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    malsumi_1416

    @malsumi_1416

    習作テデ🧸ちゃん置き場

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    malsumi_1416

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    『あなたこそわたしの』
    公式よりテランス初紹介を記念して。

    現パロ
    12/27がテランスの誕生日という世界線
    二人の出会いと、思い出話

    #テラディオ

    あなたこそわたしの「うぇ……にいちゃんん…」
     クリスマスも過ぎ人もまばらな玩具売り場で、寄る辺ないかすかな泣き声が聞こえた気がしてディオンは足を止めた。
    歳末を告げる壮大な喜びの賛歌が流れる店内で、おまけに子供たちの夢が詰まった楽しいばかりの箇所であるのに、不釣り合いなその声は棚の奥を行ったり来たり、うーだとかあーだとか途方に暮れたような響きを帯びてそこにあって、まだたった七つのディオンだろうと子供ながらに持ち合わせた良心に訴えかけてくる。
    かき入れ時が終わった平日の昼間、店員もまばらな最中大声で助けを求めるでもなく、押し殺したまだか細い子供の湿り気を帯びたつぶやきがなんとなく気になって、自身も同じく子供であるのを脇に置いてディオンが声の聞こえた方向へ商品棚を分け入ると。
    「…どうした?えーっと……ぼく?」
     そこには身の丈に対して少々大きめな服に着られた細い子供が、瞳を潤ませて佇んでいた。短い黒髪に、灰緑の大きな瞳。何度か擦ってしまったのか赤くなった鼻の頭に、サクランボのようなくちびる。頬にはそばかすが小さく散っていて、ぽかんと開いた口は突然知らない人間から浴びせられた質問に答えることも出来ずにぴしりと硬直している。
    頭半分くらい小さな身の丈からして、ディオンよりも三つかそこら幼いだろうか。一人でいるのは同じだが、そもそも近所だからと気ままに出歩いているディオンに対してこの子供は誰かを探してうろついているようだった。
    「迷ったのか?」
    「————に、にぃちゃんがぁ……っ」
    「…あ、ええと」
    少し膝を折って目線を合わせて問いかけるが、緊張の糸が切れたのかそれとも改めて言葉にされたことで実感がわいたのか、目の前の子供の眉根がくしゃりと寄せられ瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
    「はぐれたのかな?」
    自分より小さな子供の扱いがよくわからないディオンはそれに一瞬気圧されたが、それでも目の前で困っている子供を見捨てる選択肢ははなから持ち合わせていなかったため、しゃがみ込んで目線をさらに下げながらあどけないその子に笑ってみせた。
    困っている人は助けてあげましょうと、学校の先生も家の大人たちもそう言っていたことだしと、こちらも子供らしい無鉄砲な正義感に駆られての行動ではあったのだが、それでもなんとか目の前でしゃくりあげる男の子には効いたようで、鼻をすすりながら小さく「うん」と肯定される。
    「お、おれね、にいちゃんがトイレいってくるって、それで、まってたんだけど」
    「うん」
    「つまんなくなって、さきにいっちゃえって……おれ、たんじょうびだし、プレゼント…もういっこ…」
     うんうんと相槌を打ちながら、抽象的で途切れ途切れに話す子供の話を根気よく聞きだし、繋ぎ合わせていく。
    「兄ちゃんがトイレに行ってる間に歩き回って、道がわからなくなったんだな?」
    「うん…」
    「それで、君は今日が誕生日で、クリスマスとは別個におもちゃを買いに来たと」
    「そうだよ」
    ディオンが突き詰めるとこうで、この子供が冒険心を発揮した結果とてもシンプルに迷子になったということだった。
    「んんと———どうする?お店の人呼ぼうか?」
     一人でうろつくディオンとしてはあまり厄介にはなりたくないのだが、やはり迷子となればアナウンスで探してもらうのが一番早い。無意識にくちびるを指で撫でつつ、何より家族の方が先に届けを出しているかもしれないから確認してもらおうとディオンが立ち上がったところ、「あの!」と遠慮を知らない存外強い力で肩を掴まれてつんのめった。
    「あの、おにいさん!——い、いっしょにさがしてっ」
    「う、うん…?」
    おみせのひとにつれてかれたら、おれ、おこられちゃう…
     振り返るとまるで捨てられた子犬のような必死な顔で引き留める子供に、頼られるのは案外悪いことではないと自尊心を大いに刺激されたディオンは思わずうなずいていた。味方ができたことがよほど嬉しかったのか、ふっくりした子供の頬が喜びに持ち上がり、溺れていた瞳に力が漲る。
    「じゃあ、ここに来るまでに何か憶えてることはない?」
     そうとなれば善は急げだった。ひとまず子供の手を握り、棚から離れて通路へ戻る。おおよそエリアごとに分かれた大通りまで戻ってそこからの記憶を辿れば戻れるのではないかとディオンは考えたのだが、そこはやはり迷子の子供、吹き抜けのエレベーターホールまで来たもののそうは問屋が卸さなかった。
    「……おれ……わかんないぃ」
    「ええ…」
     勇んで来た手前、ホールの外周をぐるりとまわって二人で周囲を見渡してみたものの、繋いだ手をぎゅうと握り返して迷子は下を向いてしまった。すん、と小さく鼻を啜る音がBGMに交じる。再度くちびるに手を当てて擦りながら、どうしたものかと途方に暮れかけたところでディオンはポケットの中の玩具を思い出した。
     特に興味があるわけでもなかったが、流行り物の中から適当に小銭が尽きるまで回したカプセルトイを四つほど上着の両側に無造作に突っ込んでいた中の、とりあえず手に当たった一つを掴みだして子供の目の前で振ってみる。
    「うぇ?」
    「よかったらあげるよ。だから泣かないで」
    「あり、がと」
    湿り気を帯びたもみじの手のひらがカプセルを掴んで、えへへ、と嬉しそうに矯めつ眇めつ眺めまわすのを横目にディオンはそっと胸をなでおろした。人助けって大変だなと思いながら脳内に入っている見取り図では心もとないし、まずは詳細な場内地図でも探すべきかと見まわしてみる。
    「あ、これにいちゃんのしてるゲームのひとだ。きしだんちょー」
     当の迷子は暢気なもので、与えられた玩具に夢中になっている間にさてどうしようかと思っていると、ふいにまた袖を引かれてディオンは思考を中断させられた。
    「どうした?何か思い出したか?」
    「んーん。あのね、このひとおにいさんににてるなって」
    「…そうかな」
    うん、と満面の笑みで頷く子供の手には、カプセルから取り出した金髪のキャラクターのキーホルダーが収まっている。
    「すっごくつよくて、やさしくて、かっこいいんだよ」
    おれだいすき、と宣う子供の頭を撫でてやりながら、嬉しそうな口元から覗く歯が真ん中一つ欠けてるのを見て小さいくせに意外だなとぼんやり思った。
     身長から年齢を小さく見積もったが、案外一つくらいしか年が離れてないかもしれないぞとディオンは頭の中で何とはなしに子供の情報を修正するが、それにしたって言動が幼すぎないかと考えたところで、どうせこの時限りだからと感情にブレーキがかかる。深入りはしない。離れるときにつらくなることが、今までの経験上ディオンには身に染みて分かっていた。
    「———あ!これ!」
    「今度は何だ?」
     いきなり大きな声を上げた子供に向き直り、その目が見開かれてきらきらと輝いている様に圧倒される。幼さゆえの遠慮のなさでにじり寄る子供に一瞬たじろぎながら、しかし求めていた言葉が子供の口から溢されたのは今までで一番有益な情報であった。
    「おれ、これのがちゃがちゃみた!といれのまえにあった!」
    「......... よし、行ってみよう」
     ディオンの脳裏に施設の大まかな地図が展開され、今日歩いた範囲が反芻されていく。ここに来る前に通ったカプセルトイエリアは二つ、そのうち、手洗い場の近くに展開しているのは。
    「駐車場から入ってすぐのトイレだな」
    確かにそこには十数台の機械が置いてあったはずで、ディオンは再度子供と手を繋ぎ、数十分前に来た道を引き返していく。相変わらず店内には喜びをテーマとしたあの曲が流れていて、それに合わせて時折へたくそなスキップで跳ね上がりながら腕を振り回す子供に、何だか楽しくなってきてディオンもつられて足取りが軽くなった。
     光を目に宿した子供からおにいさんすごいね、なんでもわかるんだねと他愛もない話が歩くうちに二三言飛んでくるものだから、そうでもないさ、家族に会えたら謝らないとと先輩ぶって応えを返す。はやくはやくと、道もわからないくせ速足で先へ先へ行こうとする無鉄砲な彼の軌道を右に左に時々修正しながら、施設の端から端、館を一つまたいで二人が五分近く歩いた、その先に。
    「にいちゃん!とうさんも!」
     不意にディオンが握っていた手が振り払われ、子供が全力で駆けていく。その先には子供とよく似た顔をした背の高い男が二人立っていて、年かさの方に何事か言葉をかけられつつ抱き上げられるのを見届けてからディオンはさっさと踵を返した。
    「もう大丈夫だな」
     一人で小さく呟く先に、背後からはごめんなさいと謝る悲鳴に近い子供の声と、心配かけてこの、と安堵を含んだ怒りの声が聞こえてくるが、ディオンは振り向かない。愛情深い家族にちゃんと見つけてもらったのだから、正義の味方は静かに去るべきなのだ。ディオン自身のことを迎えに来てくれる家族がいないこともあって、これ以上の長居は還って厄介になると解っているから少しの満足感と共に人混みの方へ歩いていく。
    「あれ、……おにいさん?」
     ひとしきり家族にもみくちゃにされた子供だけが、ディオンの不在に気付いてまた別の寂しさを抱えたことを知らないままに。



    「——っていう丁度十六年前のその人が、俺の初恋です」
    「ちょっと待て、…え、どこから突っ込めば」
     二つ年下の恋人の口から語られる身に覚えが有りすぎる記憶に、ディオンは顔を手で覆い悶絶した。
    「あれ、あの時の子……お前が?…テランス」
     あのちいさな男の子が?椅子代わりのベッドに並んで腰かける中、目の前で甘えてのしかかってくる巨体につぶされることなく肩で張り合いながらディオンはくらくらと回りだした頭をふった。
     職場近くのバーで見かけたあまりにも好みのバイトに酒の勢いでアプローチして、つきあいはじめて数カ月。まだ大学生だという、ガタイのわりに甘ったれで可愛らしい顔つき、やわらかな話し方と高めの声が魅力の彼からクリスマスはバイトがあるけれど27日に泊まりにこないかと打診があって、ケーキは兎も角遅れたクリスマスプレゼントを用意して、ついでにそろそろそういうことに持ち込むのもやぶさかでないと色々自分の身体ごと準備してやってきたディオンではあったが。
    話のきっかけになればと持ち込んだ少しの酒が潤滑剤になって、いつの間にか互いの恋愛遍歴に話題が飛んだまではよかったのだ。
    「あ、ひどいな。気付いてなかったんですか」
     おれはぜったいあの時助けてくれた人だって、途中から確信してたのに。
    「逆に聞くが、なぜ私だと思ったんだ」
    「あなたの癖ですよ。考え事する時にくちびるを触るでしょう」
     ほら、今だってと指摘されて無意識のうちに撫でていた下唇から指を外す。あの短時間によく憶えたなとディオンが関心していると、「俺兄弟多いし、だれかの真似っこ遊びとかよくしてたから」と応えがあった。
     語られた内容をディオンが頭の中で整理すると、ゲームから飛び出してきた騎士団長のような、テランス少年曰くの「優しくて美しい年上の男の子」に手を引かれて、子供だけでは広すぎる商業施設を冒険した記憶が幼心に忘れたくない記憶として長年輝いていた事実が、ただただ横たわっていた。多少の美化はされている気がしないでもないが、事実あの出来事は幼いディオンの中に埋もれた悪くはない記憶として、こうして掘り出された今気恥ずかしさはあれど後悔は見当たらない。
     ディオンがともすれば半端に緩みそうになる口元をむず痒さに耐えて引き結んでいると、アルコールで暖まった目元を潤ませて、テランスが肩を寄せてきた。その存外長いまつ毛のつくる影が瞳に降りて、ああ確かにこの色の瞳は覚えがあるようなと覗き込んでいるとそこににじむ色香に気付いてしまって、ディオンの喉がごくりと鳴る。
    「その時もらったキーホルダー、まだとってあるんですよ。俺のお守りで、宝物です」
     へら、と笑いの形に崩した口元からちらちら覗く舌に目を引かれていると、頬にちゅ、と音を立てて降りてくるものだからリードする気でここまでやってきたディオンとしてはたまったものではない。
    「そんなの、……それに、誕生日だって…言ってくれたらちゃんと」
    「だってそんな、がっつくみたいなダサい真似———できるわけないじゃないですか」
     あなたに釣り合うようなおれでいたくて。格好つけたかったんですと苦笑いされて、不覚にもディオンの心臓がはねた。

     多忙な両親から好きなものを買うようにと握らされたクリスマスプレゼント代わりの小遣い片手に、近所のショッピングモールの玩具売り場で幾つか流行りのカプセルトイを回し、何を選ぶでもなく時間を潰していたあの時に行きあった泣き虫の男の子。
    ひとりぼっちはさみしいよなと、今よりも短く刈り上げた髪の毛と一本かけた前歯が印象的な迷子に声をかけ、泣き止むならと手持ちの玩具を手渡して。不安そうな子供をそのままにしておくのも忍びなく、幼い正義感から家族を探すために手を繋いだ、たった十分かそこらの交流しかなかったのに。

    「名前を聞いてなかったこと、すごく後悔してたんです。お礼だって言いたかったし、かっこいいあなたともっとお話ししてたかった」
    「…安心したんだ、手を振りほどいていく程、大好きな家族と会えたんだから」
     もう、案内は必要ないだろうとその時のディオンなりの美学でその場を後にした訳だが、当時のテランスにとっては予想外の別れだったらしい。それが何の因果かこうして引き合い、今度はディオンの方が離れがたくなってしまっている。
    「すまない、……今の今まで気付かなくて」
    「いいんです。……ずっと、どこかで会えたらお礼をしようって思ってたんですが…生憎あの後引っ越してしまって」
    そもそもディオンのようにうんと近所に住んでいたわけでもなく、転居してからは子供の足では到底たどり着けないほど離れてしまった。大学に入って一人暮らしを始める時に戻ってきたものの、その頃にはさすがのテランスも諦めかけていたところだったのに。
    「でも今、こうしていられる。もうそれだけで」
     額同士が触れ合い、近すぎる距離で覗き込まれたディオンの目に映るのは、灰に混ざる澄んだ緑の美しい瞳だけだった。
    「あなたは、またおれを見つけてくれた…それがどんなに嬉しかったか」
    緑が揺らぎ、澄んだ水面があふれ、一筋星が流れ落ちる。
    「ありがとう…ディオンさん」
    「…ディオンでいい」
     片側だけ湿ってしまったテランスの頬を包んで、目を閉じたのを確認してディオンの方から唇をすりつける。うっすらと開かれたくちびるの中を同じ粘膜でゆるく擦って、腕が解けて背を抱きなおし、もっと近くにと幾度もくりかえす。
    「……もっと、教えてくれ」
     おまえのこと。テランスの首に腕を回したまま、後ろ向きに二人で倒れ込む。下敷きになったディオンがシーツに髪を散らし、全部お前にやるからと精一杯余裕がある風に装って、瞠目するテランスの肩を引き寄せて耳たぶに口を寄せた。
    「あなたを、くれるの?」
    「———誕生日、なんだろう?」
    クリスマスとは別にプレゼントが必要だろうとあの頃の迷子が言っていた台詞をディオンがそのまま返すと、痛い程に抱きすくめられて震える吐息で名を呼ばれ、首筋に獰猛な口づけが降ってきた。

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    Replies from the creator

    malsumi_1416

    DONE【とびっきりをあなたに】
    公現祭とガレット・デ・ロワ、それにかこつけていちゃつくテデちゃんのお話

    ヴァリスゼアにはエピファニーはないと思うけど、例えばこんな祝祭があってもいいじゃないかと。
    二人とも、相手に幸せになって欲しいのはきっと同じだったと信じて。

    1…原作軸のどこか、21〜23歳くらいの二人 遷都前
    2…転生記憶有り現パロ、社会人で週末お泊りする感じ

    構成成分
    宗教・風俗の捏造
    とびっきりをあなたに1 <原作軸>
     オリフレムの上空、羽ばたく風圧が人々や建屋に干してある洗濯物に障らないよう注意しつつ、海からの風を捉えてゆっくりと低空を飛行する。頬を切りつけるはずの寒気の刃も、顕現してエーテル伝いに鱗を纏ってしまえば左程気になるほどではない。冬の最中だというのに眼下に広がる町並みには色とりどりの飾り紐が渡され、寒さに負けじと咲き誇る花を頭に飾った子供たちがこちらを見上げて指を差していた。
    「みて、バハムート!」
    「すっげぇ……かっこいい~」
    「ディオンさまー!」
    『…ありがとう。今日の良き日に幸いあれ』
    嬉しそうに追いかけてくる子供たちの上を二、三度旋回して寿ぐと、途端にきゃあ、と喜色を含んだ悲鳴がそこかしこから沸き上がりこちらの心まで軽くなっていく。
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    malsumi_1416

    DONE「冬に備える」
    ED後生還軸
    二人で生きると決めたテデちゃんのささやかな日常と「死者の日」について。
    過去作「味を知る話」及び前作「元使用人…」を一部踏襲しています。

    構成成分:
    石化由来の身体不自由
    風俗・習慣の捏造
    テが少々不安定

    明るい話ではないかも
    上記をご了承の上、大丈夫そうな方はどうぞ
    冬に備える ガツッ、——トン、ト、ト、ト。
    家の裏手に残されている腰かけ代わりの切り株に座り込み、手鉈を振りかぶりながら大きな丸太をひたすらかち割っていく。
    半分、もう半分…これはまだ太いからもう一回。
     もう全身至る所が石化していたため節々に少しばかり固さが残るが、去年の今頃と比較すると幾分か動きやすくなってきた身体をリハビリがてらこうして動かして、最近では家の運営にかかわる事なら少しづつ携われるようになってきた。
    けれど元々細かな作業が得意かと言われればそうでもないので、街道を外れた森に分け入り獣道を進んだ末にたどり着くこの家で出来る仕事……もとい暇潰しと言えば、もっぱら掃除と薪割りと、テランスが町から仕入れてきたり隠れ家の誰がしかがストラスの足にくくりつける手紙に紛れて寄越してくれる、野菜や果樹の種を植えている小さな畑の世話ばかり。
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    malsumi_1416

    DONE【元使用人の独白、あるいはある男の告解】
    「テデの日」に寄せて

    ある使用人の目線から見た、幼き日のテランス+ディオンの思い出とそれを踏まえた「彼」の告白

    テデちゃんがお付き合い始めたあたり

    構成成分:
    モブの回想
    弊テデの幼少期の幻覚
    テランスの姓の捏造
    テ君の出番は幼少期のみ

    モブの語りから入ります
    キャプションをご了承の上、お好きな方はどうぞ
    元使用人の独白、あるいはある男の告解

     少し、昔話を致しましょうか。
    懐かしいカモミーユのお茶は如何?
    こちらのお菓子は?
    ええ、あなた様とお会いできるからと今朝方から。焼きたてですのよ。
    ああでも、これが好きだったのは小さなあの子の方でしたわね。
    さて、どこからお聴きになりたいかしら。
    ……あら、そう。
    最初から、と。
    では、改めてわたくしとあの方の馴れ初めでもお話ししましょうか。
    懐かしいこと……あの時の事は今でも憶えてますわ。


     最初の報せが参りましたのは、凍てつく中に春の風が吹き始める頃。
    わたくし達一家が所領の倹しい我が家で、未だ残る寒さに暖炉を囲んでいた時のことですの。
    風ではなく、人の手が扉を打ち付ける音を聞いた従僕が表を確かめに行って、暫くして血相を変えて走り込んできたものですから。
    16006

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    mizutarou22

    DONEテラディオの二人がコスタ・デル・ソルへバカンスに行く話です。謎時空な現パロです。FF7リバースをプレイしていたら二人にも行ってほしくて…。リバースのネタバレは無いと思いますが一応注意してください。
    あなたが一番綺麗 遠くからさぁ……と音が聞こえる。その音は私を落ち着かせ、身体が勝手に胎児のように丸くなろうとする。しかし足を丸めようとしたところで、ふと温かい何かに当たった。そこで私は意識が少しずつ覚醒していく。目をふっと開け、視界に映ったのは……。

    「おはようディオン……目、覚めた?」

     目を開いた先にいたのは私の最愛の夫、テランスだった。テランスが微笑みながら私の髪をそっと撫でる。私はその撫でられる気持ちよさにうっとりとして、テランスがしてくれている腕枕に唇を近づけ、キスをする。

    「ああ……波の音で目が覚めてしまったようだ」

    「綺麗な音だね、ディオン」

    「ああ……」

     そう、私たちは今コスタ・デル・ソルというリゾート地へ来ている。温かい……というよりカッと太陽が照り付ける暑い気温で、ここにいる人々は薄着や水着で街中を歩いたりしていた。街も活気があり、皆楽しそうに催し物に参加したり、また様々なお店が軒を連ねており、そのなかでショッピングを楽しむ者もいた。
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