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    nagakura0315

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    nagakura0315

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    自分以外がジェをpretty boy扱いするとキレるルの話。

    #ストリートファイター6
    streetFighter6
    #ルクジェミ
    luxemi

    Don't look「お前の新しい生徒、すげぇ美人だよな」
     ロッカールームでの休憩中に同僚がそう話しかけてきた。首にかけたタオルで顔を拭きながら考えてみる。嬉しいことに最近は新規のお客が多いから、特定の誰かを思い浮かべることはできなかった。
    「そうだっけ?」
    「おいおい、生徒の顔くらい覚えろよ」
    「覚えてるよ。あれじゃね、お前と俺の好みが違うんだろ」
    「ああ……」
     坊主頭の男は鼻をフンと鳴らした。何だ、腹が立つ反応しやがって。
    「お前の好みはアジア系だもんな」
    「何だよそれ」
     タオルを足元のバスケットに放り投げる。
     口ではそう言ったが、そっちには心当たりがあった。オレと関わりがあって誰かが揶揄ってきそうなアジア人なんて今は一人しかいない。あれは好みでも何でもないが。
    「いいじゃねえか、美人に付き纏われるなんて羨ましいぜ」
    「あいつは男だろうが」
    「正直オレはイケるね。女みたいな顔してるし、特に酔ったらエロ――」
     くだらない言葉を硬い音で遮った。素足で蹴ったロッカーの扉に傷はなかったが、同僚を青ざめさせるには十分だった。
    「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ」
    「な、何キレてんだよ」
     動揺と保身で向こうの声が震えている。オレだって何でこんなに苛立っているのかわからない。下の話が苦手なわけでもない。ただ、これだけは聞くに耐えなかった。
    「お前が気持ち悪い目で人の……『客』見てるからだろ」
     少し歪んだロッカーを閉め直す。
     話題を蒸し返される前に、自分から部屋を出た。腹の虫はまだ治らなかったが表面だけでも取り繕った。そうしないと、生徒が怖がってしまう。
     トレーニング室に戻ると髪の短い女性が真っ先にオレへ気付いて手を振った。確か、新入りだ。さっきのやつが言っていた美人とやらはこの人のことかもしれない。改めて見るとその評価に異論はない。十人に聞けば半分以上がそう思うだろう。
     けどオレは、それ以上の感想を抱かなかった。悪い言い方をすれば『だから何』だ。美人でも巨乳でも大した問題じゃない。オレには関係がない。
     ――あいつだって、そうだ。そのはずだ。

    「あっつ!」
     鬱陶しいほど長い髪を振り乱し、当のジェイミーとかいう男はチャックを全開にした服でバタバタと自分の胸を扇いだ。人の職場まで押しかけて好きに酔っ払う生活がちょっとだけ羨ましくなる。勝負に応じて飲ませたのはオレもであるんだけど。
     今日は夜遅くに来たもんだから、生徒も同僚も帰らせてから存分に殴り合ってしまった。おかげでお互いにボロボロだ。マットの上でくつろぐジェイミーの隣に救急箱を持って座り込む。一つ一つを見れば軽い傷だらけだが、これはこれで手当ての練習にもなる。
    「その格好で帰るなよ」
    「あ? なんれだよ」
    「言えてねえぞ、酔っ払い」
     軽くあしらいながら、消毒液の染みこんだコットンを腕の擦り傷に軽く触れさせた。浸みる痛みは勲章みたいなものだ。それが終わればガーゼで広めに覆ってしまう。
     作業が完了するにつれて、隣に寝転がったやつのことまで気になり始めた。惜しみなく曝け出された肌に打撲の痕が青く浮かび上がっている。だが目が行くのは傷の方じゃない。赤く火照った首やほどよく肉のついた腹、上着の影にちらつく胸元。色々な要素が昼間の会話を思い出させる。
     美人では、ある。生まれ持ったものもあるだろうけど、やけに綺麗な肌は日頃からケアされているおかげだろう。髪だってここまで伸ばすのは何年もかかるし、無駄のない筋肉もダンスや拳法で鍛えた成果だ。全部、『多分』がつくが。それでも拳を交える分、他よりはわかっているつもりだ。
     見た目しか知らないやつは何だって言える。無責任に表面だけを消費できる。真正面から煽り合う覚悟もしないで。ここまで強くなろうとする努力もしないで。
    「いいから、酔い醒めるまで寝てろ。もう誰もいねえし」
     救急箱を閉じた。
     ジェイミーはオレを見上げて拗ねたように唇を尖らせた。
    「じゃあ、おまえはいつかえるんだよ」
    「お前が起きたら帰るよ」
    「……んな世話、いらね」
     赤い顔が重そうな髪をのそりと引きずって起き上がる。そのまま見守っていたら、ジェイミーはぶっきらぼうな手付きで上着を閉め、赤い紐で雑なポニーテールを結んだ。
    「これで文句ねーだろ」
    「お、おう」
    「はやいとこ帰ろうぜ。ジェイミーさまがとちゅうまで送ってやるよ」
    「お前のせいでこんな時間になってんだろうが!」
     正論を返したところで酔っ払いには響かない。
     ふらふらと不安な足取りで立ったやつを放っておくわけにもいかず、救急箱は端に置いたまま慌てて後を追った。どちらかといえばオレが送った方がいいだろう。いや、それも面倒だな。もう家に連れ帰った方が早いか。これで危ない目に遭われるのも目覚めが悪い。自分が人からどんな風に見られてるかも想像が出来ないんだから、こいつは。
    「あー、鍵閉めるから待ってろ」
     勝手に出ていかないよう、細っちい腕を掴んだ。ジェイミーは幼く頬を膨らませていたが、酔っている自覚もあるのか妙に大人しくついてきた。
     こんな顔は、軽く受け流せるオレ以外の誰も見なくていい。



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