前「なぜ、そうも私をお厭いになる」
忍術学園の天井からぬっと顔を付き出したタソガレドキ忍軍組頭の雑渡昆奈門が、一年は組の実技担当山田伝蔵にそう言った。
なぜ、と聞かれても明白であろう。逆さまの昆奈門の顔に気圧された伝蔵が一歩後退ってため息をついた。昆奈門が伝蔵に手合わせを願いに来るのはこれが初めてではない。半助が無事戻ってきてから、暇を見つけてはこうやって忍術学園に忍んでくるのである。今まですべて断ってきたが、その理由は学園外の勢力に自分の能力をさらす理由も忍の指南をつけてやる義務もなにもないからである。
「私が、ご子息二人のお命を狙ったからでしょうか」
悲しそうな顔をつくって、昆奈門が尋ねる。昆奈門は、しかし、と言葉を続けて伝蔵の前に音もなく天井から降り立つと、
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