Δドラロナ
連勤&連勤&連勤を超えた後
東の空がうっすらと青紫に染まっていく時間にようやっとベッドに泥のようにうつ伏せに沈み込んで横を見やれば、私と同じように連勤をこなした【備品】が同じようにベッドに横になりながら半分とろけた目で「なんで、吸対?」となぁぜなぜと囀った
「何が疑問?」
「だって結構無理してんじゃん」
「心配してくれてありがとうね。でもさぁ、じゃあ君は私にはどんな職業が似合うと思う?」
「料理うまいから・・シェフ?」
「シェフだったら技術的には三ツ星狙えると思うけど、体力的には無理だよ。一日中フライパン振って、食材の下拵えをして、なんてさ。あと好きでもないヒトの為に料理を作ろうとは思わない性分だから却下。」
「じゃあゲームが好きだから配信者、後はゲーム雑誌の記者とかも出来そうじゃん」
「記事書くのも配信も、それなりのものは作れるけどさぁ、どっちも人気商売だし不安定じゃない?やっぱり結婚を考えるとさ、不安定な職業はよくないでしょ」
「お相手にもよるだろ」
「相手にもよるけどさぁ、私のプライドとして却下。」
「テメェのプライドじゃなくて、結婚相手とそこんとこは話し合えよ。んじゃ、いっそ家業継ぐ道だってあったろ?てか親父さんほぼ日で勧誘しに来てんじゃん。」
「そりゃあ、大事な人の意見はちゃんと聞くさ、だからこんな与太話に付き合ってるんだし。え?御父様そんなに来てるの?私会ってないけど」
「忙しいからしゃーねーとも思うけどさ、今度会ってやれよ?。親父さん毎回スナバで反省会になってんぞ」
「・・・・もしかして毎回御父様とスナバ行ってたりする?」
「・・・流石にあの状態の親父さんをそのまま帰らせられねぇって。ほぼ毎回半泣きだし」
「・・・・今度御父様が来たら、絶対私に一報頂戴。」
「ん~~~。分かった。やっぱたまには家族に会いてえよな。」
「いや別に私は御父様に会いたいわけじゃないんだけどね。兎に角、勧誘にきてるんだったら現時点では吸対は辞めるつもりは毛頭ないって伝えなきゃだなぁ」
「なんで?」
「なんでって。言った通りだよ。他の職業選んでも大変なことには変わりないし、それにさぁ、吸対辞める気は無いよ。それとも君は私にやめてほしいのかい?」
「辞めて欲しいとは言わねえけど、あぶねえし、ほかに道がねえわけじゃないのに吸対を選ぶ意味が見つからない」
「意味ならあるよ。笑わないなら教えてあげるけど?」
「笑わねえよ。俺がお前の理由笑うって思ってる方がムカつく」
「そこでムカついちゃうのが君の可愛いところだから見せるのは私だけにしとけ。まぁそんなに大層な理由じゃないよ。私さぁ青と銀の組み合わせが好きなんだよ、それこそ青と銀の組み合わせの物は見つけ次第に手に入れなければいられないほどに。で、だ。吸対にさ、青と銀のがあるだろ」
「...もしかして紋章のことか?」
「あ〜、たしかにそれもそうなんだけどさ。まぁ、うん、間違えてはいないな」
「おもっくそ奥歯に物詰まった言い方しやがって、、明日テメェの奥歯に鶏胸肉が詰まりますようにの祈り」
「人の不幸を本人の前で祈るのはやめなさいって。間違えてないって言ってるでしょ。紋章もね、間違ってないよ。入隊した理由だとしたら正解」
「正解って、マジで紋章欲しさに入隊」
「青と銀のものだったらなんでも欲しかったって言っただろ、まぁ今の仕事を続ける理由は違うけど」
君の色の青と銀がエンブレムの青と銀
君と出逢う前から、君の色に似た物ばかりに手を伸ばしていたのだと今ならわかる
「今はね、もっと欲しいものが出来ちゃったからなぁ。だから余計に辞められない」
「危なくても?」
「危なくても」
「連勤続きでも?」
「欲しい物を手に入れる為ならね」
「欲しい物を諦めるって選択肢は?」
「無いよ。手に入らないなら他の何も必要じゃなくなる」
「欲まっしぐらじゃん。猫かよ」
「欲に忠実なのが一番の生きる秘訣だと思うけどなぁ。だってさぁ、どんなに危険でも、どんなにクソ勤労が待ってたとしてもさ、どうしても欲しいし独占したいんだもん」
「独占欲つぇえ」
「自覚はあるから安心してくれ。ともかく私の好きはそういう好き。好きなものに似た物ですら独占したいし、実際好きなものを手中に収めたらどこまでも大切にしたいし、実際大切にするよ」
「・・そっか、お幸せにな。」
「そこで君は簡単にお幸せに、なんて言えちゃうんだもんなぁ。」
「だって、お前を、幸せにする研究中だからな」
ふわあと起きていられる臨界点を超えたあくびとともに言われたそれに
脳の処理が一拍遅れるのなんて君は分からないのだろうけれど
だって
それってさぁ
すよすよとベッドに突っ伏して寝息を立てた姿に
赤い顔を見せなかったことへの安心半分
言葉尻を捕まえて言質にできなかった落胆半分で崩れ落ちるようにベッドに突っ伏す
だって
それさぁ
「私を好きってことじゃないか」