「うわぁ……綾人が綾華を稲妻から避難させたい理由がわかったぞ」

    「綾人さんの今回の"仕掛け"、トーマは聞いてるんでしょ?」
    「うん?うーん、まぁ…」

    「あっ!サユだ!おーい、さゆー!」
    「空、パイモン、本当に稲妻から出ていくのか」
    「?」
    「うん?出ていくっていうか、綾華の璃月旅行の案内で一緒に行くんだけど。鎖国も解けたし、これからは璃月だけじゃなく、モンドにだって自由に行けるようになったんだから…あっ、そうだ、サユも一緒に行こうぜ!綾人に頼んで終末番の仕事、お休みもらってさ!一緒にモンドの一番大きな木ノ下でお昼寝しようぜ!風がすっっごく気持ちいいんだ!」
    「いいや、サユは行けない。大きな木の下でお昼寝はすごく、とても、したいけど…でも、サユは"綾人様"の終末番だから」

    「トーマ?どうしたの?」
    「サユのやつ、綾人様の終末番って言ったよな」
    「?なにかおかしい?」
    「サユは普段は若のことを綾人様とは呼ばない。当主様って呼ぶ。終末番の仕事関係なら尚更…若が終末番トップなのは稲妻では暗黙の了解とはいえ、個人名は出さないのが鉄則だ」
    「じゃあ、なにか、意味がある?」
    「………状況を整理したい。空、付き合ってくれないか」
    「勿論!」



    トーマが綾人に仕込まれた作戦立案の基本のき、それは敵と味方の目的を明らかにすること。

    「手綱義時の目的は、社奉行の当主になること」
    「神里綾人の目的は、神里家と家族を守ること」

    「手綱義時の目的達成のためには、複数の勝利条件をクリアしなくてはならない。逆に若、神里綾人の目的達成のためには、手綱義時の勝利条件をことごとく失敗させる必要がある。つまり、手綱義時が攻め、神里綾人が守りの立場にある」

    「手綱義時の勝利条件を書き出そう
    一つ、神里綾華の嫁入り
    二つ、神里綾人の始末
    三つ、神里家の取り潰し
    この全てを達成して初めて手綱家は社奉行の筆頭になれ、奴は社奉行当主になれる」
    「一見、条件が厳しすぎて手綱義時の分が悪そうだけど…」
    「だが、この勝利条件は多少の修正が効くから厄介なんだ。たとえば、一つ目お嬢の嫁入りだけどどうしても息子との縁談が無理なら、他の所で妥協してもいい、勘定奉行の臣下たちが柊千里さんを厄介払いしたような形に出来ればね」
    「そっか、必要なのは綾華が神里家を継げないようにすることだから、最悪息子の嫁でなくてもいいのか…じゃあ、勝利条件は綾華の神里家家督相続放棄、が正解?」
    「だな。だが逆に二つ目はどうあっても他に置き換えられないし修正も効かない。奴の立場では若の命だけは絶対に取らないと目的は達成出来ない」

    「綾人さんが生きていたら、三つ目の神里家取り潰しの理由がないもんね」
    「それは勿論そう。だがそれ以上に…奴は感情面で若を蛇蝎のごとく嫌ってる。もっとも、若も同じくらい嫌ってるからお互い様なんだけど。」











    「旅人が、空が教えてくれたんだ」


    『あのね、トーマ。俺、今からトーマにとって凄く気分が悪い事、不敬?なことを聞く、と思う。だから、嫌だったら遮ってくれていい。でも、どうしても気になってて…』
    『わかった。空がちゃんと気遣ってくれた上でそれでも聞きたいことだ。ちゃんと最後まで聞くよ』
    『ありがとう。あのね、トーマ。綾人さんって、どこか、その、精神的に病気なの、かな?』
    『………どうして、そう思うんだ?』
    『綾人さんの表情が…その、全部綾華かトーマの"真似"だから。二人の真似以外の、綾人さん自身の感情がまったくみえないんだ。』
    『ーーーーは?』


    「他の誰かはともかく、綾華とトーマだけはどうやっても気付けなかったと思うよ…だって、綾人さんの笑ったり嬉しそうな顔が綾華で、困ったりとか気遣ったりする時の顔がトーマの真似だったから。二人は自分自身の顔なんて見れないでしょ?」

    だから、どちらの顔も見れた自分が気づけたのだと空は言った。






    あとがき

    実装されて解釈違いになったら消します!!!!(逃げ道)
    人の心が分からない若様≒無痛症のせいで自分の痛みや感覚すらわからない綾人様という、なぜそんな妄想したのかわからないけど妄想しました。
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    kanamisaniwa

    MAIKING
    三ヶ月後。
    アズール先輩からの提案で参加を申請したアジーム家雇用希望者の選抜試験当日、私はジャミル先輩、エリムさん、そして面白がってついてきたフロイド先輩(本当は諸々ド素人の私を心配してついてきてくれたのをちゃんと知ってる)と一緒に熱砂の国にあるアジーム家所有の別荘の隣に設置された試験会場控えにいた。
    エリムさん曰く、アジーム家所有の不動産の中では中規模ながら市街から遠くて使い勝手が悪く最低限の手入れしかしていなかった別荘で、確かに選抜試験をするには丁度良い物件だとか。なんなら爆発させても大丈夫ですよ、と言ったエリムさんの顔はわりとまじだった。
    そしてその別荘の隣に建てられた仮設の集合場所兼待機場所で簡単な説明を受けた。といっても事前にアズール先輩が収集してくれていた情報と内容はほぼ同じで、あえて追記するなら試験会場である別荘のあちこちにライブカメラもとい監視カメラが設置されていて、その映像はリアルタイム公開されるので別荘内の様子はもとより他の参加者の様子を逐次確認できること、そして本当に魔法でもなんでも使用可、建物への損害も免責するから全力で目標を破壊してみろ、という言葉が説明担当からあったことくらい。
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    kanamisaniwa

    DONEカリジャミ拙作シリーズ、サルマーとムカクの結婚に関するひと騒動ネタ「私はアジーム家の当主の娘だもの、本当はアジーム家の商売ために有力な他の商家とか取引先と政略結婚しなきゃいけないでしょ?でも私はムカクとじゃなきゃ嫌よ。他の男とは結婚しないわ。かといってアジーム家の使用人にアジームの娘が嫁入りなんて不相応だなんだ言う人がいるのもわかってる。
    だからね、お父様。私、お母様が残してくれた財産だけをもって、"アジーム家のお金を一切使わず"お嫁にいくわ。お母様はご自分の結婚のときの持参金を全部私に残してくださったから、当分困らないし、カリムお兄様が財産運用をしてくれるって言ってくれたわ!手数料は兄妹割引してくれるって。
    それで十分暮らしていけるわ。アジーム家のお金を使わないから叔母様方みたいに盛大な結婚式や披露宴は出来ないし、これから贅沢な生活も出来ないけど、それでも私、ムカクと結婚して幸せになりたいの。だから、お父様お願い!私のお嫁入りを祝福して!」



    一時間後。

    「………出来すぎるくらいに出来た娘で結構なことだと思うが。なぜ"そう"なっている」
    「娘の結婚に大喜びで盛大に結婚式と披露宴をしようと晴れ着やら嫁入り道具やら準備しようとしたところで、当の娘 2948

    kanamisaniwa

    DONE最終章後生存√デアアイ。デアンはアラヤチとともに月で復興作業なうなお話です。友情出演は鮫←「えっ?なに、ヤチマなんだって??」
    『バケだ。デアンはバケに行く』
    「聞き返しても同じだった!色々突っ込みたいんだけどちょっと待って!」

    アイザックは耳元にあてた通信機から聞こえるヤチマに叫ぶように返事をしながらアウギュステの砂浜をジグザグに走っていた。
    アウギュステの砂浜を走ると行っても可愛い彼女と「ほーら捕まえてごらんなさい♪」みたいな楽しいことをしているわけでは決してない。
    骨の髄までエンジニアであるアイザックには物心ついてこの方彼女らしき女性が出来たことはなく、あわせて夏のアウギュステなんて高級リゾートに縁はなかった。
    だが、アイザックは今年は散々世話になったグランサイファーの団員達に誘われてここアウギュステに来ており、ンニだのンナギだのといった海の恵みに舌鼓をうっていたのだが。
    いたのだが。

    『アイザック、なにか忙しい?』
    「忙しいというよりなにかがおかしいかな?!」
    『落ち着けアイザック。状況を冷静に報告しろ』
    「やぁ相棒久しぶり!状況はアウギュステで空から鮫が降ってきているよ!!」
    『は?』
    「だから!!空から鮫が!!降ってる!!」

    シャァァァクなる鳴き声を上げな 2173

    kanamisaniwa

    DONE第五回デアアイワンドロ参加作品呪文を唱えるように彼の名前を呟いた。
    空の民にとっては恐怖そのものだろう彼の名前を。
    「デアン…」
    彼は侵略者でありあまりにも強すぎる戦士であり、何より空の世界の敵だった。
    それゆえに空の民は全力で彼と戦い、倒したという。当初予定していなかった、ほとんど反則じみた武器ヤーマを使って、細胞レベルで分解することでやっと止められた、と。
    あまりにも強すぎる戦士だったと、封印武器の中でも特異なグロウノスと半融合しなお肉体と精神のコントロールを失わなかった空の民のなかでも極めて優れた戦士であるバザラガをしてそう言わしめた。
    それなのに、そんな彼の最期の言葉は、『これで、ようやく眠れそうだ…』と、そんならしくないものだったとも。
    「アドレナリンが過剰だから眠ることができなくなった、そんなことを月で言ってたっけね…まさか最期の言葉にするほど困っていたなんて…知らなかった、は卑怯だね。僕が、僕だけが、知ることができたはずなのにその努力を怠ったんだから。君は月であれだけ僕を気に掛けてくれたのに…僕はなにも返せないまま自分の事だけに精一杯であげく裏切って逃げ出して…はは、僕は本当にひどい奴だね」
    手に持 1105

    スズメ虫

    DOODLEカルデア時空の晴道。ついに晴明が召喚された!…と思ったら子供時代の霊基だった、というネタのツリーをまとめてざっくり整えました。わーい!
    低レア召喚どうじまるくん。 某日カルデア。今日もまた、新しく一騎のサーヴァントが召喚された。

    「ししょー!」
    「ねぇねぇししょー遊ぼ!」

     そしてその後、そんな鳴き声を出す狐の耳と尻尾をつけ狩衣を着た物体を腰に下げてカルデア内を移動する道満の姿が散見される様になる。

     デアの首脳陣に拠れば、耳と尻尾の付いた物体ことショタ晴明は真っ当な別側面。小ギルくんやアレキサンダーと同系統の召喚だ。本人に問いただすと、やはり長じて死ぬまでの記録はあるようだが、別人のものの様にしか思えないと。
     故に、己が生前殺した相手を師匠と呼び慕い付きまとう事に一切の遠慮がなかった。
     始めは道満も追いかけてくる晴明こと童子丸に対して無視やら雲隠れやら激しい拒絶を示し、いつ戦闘になるかと周りは戦々恐々としていた。が、いつの間にか大人しく2人並ん…静かに道満とその腰巻と化している童子丸の光景が普通になった。そして童子丸は「どうまん」と名前で呼びかけ、師匠呼びすることもなくなっていた。
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    スズメ虫

    DOODLE道が霊基異常でショタ化したネタツリーをまとめてざっくり整えました。 2022.5.10
    小僧と狐の化生【概要】
    デアの晴道。霊基異常でショタ化した道をいつものノリでどついたらガチでおびえられてフルボッコにされる晴の話。 #雀虫メモ
    霊基異常の原因はノープラン。ただし完全に不随意。道は被害者。肉体だけショタに退行して霊衣のサイズはそのままのあの格好です。記憶もなく、播磨の廃寺寸前の小さな寺の身寄りのない小僧だという認識でいる。

    ***

     ふと小僧が目を覚ますと、見慣れない部屋の中にいた。見たことのない材質で、とにかくとても頑丈で清潔である。そんな部屋の、柔らかい台ので眠っていた。とにかく身を起こして見ると、さらに不可思議な事に継ぎ当てどころか繕った跡もない、身頃がとても大きい上等な着物を羽織っていた。
     何もかも分からない。分かるのは、自分が場違いな存在であるということだけ。見たこともない、理解できないようなもので溢れているという事はおそらく貴族の屋敷だろう。ここに居続けて心当たりもないのに盗人と思われるのもまずいが、裸で抜け出すのも妖しすぎる。かと言って部屋の中にあるものはどれも上等そうなものばかりで腰巻になるようなあるものはなく、この上等な着物を着たまま移動して汚すのも恐ろしい。
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