Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    69asuna18

    ドカメン:宗雨
    Twitter:@doka25Asuna

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 45

    69asuna18

    ☆quiet follow

    ドカメン:宗雲×雨竜
    天空仰ぎてのサポエピ読んで書きました…書き始めるのも書くスピードも遅すぎて秋過ぎてしまいましたけど年内に書けてよかった…。

    Give&Takeカランカランとドアのベルが鳴り、カフェに新たな客が訪れた事を告げる。その姿に、エージェントは「あ!」と声を上げた。
    VIPルームは空いている。それを告げようとするよりと早く、雨竜はカウンターの方へするりと寄ってきて、静かに其処へ座った。

    「VIPルーム空いてるよ?」

    そう伝えても彼は首を横へ振った。

    「あまり時間がないので」

    スマートフォンの時間を見つめ、雨竜は苦笑した。仕事と仕事の間の時間でお昼をとりに来たんだろうとメニューを開いて差し出したが、彼はそれも手を振って大丈夫です。と言う。

    「あの……季節のパフェ、まだ有りますか?」

    どうしたのかと首を傾げていると少し恥ずかしそうにほんのりと頬を染めて小さな声で尋ねる。季節のパフェとは、期間限定で出すことにした、ブドウのパフェと、メロンのパフェの事だ。先日彼も、メロンのパフェを美味しそうに食べていた。

    「うん、まだ有るよ。フルーツが安定して入るうちはするみたいだけど、そろそろ難しくなってきたってレオンが言ってた………たしか、今週いっぱいくらいだったかな…」

    「そうですか」

    その声と共に雨竜は、ムムムと深く悩み始めた。

    「次に来た時にはもう食べられないかもしれないですね」

    どちらを食べるか、鮮やかなメロンのような緑の瞳をきょろきょろとさせて、限定メニューの写真を見比べる。

    「メロン、美味しかったんだよな…でも……」

    ブドウも食べておきたいと、瞳が訴えている。水を注ぎ、おしぼりを取って彼の前に並べる。その間も至極真剣に悩んでいたようで。大凡パフェを選んでいるようには見えない難しい顔が、仮面越しでも伝わってくる。どれくらい悩んでいただろうか、ふっと大きなため息をひとつ。

    「ブドウのパフェをお願いします」

    意を決したとばかり、ハキハキと注文した。


    ***

    「おまたせしました」

    生クリームに、宝石みたいな紫の果肉が沢山のっている。重ねられた層の間には、スポンジケーキやブドウのゼリーも入っている。それが目の前に届くと、雨竜の瞳もキラキラと輝く。

    「ありがとうございます…頂きます」

    両手をあわせて紡ぐと、スプーンを手に取りブドウをひとつだけ口へ運ぶ。しっかり何度も噛み締めて、香りを味わうように深くゆっくり息をする。

    「メロンの時もでしたけど、本当に美味しいですね」

    そう言うとすかさず2つめを口に含む。クリーム、スポンジケーキと、次々口にしては幸せそうに微笑んだ。

    「よかったら、これも食べたらいい」

    耳障りの良い優しい声。嗅ぎなれた甘い香り。その声のする方へ、雨竜が視線を送ると綺麗に磨かれたスプーンが、こちらへ近づいてきた。カランとスプーンがグラスに当たって音がして。ブドウの果肉の横にころりとメロンの果肉が転がった。

    「そっ!……ぅ、ん……」

    驚きのあまり大きな声で名前を呼びそうになった所を、しぃっと窘められた。慌てて口を閉じた雨竜はじっと彼を見つめて、一つ空いた席の間を埋めるように、少しだけ身体を彼の方へ寄せた。

    「宗雲さん、…いいんですか?」

    宗雲の前にはメロンのパフェ。返事をする前に、もう一つスプーンで掬った果肉がころりと、雨竜のグラスに落ちた。

    「あぁ、好きな物は分け合ったほうが美味しいだろう」

    仮面に隠れた瞳が弧を描いていて、どきりと胸が跳ねる。頬がじわりと、熱くなったのを感じて。雨竜は仮面をしておいてよかったと、心の中で呟いた。
    ドギマギとしているこちらをよそに、宗雲は自分の残りのパフェを食べ進める。話をしようにも話題が見つからず、無言に耐えられず。パフェグラスに増えたメロンを口へと運ぶ。

    「……美味しい」

    前にも食べたけれど、やっぱり美味しい。その小さな声が漏れたのを宗雲は聞き逃さず「そうか」と嬉しそうに笑っていた。
    カランと、三度目のグラスの音がする。今度は雨竜がブドウをひとつ、宗雲のグラスへ移す。

    「…お返し、です」

    気恥ずかしいのか、肩を竦めながら。すぐに視線を自分のパフェグラスへ戻す。

    「ありがとう」

    宗雲は雨竜の表情を隠す前髪を、指先で払って耳にかける。仮面のせいで髪はすぐにはらりと落ちてしまったが、隙間から見えた耳が端まで赤く染まっていた。肌が白いからか、よく分かる。これ以上触れたら困らせてしまうだろうか。宗雲は手を引いて、静かに残りのパフェを口に運ぶ。話をする事は無かったが、時々視線をあわせては笑みを浮かべて。

    まるで、一緒に来店した様な穏やかな雰囲気の二人を、エージェントは黙って見守っていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍😍😍😍😍👏👏❤❤☺💖❤🍈🍇🍈🍇🍈🍇🍈🍇🍈🍇❤👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    69asuna18

    MAIKINGお題サイト『確かに恋だった』様

    【キューピットは語る】
    1.いい加減くっつけ
    2.見てるこっちがハラハラ
    3.我ながら完璧な舞台設定
    4.照れ屋もここまでくると病気
    5.ようやくこの日が
    おまけの6.惚気は他でやってくれ
    (わたし/俺のおかげってこと忘れてない?)
    全部書けたらpixivにあげるつもり。
    2.見てるこっちがハラハラ今日は暦とランガと三人でジョーの店へやってきた。お休みだから遊びに来ていいと言ってくれたのだ。本当はチェリーも誘ったんだけど、なんだか締め切りとかで忙しいらしい。そういえば先週のSにも居なかったし、普通の会社勤めじゃないあぁいう仕事は大変なんだなと改めて思う。ジョーのお店のドアに触れた時、暦が急に声を上げた。
    「待て、ミヤ!」
    「なんだよ、急に…」
    暦は人差し指を口元に当てて、シーッと沈黙を促す。聞き耳を立てるその様子をみて、ドアの方へ耳を傾けるとなにやらなかで話す声が聞こえる。
    「お前には関係ねぇだろうが!」
    「そうやって言って、すぐぶっ倒れるのはどこのどいつだよ!」
    声の主は、店主のジョーと、来るはずのないチェリー。いつもの言い争いの様にも聞こえるが、いつもより少し緊迫した雰囲気。ジョーの声が聞いたことないくらい真剣なのだ。
    1178

    69asuna18

    DONEブ!ソウスズ
    捏造転生のお話
    【指につながるその先は】の続き。
    赤い糸を信じてた家の蔵の中にあった古い医学書の間から、ひらひらと落ちてきた手紙には。流れるような美しい文字で、まるで恋文のような内容が書かれていて。その宛名にソウゲンは驚き目を見開いた。同時に、今の自分が経験したことの無い、あるはずもない記憶が頭の中へ浮かんできて思わずその場へ崩れ落ちた。ドンと膝をつく。青痣が出来るかもしれないと、膝を撫でながら。流れ込んだ記憶に意識を戻し、なんだったんだと、手紙の文字へ指を這わす。宛名には自分の名前が書かれていた。

    『もう、共に過ごす事は叶わないけど、いつでもあなたの事を思って祈るよ。いつかまたどこかで会えるように。』

    その言葉に、あふれ出した記憶はより鮮明になる。ソウゲンという名から、山南敬助として生きるようになった日の事。そこで出会った最愛の人と自分の最後の事。そういえば、幼少の頃に祖父の葬式に来たお坊さんの袈裟を掴んで離さなかったと母に笑われたな、と。記憶の片隅で彼を思っていたからなんだろうと今なら理解できる。すべてが繋がり、非科学的な事が大嫌いなはずの自分が、江戸時代から生まれ変わった人間なのだと根拠もないのに、納得したのは高校に入る直前だった。
    2266