モーニングコーヒー「敦君のいれた珈琲が飲みたい」
朝、目覚めて開口一番に太宰がそう云う。先に服を身につけていた敦は、良いですよ、と云いおいて台所で湯を沸かし始めた。
しばらくしてから二人分のマグカップを持った敦が戻ってきて、ひとつを太宰に渡す。
「熱いから気をつけてくださいね」
太宰は、琥珀色の水面を何度か静かに吹いて冷ましていたが、やがて一口すすった。ほう、と安堵にも似たため息が漏れる。
「美味しい」
「インスタントだから誰がいれても同じ味だと思いますけど」
それに自分は珈琲をいれるのがそんなに上手くない、と敦はこぼす。布団に入ったままの太宰に寄り添うようにして座ると、敦も珈琲を一口飲んだ。
「……やっぱり。ついつい粉をケチって薄めになっちゃうんです」
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