鼻血出した夏目 夏目が倒れたと聞いて、保健室へ向かった。
体育の授業中にド派手に転んでそのまま起き上がって来なかったらしく、心配というよりは面白がって噂するクラスメイトたちのおかげでこの話がすぐ耳に入った。
妖のせいなのか。それとも、最近悩まされているあの症状のせいなのか。
倒れた理由に心当たりがいくつかあり考え事をしていたせいか保健室にはすぐ着いた。
扉を開けると、保健室の先生がびっくりした顔で振り返りその視線とぶつかる。
「友達が倒れたって、聞いて」
今更だが、俺が来てどうにかなることだっただろうか。
予鈴がなり、廊下にはほとんど生徒がいなくなっていた。授業も始まるというのに、おれはそれらを無視してここに居る。
クラスも違う。戻れと、言われるのは明らかだった。
保健室の先生は、ちらほらと血が付着したガーゼを手に持っていて、それをごみ箱に捨てながらこちらに向かってきた。
とりあえず保健室に入って、先生のその後ろを見てみるとカーテンがしまっているがそこに人の気配を感じる。おそらく夏目がそこに居るようだった。
先生が捨てたガーゼに血が見えたので、怪我をしているとすぐにわかり手先が痺れてくる。やばいのか、と思ってしまい少しの間だが息を止めていたらしかった。
「大丈夫よ、鼻血がでちゃったのと、肘すりむいちゃったのよ」
顔に出ていたのか、声に出していないのに答えを的確に教えてくれた保健室の先生が笑った。
ひら、と手を小さく上げてカーテンのほうに流す。……どうぞ、という意味だと受け取って、頭を下げた。