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    69asuna18

    ドカメン:宗雨
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    69asuna18

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    ドカメン:宗雲×雨竜
    天空仰ぎてのサポエピ読んで書きました…書き始めるのも書くスピードも遅すぎて秋過ぎてしまいましたけど年内に書けてよかった…。

    Give&Takeカランカランとドアのベルが鳴り、カフェに新たな客が訪れた事を告げる。その姿に、エージェントは「あ!」と声を上げた。
    VIPルームは空いている。それを告げようとするよりと早く、雨竜はカウンターの方へするりと寄ってきて、静かに其処へ座った。

    「VIPルーム空いてるよ?」

    そう伝えても彼は首を横へ振った。

    「あまり時間がないので」

    スマートフォンの時間を見つめ、雨竜は苦笑した。仕事と仕事の間の時間でお昼をとりに来たんだろうとメニューを開いて差し出したが、彼はそれも手を振って大丈夫です。と言う。

    「あの……季節のパフェ、まだ有りますか?」

    どうしたのかと首を傾げていると少し恥ずかしそうにほんのりと頬を染めて小さな声で尋ねる。季節のパフェとは、期間限定で出すことにした、ブドウのパフェと、メロンのパフェの事だ。先日彼も、メロンのパフェを美味しそうに食べていた。

    「うん、まだ有るよ。フルーツが安定して入るうちはするみたいだけど、そろそろ難しくなってきたってレオンが言ってた………たしか、今週いっぱいくらいだったかな…」

    「そうですか」

    その声と共に雨竜は、ムムムと深く悩み始めた。

    「次に来た時にはもう食べられないかもしれないですね」

    どちらを食べるか、鮮やかなメロンのような緑の瞳をきょろきょろとさせて、限定メニューの写真を見比べる。

    「メロン、美味しかったんだよな…でも……」

    ブドウも食べておきたいと、瞳が訴えている。水を注ぎ、おしぼりを取って彼の前に並べる。その間も至極真剣に悩んでいたようで。大凡パフェを選んでいるようには見えない難しい顔が、仮面越しでも伝わってくる。どれくらい悩んでいただろうか、ふっと大きなため息をひとつ。

    「ブドウのパフェをお願いします」

    意を決したとばかり、ハキハキと注文した。


    ***

    「おまたせしました」

    生クリームに、宝石みたいな紫の果肉が沢山のっている。重ねられた層の間には、スポンジケーキやブドウのゼリーも入っている。それが目の前に届くと、雨竜の瞳もキラキラと輝く。

    「ありがとうございます…頂きます」

    両手をあわせて紡ぐと、スプーンを手に取りブドウをひとつだけ口へ運ぶ。しっかり何度も噛み締めて、香りを味わうように深くゆっくり息をする。

    「メロンの時もでしたけど、本当に美味しいですね」

    そう言うとすかさず2つめを口に含む。クリーム、スポンジケーキと、次々口にしては幸せそうに微笑んだ。

    「よかったら、これも食べたらいい」

    耳障りの良い優しい声。嗅ぎなれた甘い香り。その声のする方へ、雨竜が視線を送ると綺麗に磨かれたスプーンが、こちらへ近づいてきた。カランとスプーンがグラスに当たって音がして。ブドウの果肉の横にころりとメロンの果肉が転がった。

    「そっ!……ぅ、ん……」

    驚きのあまり大きな声で名前を呼びそうになった所を、しぃっと窘められた。慌てて口を閉じた雨竜はじっと彼を見つめて、一つ空いた席の間を埋めるように、少しだけ身体を彼の方へ寄せた。

    「宗雲さん、…いいんですか?」

    宗雲の前にはメロンのパフェ。返事をする前に、もう一つスプーンで掬った果肉がころりと、雨竜のグラスに落ちた。

    「あぁ、好きな物は分け合ったほうが美味しいだろう」

    仮面に隠れた瞳が弧を描いていて、どきりと胸が跳ねる。頬がじわりと、熱くなったのを感じて。雨竜は仮面をしておいてよかったと、心の中で呟いた。
    ドギマギとしているこちらをよそに、宗雲は自分の残りのパフェを食べ進める。話をしようにも話題が見つからず、無言に耐えられず。パフェグラスに増えたメロンを口へと運ぶ。

    「……美味しい」

    前にも食べたけれど、やっぱり美味しい。その小さな声が漏れたのを宗雲は聞き逃さず「そうか」と嬉しそうに笑っていた。
    カランと、三度目のグラスの音がする。今度は雨竜がブドウをひとつ、宗雲のグラスへ移す。

    「…お返し、です」

    気恥ずかしいのか、肩を竦めながら。すぐに視線を自分のパフェグラスへ戻す。

    「ありがとう」

    宗雲は雨竜の表情を隠す前髪を、指先で払って耳にかける。仮面のせいで髪はすぐにはらりと落ちてしまったが、隙間から見えた耳が端まで赤く染まっていた。肌が白いからか、よく分かる。これ以上触れたら困らせてしまうだろうか。宗雲は手を引いて、静かに残りのパフェを口に運ぶ。話をする事は無かったが、時々視線をあわせては笑みを浮かべて。

    まるで、一緒に来店した様な穏やかな雰囲気の二人を、エージェントは黙って見守っていた。
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