抱えられた腕の中から何とか抜け出そうともがけばもがくほどに
膝裏を支える腕と背を抱く腕にはさらに力が入れられて、ぎゅうぎゅうと拘束されるそれに耐えきれるはずもなく
「おおおおおおもい!私重いし、歩けるから、おおおおろして!!!」
「麻衣。暴れるのは危険だから駄目」
必死で暴れれば、ジーンはいつもと同じように優しく穏やかにほほ笑んではさらに拘束を強めたし、その背後にはなぜかブリザードが見えたそれに思わず首をすくめて、項垂れる。
(うう、怒ってらっしゃる)
後悔をするならば足のすり向けを見破られた10分前だろうか?
それともハイヒールで走り回った1時間前だろうか?
けれども後悔は先に立たずで調査中にはハイヒールで走り回ったし、10分前にはジーンとナルのどちらともに見破られたわけなんだけれども
怒られて当然。
不快に思われて当然。
だってこの仕事について早2年でどういう仕事であるかも分かってるし、危険がつきものなのも、チームとしてしなければならないのも分かってる。
じわりと悔しさで滲みそうになる何かを押しとどめようと唇をかめば
「痛かったでしょ」
するりと膝裏を抱えた腕の指が足の甲に指を滑らせるとともに頭上から降ってくる声は穏やかなまま
「…痛くないよ」
「そっか。それは困ったねぇ」
「…困らない、もん」
「うん。麻衣は困らないけれど、僕は困るし、哀しいって思う」
こまる、は分かる
チームだから、一人がけがをしたら迷惑だから。うん大丈夫分かってる。
けど
「哀しい?」
「うん。麻衣がね、一人で頑張らなきゃ、って思わせてるのは悲しいし、悔しい」
項垂れて、うつむいた顔を想わずに上げれば、ちょっとだけジーンの眉が困ったような八の字