おさななrois 自分が普通の家の息子ではないことに、幼いながら玲王は気付いていた。それに対して不満があるわけではないが、時より公園ではしゃいでいる同年代の子どもたちが羨ましくなる。
習い事にはいかず公園のブランコに座り、遊ぶ少年たちを見つめる。玲王にとってサッカーをする彼らは眩しい。
「よっちゃん!手加減しろよ!!」
「え……で、でも……」
どうやら、一人の少年のプレーが秀でており他の少年たちは不満のようだ。俯き服を握りしめる彼に玲王は同情した。周囲よりも突出した才があるだけで排斥する幼い子どもの残酷な現場を目撃した玲王は気まぐれに腰を上げた。本当に気まぐれだった。
「お前らが下手くそなんじゃねぇの」
「な、なんだよ!お前!!」
ヒーローだと思った。舌を出し眉をアンバランスに下げた表情は悪役だというのに、泣きべそをかく潔にとっては正義の味方なのだ。
「そんなに言うんだったら、お前は上手いのかよ!」
「じゃあ、やってみるか?」
彼はボールを奪いくるくるとドリブルをし、簡易的なゴールにシュートをした。
「俺、体育でしかやったことないけど、お前らもそうなの?」
「く、クソっ……!」
脱兎の如く逃げ去った友人たちを尻目に、紫色のショートボブを靡かせる少年に話しかける。
「ね、ねぇ!」
「うん?」
「さっきはありがとう!その、サッカー上手いね!」
「あ、うん」
「俺、潔世一!君は?」
「……御影玲王」
「よろしくね!」
潔の笑みを目の当たりにした玲王は、紅潮した頬を誤魔化すために真っ赤な太陽に目を向けた。
潔との出会いは玲王の世界を一変させるのに十分であった。灰色がかった彼の日常を塗り替えた潔は近所の公立小学校に通っているようだ。玲王が登校している私立小学校は英才教育を行うため、カリキュラムの都合で低学年である彼も五、六時間目まで授業時間が割り当てられている。さらに、放課後の殆どは習い事。彼と一緒に遊ぶとなれば、習い事をサボるしかない。