言葉を覚える最短の方法 忙しない喧騒の中、死者の日の祭典を前にした街は色に溢れていた。特にどこもかしこにも蒔かれたマリーゴールドのオレンジとその噎せ返るような香りが鼻腔を犯す。
水替わりに買ったコーラを傾け、タコスの屋台を素通りしていく。ぬるい炭酸と甘ったるい後味。思わず南方は眉を寄せるも水不足のこの土地で、簡単に手に入る飲料がこれかビールしかないのだから仕方ない。
表向きは長期休暇を利用した観光のための海外旅行。しかし、実際は麻薬カルテルの調査ための渡墨。これが今回、南方にお屋形様から命じられた内容だった。
事前に受けた指示を元に、情報屋との待ち合わせ場所へと急ぐ。高地とはいえ、赤道に近いため日中の暑さは東京のそれと変わらない気温に汗が流れた。
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