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    ししとう

    @44toshishi

    支部にあげるほどきちんと書いてなくてTwitterにあげるには文字数が多い書きたいところだけ書いたものを投げる供養場。

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    ししとう

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    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21509911

    のその後です。
    三十年後ドラルク

    #ドラロナ
    drarona

    同じ月を見つめて とぷん。
     と、音がしたような気がした。
     薄闇の中から引き込まれた闇の中、私を抱きしめる腕はとても温かい。

    「ロナルド君。」

     名を呼べば、すでに闇は消えて月明かりの中。

    「…ロナルド君?」

     重ねて名を呼んでも返事は返ってこない。
     ただ小さく鼻をすする音が聞こえるだけ。

    「探してくれたのかね。」

     そう言って私を抱きしめる手の甲を撫でれば、

    「当たり前だろ…。」

     と、震える声。

    「寂しかったかね?」

     期待を込めた問いを投げかければ、

    「……分かってんだろ。」

     と、不貞腐れた声。

    「なぁ、帰ってきてくれよ。」

     抱きしめた腕を解き、くるりと向きを変えて向き合った青い瞳。
     闇に飲まれる刹那に見えた、美しい瞳と同じ色。

    「……帰ってきただろう?」
    「家にだよ。その、まだ怒ってるか…?」

     叱られた大型犬のような顔に、ふふっと思わず笑ってしまう。

     ──かなわんなぁ。

    「ドラ公……?」
    「買い食いをするなとは言わん。君とジョンの楽しみの一つだからな。だがな、ちゃんと報告しろ。他で帳尻を合わせてやる。」
    「お、おう。」
    「次にまた健康診断でC判定なぞ叩き出したら、今度こそ私は出ていくからな。」
    「わ…分かった。」

     ならばよろしい。

     そう言って逞しい体躯を抱きしめる。
     若ルド君とはやはり違う。
     筋肉の質感、鼻に届く匂い。
     私のロナルド君は、やっぱりこうでなくては。
     同じ時間を共にした、このロナルド君でなければならないのだ。
     今頃向こうのロナルド君も、同じような事を思っているのだろう。
     そして向こうの私と共に年月を重ね、このロナルド君とはまた違ったロナルド君になるのだろう。
     面白いな、ロナルド君はロナルド君なのに。
     私たちの執着は、それ程に強いということか。

    「ドラ公?」
    「精々長生きしろ、それで許してやる。」
    「そりゃ、するけどよ。」

     お前もちゃんと話をしろ。
     そんな若ルド君の言葉が甦る。
     でもね、ロナルド君。
     君だって心変わりするかもしれないだろう?
     あぁでも、私も君に同じことを言ったからね。
     私だけ反故にするわけにもいかないか──。

    「ついでに聞くが。」
    「ん?」
    「……私と悠久に月を愛でる気はあるかね?」

     平静を装いながら、でも顔は見れなかった。
     抱きしめた腕が震えないようにするのが精一杯だった。

    「何言ってんだよ。」

     暖かい手が私の背をを撫でる。

    「月どころかお前の全部に付き合ってやるつもりだよ。」

     肩が、震えた。
     君はあの臙脂色のリボンがついた小さな小箱を渡す時から、心変わらずにいてくれたのか。

    「……吸血鬼の素質があるな、君は。」

     耳の裏の首筋に一つキスを落とした。
     
    「なぁ、帰ってきてくれるのか?」
    「仕方ないだろう。これ以上君を放置しておくと、ますます不健康になりそうだしな。それに。」
    「それに?」
    「浮気もできなかったしね。」
    「う、浮気!?」

     抱きしめた腕を解き、ほら帰るぞ、とさっさと一人で事務所ビルに向かって歩き始める。
     待てよ!浮気って何だよ!と叫びながらロナルド君が追いかけてくる。
     暫く気を揉ませるのも悪くないな、などと思いつつ夜空を見上げる。
     そこにあるのはやわらかな光を放つ美しい月。
     もしかしたら若ルド君と重ねたあの夜の逢瀬は、悠久の時を照らすあの月の、ひと時の夢だったのかもしれないな。
     そんな事を思いながら、同じ月を見ているだろう過去のロナルド君に、ありがとう、と心の中で呟いた。
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