幸せを感じられる日 誕生日なんてものは知らなかった。
自分は気づいたら裏路地にいて、それ以前の記憶などない。だから生まれたことを祝福するなんて縁がないものだった。
だからオリアスにネフィの誕生日とそれを祝う習慣というものを聞いた時は本当に衝撃的だったがそれと同時に納得もした。
――この世にネフィが生まれたことは己にとって何より祝福すべきことだからだ。
そんな愛しい嫁を祝おうと奮闘していたら、まさか逆に自分を祝ってもらえたのだから本当に驚いた。
初めての――少なくとも自身の記憶では――誕生日祝い。それは幸せを感じられるものだった。
まあ、そんな宴の席でもゴメリ達は通常というかいつも以上にはっちゃけて〝愛で力定例会〟なるものを開催しているけれど。
聞き耳を立てていた訳では無いけど、聞こえてくる内容は悪友の事やラーファエルの事など多岐にわたる。
更に今着ている服を購入した時の話まで出されたり、人前で膝に乗せることを指摘されたりして胸を押さえて項垂れたりもしたが。
ネフテロス達相手に良い仕事をしてたりするし、これはこれでいい気もしてくる。
……話のネタにされたべべモスや着せ替えさせられたリリスなどは気の毒かもしれないが。
もちろんネフィに祝ってもらえた事は何よりも幸福だと思うけど、他にもアルシエラやフォル、他の配下たちも祝われた事もやはり幸せだと思う。
自分は千年生きる。千年もすればここにいる顔ぶれは殆ど変わるだろう。
けど、今こうして同じ時代に生きてめぐり逢い、そして祝ってもらえたことはきっと忘れない。
そして千年経とうともきっとネフィは変わらず祝ってくれるのだろう。
さて、これだけのことをしてもらったのだ。ネフィ達の誕生日は盛大に祝わなくてはな。
少なくともこの気持ちを返せるぐらいには思いを込めて。