贈り合うのは想いの束 真っ赤な花の花束といえば、ロマンチックなシチュエーションの王道だろう。いささか古風な感もありはするが、今でも様々な媒体のフィクションで見られるし、花屋や各種商業施設でも並べられる。「最近の若者」と呼ばれる暁人も、一度は目を引かれた事があるし、手に取ってみたいと思った事もある。
ただし、それはその花束が『玄関を出た瞬間にぼとりと頭上から落ちてきた』物でなければ、の話である。
(うーん、これは……)
暁人は花束から視線を逸らし、それが落ちてきた事など無かったように玄関を閉め、いつも通りに目的地に向かって出発した。
あれには反応しない方がいい。暁人の勘がそう告げていて、数奇な経験により培われたそれに従った。勘と同様に得た力で調べてみてもよかったが、それよりも体が速やかに立ち去る方を選んだので、いつもより少し足早に目的地を目指す。幸いにも、今日向かう先はこの手の事柄に対する専門家が集まる所だ。
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