Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    malsumi_1416

    @malsumi_1416

    習作テデ🧸ちゃん置き場

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    malsumi_1416

    ☆quiet follow

    数時間遅刻の「キスの日」の短編
    18歳 付き合い始めあたり
    休憩時間がどれだけ延長されたかは、彼らのみぞ知る

    #テラディオ

    小休止チュ、チュ、チュ。
    麗らかな午後の日差しが差し込む部屋に、何とも可愛らしい音が響いている。
    積み上がっている書類仕事の合間に一息いれようと、侍女に頼んで茶器を用意している間にこの人は。

    「…ディオン様、あの…」
    「おお、テランス」
    寝台に腰掛けておかえり、と宣う彼の手には愛らしい熊のぬいぐるみ。
    「何をしておいでで?」
    可愛らしいのは熊よりも小首を傾げた彼自身だが。
    「んー、…キスの練習?」
    もこもこの鼻面に向けて、ちう、と小さな音を立てて吸い付いていたディオンは悪びれる様子もなく舌を出した。
    ん?といたずらっ子の顔で微笑む彼の思惑は如何ばかりか。
    「なんだテランス、羨ましいのか?」
    「いえ、その」
    いや正直羨ましいが。
    はるか昔、ディオンの乳母として勤めていた母が小さかった自分たちに揃えて拵えてくれた2つの熊のぬいぐるみは、時を経てディオンの執務室に設えられた仮眠用の寝台に住み処を与えられた。
    それらのうち、青いボタンを瞳に据えた熊を相手にディオンはさっきからせっせとラブシーンを演じている。
    「折角二人きりだというのに、誰かさんが放っておくからだ」
    ぎゅうとぬいぐるみを抱き締めて、上目遣いのディオンが寝台の上で口を尖らせている。
    ぬいぐるみ相手に浮気をされても微笑ましい以外の何物でもないが、当の本人は案外大真面目かもしれない。
    「おまけに…」
    そなたときたら、寝る前のキス以外ちっとも手を出してこないではないか。
    「折角、恋人同士になったのにな?」
    「ぐ…」
    なあ、テリ。
    物言わぬテリに鼻先を埋めて寂しそうに溢される言葉達が、小さな棘を纏って胸に突き刺さる。
    じとりと恨めしそうに見つめてくる視線が痛い。
    けれど言えるわけがない。
    その唇に触れる度、無垢なそこを割り開いて思う様貪ってしまいたいと考えているだなんて。
    就寝前の挨拶でさえ、軽く触れ合わせたそばからもっともっとと欲は膨らみ愛しさとないまぜになって、これ以上は病み上がりの御体に毒だと断腸の思いで苦労して身体を離しているのに。
    想いが通じたことだけでも僥倖だと。
    「職務中ですよ」
    「休憩中なら【皇子】も休みだ。もちろんお前も」
    ああ言えばこう言う。
    ちっとも折れる気の無い【私の皇子様】に手招きされて、引いてきたワゴンを角に置きそのまま彼の隣に座り込んだ。
    「ディオン…」
    「…お前は、今のままで満足か?」
    こちらの肩に小麦色の頭をもたせかけながら、未だぬいぐるみの後頭部に鼻を埋めた恋人が少し不安そうに呟いた。
    彼の首筋から、昼過ぎにつけ直した香水が爽やかに薫る。
    髪から覗いた耳の端が赤く色づくのを認めて、不覚にもドキリと心臓が跳ねた。

    「あの日、沢山の言葉と共に交わした優しい口付け……私は嬉しかったのに」
    そなたに欲しがって貰えて、とても幸せだったんだ。
    ぽそぽそと小さな声で溢される、数週間前のあの日の記憶。
    思い出す度に未だ涙があふれそうになる、あの日の。
    「その節は………御体はもう…?」
    「傷はとうに癒えた。なぁテランス」
    見上げてくる瞳が、触れてもいないのにもうとろとろに甘い。
    見つめ返すこちらの顔までのぼせてしまうような、陶然とした表情に眩暈がする。
    「私は、もっとお前が欲しい」
    もっとよこせ、と全身で誘うディオンに気圧されて何も言えないでいると、ふいっと顔をそらしてまたぬいぐるみと戯れだした。
    「まさか、お前はこれからもお行儀のいい【おやすみのキス】しか寄越さないつもりか?」
    ぷうとむくれた頬が赤い。
    ああ、そんなにも焦れていらっしゃるのか。
    欲しいのは私ばかりかと思っていたが、彼も正しく、同じ熱量を閉じ込めた恋する男の目をしている。
    「それは…ごめん、ディオン」
    これはお茶なんて入れてる場合ではない。
    例え短い時間でも、彼が恋人として今までより深い触れあいを望んでくれている。
    それに応えないなんて男じゃない。
    ころりと後ろに倒れ込んだディオンの抱いている熊を取り上げて脇によけ、寝台に軽く乗り上げ彼の上に覆いかぶさる。
    「ひとまず、今は茶よりも…甘いものがいい」
    ん、と突き出された艶やかなそれを拒む理由は、もはやどこにもなかった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💒💒❤👏👏💖☺💒💞💞❤💖💞💞💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖☺☺💒💒💘💘❤💖💖☺❤💖💖💖👏💘☺☺💒💘💞💖💞💖❤👏💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    malsumi_1416

    DONE【とびっきりをあなたに】
    公現祭とガレット・デ・ロワ、それにかこつけていちゃつくテデちゃんのお話

    ヴァリスゼアにはエピファニーはないと思うけど、例えばこんな祝祭があってもいいじゃないかと。
    二人とも、相手に幸せになって欲しいのはきっと同じだったと信じて。

    1…原作軸のどこか、21〜23歳くらいの二人 遷都前
    2…転生記憶有り現パロ、社会人で週末お泊りする感じ

    構成成分
    宗教・風俗の捏造
    とびっきりをあなたに1 <原作軸>
     オリフレムの上空、羽ばたく風圧が人々や建屋に干してある洗濯物に障らないよう注意しつつ、海からの風を捉えてゆっくりと低空を飛行する。頬を切りつけるはずの寒気の刃も、顕現してエーテル伝いに鱗を纏ってしまえば左程気になるほどではない。冬の最中だというのに眼下に広がる町並みには色とりどりの飾り紐が渡され、寒さに負けじと咲き誇る花を頭に飾った子供たちがこちらを見上げて指を差していた。
    「みて、バハムート!」
    「すっげぇ……かっこいい~」
    「ディオンさまー!」
    『…ありがとう。今日の良き日に幸いあれ』
    嬉しそうに追いかけてくる子供たちの上を二、三度旋回して寿ぐと、途端にきゃあ、と喜色を含んだ悲鳴がそこかしこから沸き上がりこちらの心まで軽くなっていく。
    13329

    malsumi_1416

    DONE「冬に備える」
    ED後生還軸
    二人で生きると決めたテデちゃんのささやかな日常と「死者の日」について。
    過去作「味を知る話」及び前作「元使用人…」を一部踏襲しています。

    構成成分:
    石化由来の身体不自由
    風俗・習慣の捏造
    テが少々不安定

    明るい話ではないかも
    上記をご了承の上、大丈夫そうな方はどうぞ
    冬に備える ガツッ、——トン、ト、ト、ト。
    家の裏手に残されている腰かけ代わりの切り株に座り込み、手鉈を振りかぶりながら大きな丸太をひたすらかち割っていく。
    半分、もう半分…これはまだ太いからもう一回。
     もう全身至る所が石化していたため節々に少しばかり固さが残るが、去年の今頃と比較すると幾分か動きやすくなってきた身体をリハビリがてらこうして動かして、最近では家の運営にかかわる事なら少しづつ携われるようになってきた。
    けれど元々細かな作業が得意かと言われればそうでもないので、街道を外れた森に分け入り獣道を進んだ末にたどり着くこの家で出来る仕事……もとい暇潰しと言えば、もっぱら掃除と薪割りと、テランスが町から仕入れてきたり隠れ家の誰がしかがストラスの足にくくりつける手紙に紛れて寄越してくれる、野菜や果樹の種を植えている小さな畑の世話ばかり。
    4656

    malsumi_1416

    DONE【元使用人の独白、あるいはある男の告解】
    「テデの日」に寄せて

    ある使用人の目線から見た、幼き日のテランス+ディオンの思い出とそれを踏まえた「彼」の告白

    テデちゃんがお付き合い始めたあたり

    構成成分:
    モブの回想
    弊テデの幼少期の幻覚
    テランスの姓の捏造
    テ君の出番は幼少期のみ

    モブの語りから入ります
    キャプションをご了承の上、お好きな方はどうぞ
    元使用人の独白、あるいはある男の告解

     少し、昔話を致しましょうか。
    懐かしいカモミーユのお茶は如何?
    こちらのお菓子は?
    ええ、あなた様とお会いできるからと今朝方から。焼きたてですのよ。
    ああでも、これが好きだったのは小さなあの子の方でしたわね。
    さて、どこからお聴きになりたいかしら。
    ……あら、そう。
    最初から、と。
    では、改めてわたくしとあの方の馴れ初めでもお話ししましょうか。
    懐かしいこと……あの時の事は今でも憶えてますわ。


     最初の報せが参りましたのは、凍てつく中に春の風が吹き始める頃。
    わたくし達一家が所領の倹しい我が家で、未だ残る寒さに暖炉を囲んでいた時のことですの。
    風ではなく、人の手が扉を打ち付ける音を聞いた従僕が表を確かめに行って、暫くして血相を変えて走り込んできたものですから。
    16006

    related works

    mizutarou22

    DONEテラディオの二人がコスタ・デル・ソルへバカンスに行く話です。謎時空な現パロです。FF7リバースをプレイしていたら二人にも行ってほしくて…。リバースのネタバレは無いと思いますが一応注意してください。
    あなたが一番綺麗 遠くからさぁ……と音が聞こえる。その音は私を落ち着かせ、身体が勝手に胎児のように丸くなろうとする。しかし足を丸めようとしたところで、ふと温かい何かに当たった。そこで私は意識が少しずつ覚醒していく。目をふっと開け、視界に映ったのは……。

    「おはようディオン……目、覚めた?」

     目を開いた先にいたのは私の最愛の夫、テランスだった。テランスが微笑みながら私の髪をそっと撫でる。私はその撫でられる気持ちよさにうっとりとして、テランスがしてくれている腕枕に唇を近づけ、キスをする。

    「ああ……波の音で目が覚めてしまったようだ」

    「綺麗な音だね、ディオン」

    「ああ……」

     そう、私たちは今コスタ・デル・ソルというリゾート地へ来ている。温かい……というよりカッと太陽が照り付ける暑い気温で、ここにいる人々は薄着や水着で街中を歩いたりしていた。街も活気があり、皆楽しそうに催し物に参加したり、また様々なお店が軒を連ねており、そのなかでショッピングを楽しむ者もいた。
    2983

    recommended works