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    nekononora

    94とFGO。書くのも読むのも雑食でいきます。逆、リバ、R、G、などなど書きたいように書き散らかします。
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    nekononora

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    パーバソの続きものです。
    お題:騎士
    時間:1h +1h
    パーさんとバソさんの出会編。パーさんの一目惚れともいう。
    ベディさん視点。

    #パーバソ
    #パーバソワンドロライ

    恋の不満と恋の模様④ 円卓名義で申請し、月極で借りている部屋。
     定期的に行われる集まり以外は、円卓の休憩室に使われたり、管理をしているベディヴィエールに申請すれば時間単位で貸りられる。
     そんな部屋のドアには今、『只今貸切中』の札がかけられており、中にはベディヴィエールとパーシヴァルの二人がいた。
     普段、円卓の集まりで使われる大きなテーブルではなく、数人用のテーブルに椅子が二脚。
     テーブルには紅茶とクッキーやスコーンが乗っているが、手をつけているのはベディヴィエールだけだ。
     さくさくさく、もぐもぐもぐ、ごくりと食べ飲みするベディヴィエールの前、健啖であるはずのパーシヴァルは机に肘をついて頭を抱えている。
     ベディヴィエールが飲食する音だけが響く室内。クッキーやスコーンが半分ほど減ってから、ようやくパーシヴァルが口を開いた。
    「……恋とはこんなにも人を愚かにするのか? それとも私が愚かなだけなのか?」
     それは問いかけではあったが独り言のようではあったが、ベディヴィエールはとりあえず口の中のスコーンを飲み込み、紅茶で口を潤してから返答した。
    「……で? 今回はどのような愚か者の行いをしたのですか?」
    「……」
     パーシヴァルはすぐに答えない。ベディヴィエールはせかしたりはしない。
     五分ほどのベディヴィエールの飲食の後、パーシヴァルが苦渋に満ちた声で告白した。
    「…………黒髭殿との仲に嫉妬して、知らないふりを……」
    「あぁ、“話してくれない不満”の話ですか」
    「ぐぉ」
     パーシヴァルはまるで重傷を負った時のような声を発し、纏う空気がいっそう重いものになる。
     そんなパーシヴァルを見つめながら、ベディヴィエールは冷めた紅茶を淹れなおす為に立ち上がった。


    ◇◇◇


     数ヶ月前。

    「パーシヴァル卿!」
     パーシヴァルが召喚されたと聞き、ベディヴィエールはストームボーダーの廊下を歩いていた。
     ストームボーダーやカルデアについての説明中かもしれないが、一目見て、会釈だけでもと。
     懐かしい顔と鎧を廊下で発見し、ベディヴィエールは廊下でつい声をはってしまった。
     それぐらいに再会が嬉しいものであった。
     彼は生前と変わらぬ笑みを浮かべ、次におや? と少し首を傾げる。
    「忠義の騎士、ベディヴィエール。久方ぶりだ。何か……印象が変わったかな?」
     あ、それは、と。正確にはパーシヴァルの歴史の軸にあるベディヴィエールでない事を告げると、混乱させてしまったようで、眉を寄せて怪訝そうな顔をするパーシヴァルに、長い話をした。
     ベディヴィエールが今のベディヴィエールとしてサーヴァントになった話を。
     涙を流して聞き終えたパーシヴァルは再び会えた奇跡に感謝し、長い抱擁を交わし、それからも様々な話をした。
     白紙化の事、マスターの事、焼失の事、そして、我らが円卓の事を。
     ガウェイン、ランスロット、トリスタンの三名がすでに召喚に応じ、同じ空間に長期間暮らしていると聞き、パーシヴァルは憂を帯びて思案する表情を浮かべれば、言葉を選びながらというふうにベディヴィエールに問うた。
    「それは……彼等も含め、みな、健やかに過ごせているのか?」
    「…………えぇ」
     ベディヴィエールはパーシヴァルの言わんとする事を正確に読み取り、優しく微笑んで頷く。
     パーシヴァル卿がまず憂うのも当然だった。
     生前、モードレッドが叛逆を起こす前から我々の仲は良好とは言い難かった。
     絶対的な王があり、なんとか同じ卓を囲んでいたが、多くの者が爆弾を抱えており、それがいつ点火するか、いやすでに導火線に火がついていた者はいただろう。
     モードレッドをきっかけに様々な爆弾が連鎖的に爆発し、結果、カムランの戦いとなった。
     王や多くの円卓の騎士の物語は終わった。
     そしてパーシヴァルは旅に出でおり、帰ってきた時には終わっていた。
    「三人とも……いえ、王も含め呼ばれた円卓の騎士は全員健やかに、そして精力的に過ごしておりますよ」
     パーシヴァルはベディヴィエールの答えを聞くと、驚いた顔で、そうか、と呟き、次第にじわじわと唇の口角があがっていき、目尻に涙まで浮かんだ。
    「あぁ……それは喜ばしいな」
    「えぇ。生前は話し合いが足りなかったと話し合い、意気投合し、」
     ベディヴィエールは三人の騎士の顔を思いだして、ニッコリ笑顔を貼り付けた。
    「そして誰が呼んだか三馬鹿騎士です」
    「そうか。三馬鹿……うん? すまないベディヴィエール、なんと?」
     パーシヴァルが驚くのも無理はない。
     トリスタンは空気を読めず振り回される事もあり、王の所業を受け入れられず「王は人の心がわからない」と言って去っていったが、誰よりも優しく人情に厚かった。
     ガウェインは真面目すぎて行動がおかしなところはあったが、それでも忠義に厚く堅物として知られていた。
     ランスロットは柔軟な考えを持ち、驚くほどの行動力でとんでもない事をさらっとしてのけたが、それでも騎士の中の騎士と慕われていた。
     それにだ。基本的に真面目なのだ三人とも。
     生前の彼等を知って、彼等の最後も聞いているだろうパーシヴァルからすれば、三馬鹿とまで呼ばれる過程がわからないに違いない。
     ベディヴィエールはもう一度ため息をつくと、声をはってはっきりと言ってのける。
    「はっちゃけています」
    「は、はっちゃけ」
    「えぇ。トリスタン卿だけでなく、三人とも」
    「そ、そうか……」
     ですので。
     と、ベディヴィエールはがっしりと、逃がさないとばかりにパーシヴァルの肩を掴んだ。
    「一緒に頑張りましょうね。本当に貴卿がきてくれて助かりました。本当に」
    「何を頑張るのだろうか?」
     迫力におされてだろうか? 冷や汗をかくパーシヴァルにベディヴィエールは微笑んだ。
    「はっちゃけ取り締まりです」



    「——と、脅しはしましたが、基本的に三人とも限度を超えるはっちゃけはしませんし、馬鹿をしても引き際は心得ていますので、安心してください」
    「それは朗報だ。つまりあの三人が羽を伸ばせるほどにいい場所という事だね。ココは」
     嬉しそうに述べるパーシヴァルに、ベディヴィエールは深く頷いた。
    「えぇ。……生前ではできなかった趣味を持つ者も多く、この前は読書が流行りましたね」
    「それはいい。華やかな話ばかりが語り継がれているが、蓋を開ければ、ゆっくりと本を読む余裕もなかったりしたからね」
     パーシヴァルは読書にはまるかよしれないなと思いつつ、図書館について説明する。
     興味を持ったパーシヴァルに、それでは行ってみようと図書館まで歩きだす。
     話に花が咲き、ついポロリと真面目なパーシヴァルに話してしまう。
    「あぁそういえば、新たに恋人を持つ者もいますよ。本気かはその場をなごます為か分かりませんが、ガウェイン卿もこんな台詞を、」
    「……浮気はよくない」
     むうっと眉に皺を寄せたパーシヴァルに、おっとと口を閉ざして苦笑する。
    「確かに人類史を取り戻す戦いの最中ですが、だからこそ愛や恋という尊いものが必要なのかもですよ?」
    「私は……」
     と何か言おうとするパーシヴァル。そこに図書館から出てきた人物が声をかけてきた。

    「おやベディヴィエール卿。今度また円卓の話を……ん? そちらは?」

     ウェーブがかかった黒髪に、太陽に愛された肌。青い瞳は彼が愛して愛された海を彷彿とし、女も男も目を引く美丈夫、バーソロミュー ・ロバーツ。
     彼はベディヴィエールの隣にいる騎士が見慣れぬサーヴァントだと気づいたのだろう。
     側まで歩いてくると、不躾にならない程度にパーシヴァルを見上げた。
     パーシヴァルは人当たりがよくコミニュケーション能力も高い。自分から名乗るだろうと思って口を閉ざしていたのだが、なぜかバーソロミューを凝視して答えない。
    「パーシヴァル卿?」
    「……え? あ、ベ、ベディヴィエール、こ、この方は?」
    「……」
     まさかとおもいつつ、頬を染めるパーシヴァルに確信を強める。
    「……紹介しましょうか?」
    「ぜ、是非!」
     そんなやりとりを見ていたバーソロミューが不思議そうな顔をしつつも、フッと笑う。
    「私から名乗るよ。バーソロミュー・ロバーツ。円卓の騎士様と仲良くする機会などないかもしれないが、」
    「よろしくお願いします! パーシヴァル・ド・ゲールです!!」
     バーソロミューの言葉を遮って艦内中に響きそうな声で自己紹介をするパーシヴァル。
     そればパーシヴァルとバーソロミューの出会いだった。


    ◇◇◇


    「惚れたもののろくに話せず、アプローチするもののアプローチになっておらず相手にされずというか気づかれず、幸運にも夏に共に護衛に選ばれ、この機会をのがしてなるものかと円卓総出と他サーヴァントの皆様のバックアップもあって仲良くなり、そんなこんなでようやく付き合えた恋人に嫌われたくないのは分かりますが、遠回しに聞くのではなく、多少強引にでも話を聞けばどうです?」
     今だにクッキーにもスコーンにも手をつけないパーシヴァルに言えば、彼は頭を抱えたまま反応する。
    「……助言、感謝する……」
     その声があまりにも苦悩に満ちていたものだから、ベディヴィエールは先は長そうだとこっそりため息をついた。
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