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    sky_yuratto

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    自創作 : #よつまるのほし うちのこ設定 : #404_設定 うちよそ創作 : #とりどり夜話紡

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    sky_yuratto

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    ※文章中に顔を思わせる表現があります( 顔あり )

    #よつまるのほし
    four-partiteStar
    #空ろを_る
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    空ろを■る 孤島――初めて感じ得たそれは『  』だった。

    空ろを■る

    「おい、あんた…」
    脈々と生きづいていた者はとうに消えた砂の丘に中天ささやかに光が歌うその地で星の子が相対して、
    「動けるか?」
    ……いや一人は伏していた。応答はない。自らの容姿とそう違わない目の前のそれに星の子は同じものだと悟った。あの壁画を見たのだろう、洞窟を進み、使命を身に帯び歩み始めたのだろう……自らと同じ様に。ならば置いて行く道理はなくなった。こうして星の子は膝をついた。
    自らの灯をかざしよく見ればその身が砂に塗れていることがわかった。軽く払えば湿気の混じらない土地だ、赤茶けた砂はさらりと落ちていく。纏う翼の如き衣は本来の茶色を取り戻し、その背に瞬く星が一つ、二つと宿った。
    「……ん」
    むくり、と伏していた星の子は反応を示し目の前の似通った相手をぼんやりと見据えた。起こした星の子はそれを確認すると直ぐさま問いかける。
    「ここで倒れてたんだけど、覚えあるか?」
    「……?」
    座り込んだままの星の子はゆるりと辺りを見回した。赤茶に満たされた中の少しの硬い鈍色と柔い白、そして自分そっくりの誰かを認識した。
    「えっと…」
    「…わからねぇのか?」
    目の前の星の子はこちらを捉えて離さない。その声に刺々しさはないが早急に答えを求められていると直感した。随分せっかちだ。何か言わなければ。でも上手く纏まらない。何せ起きたばかりだし。整理する時間くらいくれてもいいじゃないか。少し待ってほしい。そんな言葉を飲み込んで自らがこの状況に至るまでを朧気に思い返す。確か、ええと、と言葉を置きに置き星の子は答える。
    「……あまりにも、溢れてしまったから」
    「は…?」
    ぽつりと零れた言葉に面食らったような声が呼応する。実際面をしていて姿から細部を汲み取ることは出来ないのだがそれはお互い様だ、この際置いておこう。ただ態度を見てどうにも望まれた答えではなかったらしいと星の子は理解した。ゆるりと視線を相手から逸らし、自らの上を『指差した』。覚えたての表現だったが意図が通じたらしい、相手もその方を見た。
    「雲の中に通り道があったんだ」
    「通り道?」
    立ち上がるとうーんと唸りよく目を凝らすようにじっと星の子は雲を見つめ続ける。白を基調とし空と陽の色に染まった雲は悠々と広がり遠くの神殿を取り囲んでいる。あの中に、とぼそっと零す確信を得ない反応に、指差す星の子は思い至った。
    「もしかして、まだ行ったことが無い?」
    「まぁな。飛ぼうとしてあんたが見えたから先にこっちに来た」
    「そうだったんだ…」
    何でも無い経過説明に身の内が重たくなるような、然れど同時に湧き上がるあたたかさに星の子は漠然としたくすぐったさを感じ自身の核に触れた。手でそっと撫でてみるものの何か変化があった訳でもなく、首を傾げた。
    「で、続きは?」
    「…あっ、うん。それで、落ちた…のかな」
    「落ちた?飛んでたのにか?」
    「通り道の風はすごく強くて、風に煽られてしまったんだ。立て直そうと飛んだのだけどもっと方向がわからなくなってしまって…気づいたらここに」
    「あー…そっか…」
    飛ぶための余力が残っていないまま、前のめりに倒れ伏していたのはこういうことだったのかと指差した星の子を見遣った。詰まるところこの星の子は雲を突き抜け盛大に着地に失敗したのだ。更にそのはずみでごろんごろんと砂地を転がったことで砂に塗れたのだろう。この身体、結構丈夫に出来てるっぽいな…と思考を巡らせつつ星の子は手を差し伸べた。
    「まぁ、その大変だったな。立てそうか?」
    「大丈夫」
    未だ座り込んでいた星の子はその手を取り、立ち上がった。両者が並ぶ。しかし背に差があり、差し伸べた星の子の方が背は高かった。容姿はまるきり同じに見えたが、実際は割と違うものだ。
    「ありがとう」
    「別に良い。何もしてねぇし」
    「でも、起こしてくれたでしょう?」
    緩やかに感謝を紡ぐ星の子の言葉にじわじわと陽のような温度を感じたように思えて受け取った星の子はむず痒くなった。先ほどまで一人でいた時には得なかった感覚だった。すると相手はそのまま自らの核に手を遣り自らの光を一カ所に集め、蝋燭を生成した。
    「だから、お礼に貰ってほしい」
    見据える星の子と同様に蝋燭に灯る明かりは柔和で、消えることなく揺らめいている。その様子に星の子は断るという選択肢はなく受け取ることにした。灯のあたたかさが核から隅々へと広がり融け込んでいく。外部からの受け入れではあったが受け入れ難さはなく融け込んだことで違和感もなかった。そういう造りなのだろうと星の子は自らを断じた。同様に自らも蝋燭を取り出すと、相手も拒むことなく受け入れた。この感覚をあの星の子も感じ取ったのだろうか。再び自身の核をひと撫でしていた。しばし灯の余韻に浸ったのち視線が交わされる。この時を以て双方は正しく観測された。両者が口を開く。
    「よろしくな、クァリア」
    「うん。よろしく、フォルターク」
    見知らぬ誰かとの邂逅。灯のくみ交わし。これより幾度となく繰り返される何の取り留めも無い行為だが、二人にとって確かにこの先に刻まれるものとなった。
    ……何故って、初めてとはそういうものでしょう?
    二人の星の子、フォルタークとクァリアは手を取り合って進む。まっさらの砂丘に点々と足跡が並び落とされる。手を差し伸べた者として、この道もフォルタークが先導した。飛んだ方が手っ取り早いことは理解していたが、手を伝わってくる未知の鼓動を掬うことに気が向いていた。互いの中で波が押し寄せる様な錯覚にクァリアはふと遠くに広がる海を見遣る。どくん、どくん。ざざん、ざざん。それは自分ではない誰かと繋がりを持ったと感じ取らせる証左だった。砂地を抜け一歩一歩岩肌を登る。さくりからぺたりと感触が変わる。足に僅かに付着していた砂が岩と擦れ歩みと共に舞い上がる。埠頭に到着する頃には全て落ちきっていた。呼ぶように神殿の鐘が鳴ると、両翼は同時に飛び立った。覚束ない身体を風に乗せる。ぐんぐん勢いを増しお互いのバランス取りに自らも崩れそうになる中、手は離さないままだった。
    そして二人の初飛行は真っ直ぐに終わりを告げる。ものの見事な正面衝突だった。二人は神殿前の草の道に投げ出されるように転がる。細かい葉が憂うように撫で、仰向けになればついさっきまで背を押していた風がびゅうびゅうと笑っている。
    「……」
    「ふっ…ふふふふ」
    「今度は何だよ…」
    クァリアはそのままの姿勢で固まるフォルタークを見遣ると糸が切れたように声を発し続けた。フォルタークは二度目の衝撃でついに破損したのかと身の温かさがすとんと落ちていくような感覚に苛まれながら横に転がるクァリアを見た。その様子など露知らずクァリアは発声を止められなかった。砂地よりもがつんときた衝撃で眩みもして起き上がれそうにないのにまるで身体が軽い。とにかく身の内から溢れてくる何かを外へ出さないといけない衝動に駆られていた。転がっているのは先ほどと変わらないのに、理由を見繕う暇なく。
    「どうしてだろう…ふふふ」
    「……なんでだろうなぁ」
    はは、とフォルタークはつられるように声を零す。『これ』の正体はわからないままだがどうにも悪い気はせず、雲が晴れた心地だった。
    ここは孤島。砂に沈む静けさをたたえ紡ぎ合う同胞と出会うはじまりの島。
    新たな旅路の幕開けをここに。


    登場人物紹介
    フォルターク…覚醒したての星の子。はっきりしている。
    クァリア…前後不覚の星の子。ぼんやりしている。
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