こいつ、一滴も飲んでないよな。
酔ってんの俺だよなあ。こいつ揮発した酒でも酔えんの!?
まあ、いっか、シャルが、いいんならありがたくいただくか、と、バルバロスは狭いソファで、器用に位置を反転させたのでした。
翌朝、執務室横の仮眠室から、出てきたシャスティルは開口一番にバルバロスに謝った。
「すまなかった、バルバロス。酩酊状態のあなたに聖剣で脅して関係を迫るなんて」
「ちょっと待て!言い方!!なんで俺襲われたことになってんの!?お前がいつも通りポンコツだっただけだろうが。」
「だからと言って許されることではない。私はどう詫びればいいのか。」
「詫びられることなんてねわ。昨日は、割と良かったし。」
「聖剣で脅されることがか!」
「いや、そっちじゃねぇし。」
「そっちじゃないならどっち!?」
「昨日のお前いつもより積極的で可愛かったし」
「え!」
「え!」
「ここ壁薄いから!ドアから聞こえるから、頼むから何もしゃべるな。ほら、仕事まだだったんじゃないのか、もうすぐレイチェルとりにくるんぞ!」
「あ!そうだな。大丈夫だ!ほら、あとは。このハンコを押せば完成だ!」
「おい待て、一度落ち着い」
シャスティルはハンコを朱肉に勢いよく押し付けた。
バルバロスの制止も虚しく、朱肉の液は、机、書類、
シャスティルの服に飛び散ったのだった。
「逆巻け円環、いやもう、お前のポンコツには恐れ入るわ。」
「ポンコツいうな」
その薄いドアの向こうで一人の修道女は、血の海で眠っていた。
のちに、この扉から漏れ聞こえた話が教会を駆け巡り、ザガンの耳に入った時、教会とザガンの見解は一つであった。
「家でやれ。」