百合咲く旅路桜舞う春の季節に、旅に出ようと考えた。
人は、誰しもが「仮面」を被って生きている。
みんなが褒めて、憧れると言って、頼って、好きになって、告白していく私は、本当の私とは全く程遠い人間だ。
狡猾で、すぐに感情をむき出しにする。
そういった人格が私の中には確実にいる。
いつしか私は、人に囲まれれば囲まれる程、孤独感を感じるようになっていた。
そんな、本来の自分と周りの望んでいる自分とのギャップに悩まされている私は、世間の人々が、やれ新学期だ就職だで自分のことに手一杯になるこの時期を狙って、決して誰にも注目されないように、本来の自分を晒け出しながら、ひとり旅を満喫しようと決めたのだ。
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当日、いつもより早めに起床した私は、軽い朝食と身支度を済ませ最寄りの駅へと向かう。
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