これは夢の話ですが ずいぶんと長い間、夢を見ていたような気がした。
瞼を開けると、視界一面に白地のタイル張りの天井が広がる。バイク事故に巻き込まれて足の骨を折った俺が、ここぶどうヶ丘総合病院に担ぎ込まれて早五日。白で埋め尽くされた味気ないインテリアにもそろそろ慣れていい頃合いだとは思うが、目を覚ますたび、ほんの一瞬だけここがどこだか分からなくなる。
それにしても、目覚めたときから不思議と気分がいい。叶うことならもうちこっとだけ眠っていたかった気もするが、仕方ねぇ、差し入れの雑誌でも読んで時間を潰すか。そうしてのろのろと体を起こした俺が目にしたのは、ベッド脇のパイプ椅子に体を預けたまま、健やかな寝息を立てている想い人の姿だった。
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