彼は彼の持つ『個性』を知ってるからこそ、必要以上にこちらに決定権をゆだねてくれることを知ってるわ。
「ご飯、食べにいかねぇ?」
「手を繋いでいい?」
「触れて、いい、?」
そのたびに付き合ってることを知っているクラスメートには
「いい意味で清い」「付き合ってるってーのに嫉妬する気も起きねえよ」なんて言われてみたりして
だから
ちょっとびっくりしたのよ
ふわりと唇に柔らかい感触
何も聞かれなかった
何も言われなかった
直後に交わした会話なんて、もうすぐ来る元旦に食べる実家の味の話
みそ味だったり醤油ベースだったり
餠だって角餅か、丸餅かだったり
そしてプロになって一年目の今年は年末年始はいつもより忙しいスケジュールだから
「今年は食べられるか分からないけどね。ケロケロ」
「確かに」
なんて笑いあった、一瞬の後
何ならムードも減ったくれもない
(意外に彼はムードやら何やらを大切にするのよねぇ)