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    岩藤美流

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    岩藤美流

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    両片思いのアズイデちゃんが、魔法の効果で事故るコメディです。ニヤニヤしていただけたら幸いです。

    ##アズイデ短編

    Please talk to me about your idea.「うーんそうだねえ、珍しい物をお求めなら、これなんてどうだい? "自白"の魔法を使える画期的なマジカルハニーさ。紅茶にでも一匙入れれば、相手の心の声が聞こえてくるんだよ、小鬼ちゃん」
     ジェイドが購買への買い出しに訪れた時、店内にはたまたまサムしかいなかった。時間もゆっくり取れそうだったので世間話のついでに情報収集をしている時、何か珍しいものは入荷していませんか、と何気なく尋ねたのだが。サムがそう言って勧めてきたものを見てジェイドは目を丸めた。それが本当だとしたら、自分のユニーク魔法を使うまでもない、なんとも便利ではないか。——つまり、上手い話には裏が有る、という事だろう。
    「そんなに画期的な魔法でしたら、使いたい方もたくさんいらっしゃるでしょうに、聞いたことが有りませんね」
    「それはそうさ。この魔法はあくまで仮初のもの。効果時間は僅か5分、しかも、相手の心の声が聞こえる代わりに、自分のほうは思っていることを口にしてしまうってデメリット付きなんだ」
    「おやおや、それでは何をしているのだかわかりませんね。こちらも心を隠せなくなるということですか」
    「そ、まあ別名本音トークのオトモ、みたいなものさ。それでもよかったらいかがかな?」
     サムの差し出す蜂蜜の瓶をしばらく眺めて、ジェイドは「おいくらでしょう」と目を細めた。

     ジェイドがその瓶を持ち帰り、アズールに見せたところ彼は目を輝かせて「なんて素晴らしいものなんだ! 相手の弱味を知りたい放題じゃないか」と言った。
    「ですが、あなたの心の内も開示してしまうことになるんですよ?」
    「僕はお前とは違って心が清らかですからね。見せて困るような本音を抱えて話していたりしません。つまりこの薬のデメリットは存在しないというわけです」
    「よく自信満々でそんなこと言えるよな~アズールって。そーいうところがすげーおもしれーんだけど」
     フロイドとジェイドが顔を見合わせて笑っているのもよそに、アズールはその瓶を手に取って色々呟いていた。例えばこんな場面で、あるいはあの人と……などと計画を練っているアズールがもし今そのマジカルハニーを使っていたなら、きっと双子の「絶対アズールおもしろいこと起こす」という本音が聞こえたことだろう。
     そんな彼らの本音にさえ気付かず、アズールは意気揚々とその瓶を掲げた。
    「ところでお前たち。とりあえずこの魔法の効力を確認するため実験にk」
    「いやです」
    「やだ~」

     と、いうことでアズールはボードゲーム部の部室にやって来ていた。
     紅茶セットも持ち込んで、自然な流れで懇意にしている先輩であるイデアに一服盛る(飲むのは自分である)魂胆である。どうして彼を選んだかと言えば、何が有ったとしても彼なら許してくれるような気がしていたからだ。とはいえ、効果をばらしてしまえば双子のように断られるかもしれないから、当たり障りのないことを尋ねて効果のほどを確かめるつもりだった。
     都合のよいことに、部室にはイデアしかおらず、二人は宅を囲んでチェスを始めることにした。今日は茶菓子と簡単なものですが紅茶を用意してきたんです、とお湯の入った水筒やティーバッグを見せると、イデアは「は~、流石実業家さんは気が利きますな~」と感心したとも呆れたともとれる言葉を漏らしていた。
    (これがどういう意味合いで言っているかもわかるということですね、実に便利な魔法だ)
     アズールはニッコリと微笑んで、紅茶を用意する。味気なくはなってしまうが、割れ物を持ち歩いても仕方ないから部室に常備されている紙コップに紅茶を注ぐ。折角なら食器やロケーション、茶葉といったその全てを完璧に用意してもてなしたいものだ、今度ラウンジにでもお招きしましょう、この人が来てくれるかどうかはわかりませんが……。そんなことを考えていたものだから、アズールは小さく首を振った。いけないいけない。雑念が浮かぶとそのまま口にしてしまうのだから、本音だけで話をできるようにしておかなければ。
     イデアのカップには砂糖の入った紅茶。自分のカップには、マジカルハニーが入れられている紅茶。用意が終わると、二人はしばらくチェスを楽しんだ。
     ゲームも終盤に入って来て、イデアが盤面を見据えて真剣な眼差しを浮かべ始めた頃、アズールはそっと紅茶を口にした。
    (ポーンを動かすか? いやでもあっちに駒が有るからな、こう打つとたぶんアズール氏はこう打ち返してくるから……)
     イデアのその天才的な頭脳で計算されているチェスの駒の動きが頭に入って来る。アズールは感動した。本当だ。
    「……え? 何が本当なの?」
     イデアが顔を上げて、怪訝な表情を浮かべている。
    「あっいえ、ええと」
     雑念が浮かぶとそのまま口にしてしまうのだった。アズールは咄嗟に自分の気持ちを悟られまいとした為に、何も考えずに話すしかなかった。
    「いつもイデアさんの打つ手は素晴らしいと思っています」
    「へっ、急にどうしたのアズール氏。紅茶も淹れてくれるし、もしかしてなんか企んでます?」
    「滅相も無い。僕は本当にそう思っているだけです、その、いつもイデアさんは僕には考え付かないような手を打ったり、考えたり、そう、すごいと思っているんです、僕は正直にいってあなたを尊敬しています、あああ、ま、待ってくださいすいません、僕少し動揺していますね」
     いらんことまで言ってしまって、アズールは焦り始めていた。思いを口にするとは聞いていたけれど、これほどまでとは思っていなかったのだ。顔が熱くなって汗が滲んできている。イデアが変に思っていないか心配になって彼を見ると、意外なことに彼は僅かに頬と髪を赤く染めている。
    「な、ななな、何なに急に!」
    (アズール氏めっちゃ褒めてくるじゃん、いや困る! そんな風に言われたら拙者勘違いしちゃいますし……)
    「勘違いって何のことです」
    「エッ!?」
     思ったことを言ってしまったものだから、アズールは自分の口を押えたけれど、もうどうしようもない。魔法の効果は僅か5分。しかし、今のアズールにとっては世界で一番長い5分になるだろう。
    (エッ!? 何アズール氏! エッ拙者の心が読めるの怖ッ!? いやもしかして口に出しちゃってたかなヤバイヤバイ、アズール氏のことどう思ってるかバレたらもうこうやって遊んでくれたりしないかもだし……)
    「イデアさん、僕のことを、どう思ってるんですか?」
    「えっ、ど、どど、どうって(どうってどうってそんな言えるわけないじゃないですか好きだとかめっちゃ美人でかわいいとかいや言えるわけないわーキモいわーアッ、でもここで黙ってたらもしかして嫌いとか思われちゃったりしない!? やだ! それはやだ! 助けて陽キャの神様ケイト氏こういう時拙者はなんて答えたらいいの! アッ)ア、アズール氏は、僕のことどう思ってるの(ウワーーッやってしまった禁じ手オウム返し拙者は思わせぶりな女子か死にたい)」
     イデアの心の声を聞いて、アズールは顔を真っ赤にしてしまった。ボッ、と音までしそうなほどに恥ずかしい。イデアの言ったことを理解しようとすれば心の声が漏れてしまうだろう、しかしでは彼の心を言葉のまま受け取ってしまわねばならないし、ついでに何も考えずに返事をしなくてはならない。
     事故が起こらないはずがなかった。
    「僕はあなたと一緒にボードゲームをするのが好きです」
    「ひゃ、」
    「あなたを打ち負かせるのはとても楽しいです、あなたが悔しがる姿がとてもかわいいから……あっ、いえ可愛いと言うのはつまりですね、可愛いんですよあなたは、あああ、ち、ちが、僕は、僕は、」
    「ひゃ!!?? あ、あ、ああアズール氏!?(かっかわいい!? 拙者が!? いやいやいやかわいいのはアズール氏ですからね!? なんでアズール氏めっちゃ赤くなってるのかわいい、いやなんだこの状況どうした助けて! 助けて誰か!)」
    「ぼ、僕も助けて欲し、ああいやええとええと、……っぼ、僕はあなたを先輩として尊敬していました! けど今はすごく好きなんです!!!」
    「エッ!!!!(す、好き!!!!????」
    「あ、あああああああ! 早く5分過ぎろ!!!! 恥ずかしくて死ぬ!!!!」
     アズールはガンと頭を机にぶつけて突っ伏した。「なんという恐ろしい魔法だ、これでは自白させられているのは、僕じゃないか!」
    「何!? アズール氏、自白って何!? どういうこと!? てか僕のこと好きなの!?」
    「ああああああもう無理ですすいませんイデアさん僕はちょっとお手洗いに行ってきま、そうです僕はあなたのことが好きですから今はそれを全力で伝えてしまうので僕は席を外しますううううう!」
     うわあああああ、と叫びながらアズールはボードゲーム部の部室を走って飛び出した。後に残されたイデアは髪も頬も真っ赤に染めたまま、「ひえぇ……」と力無い悲鳴を漏らしたのだった。



     それがきっかけで付き合うことになったものの、その後アズールが部室に戻ることにどれほど苦労したことか。かいつまんで聞いただけでもフロイドが腹を抱えて笑い転げ、ジェイドが肩を震わせたことは言うまでもない。
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