貧者の一灯 エランはペイル社の特別更衣室で首元のジャボを結びながら、寮の門限とレールの運行ダイヤを頭の中で確認していた。いつもは身体調整の後、自室に戻って鬱屈とした時間を消費しているのだが、今日は珍しく外出の予定を組んでいた。行き先は、学園の生徒が休日によく利用する商業地区。衣食住をペイル社に全て管理されている関係であまり利用したことがない上に、目的のものが短時間で見つかる保証もないので、今日の調整が想定時間内に終わったのは幸いだった、とエランは密かに安堵していた。
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直通のレールを利用してたどり着いた商業地区はうんざりするほど人で溢れかえっていた。商店が集中していて、なおかつ休日となれば利用者が増えるのもやむを得ないのだが、静寂を好むエランにとって、好ましい状況ではなかった。
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