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    ちょっと流血

    ##本丸軸なふたりの話
    ##くりつる

    地獄へ道連れ 生きているか。
     頭上から降ってきた声に、死んだ、死んだ、と寝そべりながら鶴丸は答えた。生きているなとあっさり返され、つまらんやつめと唇を尖らせる。腹に穴が空き、左腕から先はどこかへ吹っ飛んでいってしまったが、辛うじて、まあ、生きていた。対する声の主は、頭からぼたぼたと血を流してはいたが、まだまだ軽傷の類いのようである。それでも血を流し続ければ貧血にはなるだろうと、止血するように指示すれば、大人しくそれに従った。自分が歩けなくなれば鶴丸を引きずって帰れなくなることを理解しているのだ。いいこ、いいこ。頭を撫でてやろうにも左手は遙か彼方、右手は刀を握ったまま、固まってうまく動かなかった。頭ではもうどうにも動けんと思っていても、身体の方は勝手に周囲を警戒しているようである。本当は今すぐにでも痛みで気絶してしまいたいが、身体に染みついた習性がそうさせてはくれないのだ。
     さて、はぐれたみんなはどこへ行ってしまっただろう。部隊が分断されて暫く経つが、迎えに来る様子がないのは大丈夫なのか。もしかしたら、向こうの方が鶴丸たちよりも危機的状況に陥っているかもしれない。
    「連絡は取れそうか?」
     口を開くたびに唇の端から血が流れ、首を伝い、気持ちが悪いなあという感想を抱く。あと、咽せそう。ううむ、と困っていると、大倶利伽羅が鶴丸を一度抱き起こし、羽織を脱がせ、その羽織で腹の穴を止血した。そうして、再び寝かせられる。残念ながら、左腕を止血する分までは足りなかったようだ。これくらいならば大丈夫。痛いには痛いし、手入れ部屋に入らない限り自然治癒はしなくとも、折れることはないだろう。そのくらいの感覚は、鶴丸にも、大倶利伽羅にも、あった。慣れというのは恐ろしい。
    「通信機器にメッセージが入っていた。向こうも重傷者がいるから、そっちを本丸へ送ってからこちらへ手助けに来ると」
     通信機器は部隊に複数渡されてはいたが、転送装置はひとつしかない。これは近くに転送装置が複数存在すると転送事故が起こりやすくなるとかそういう理由らしい。下手すれば次元の挾間に閉じ込められて二度と出てはこられない。そんな怪談のような噂話すら、ある。
    「敵が出てきたらおしまいだな。そのときは道連れにしてやるから安心しろよ」
     敵を、とも、きみを、とも言わなかったが、大倶利伽羅は鼻で笑った。普段は無愛想なくせに、こういうときだけは笑うのだ。馬鹿にしているともいう。
    「そんな体たらくで」
     そんな言葉に、べえ、と血だらけの舌を見せてやる。
    「こんなに真っ赤だと鶴どころかフラミンゴだ」
    「見たことは」
    「ないな。当たり前だろ。テレビでやってた」
     テレビといっても、指定のライブラリから引っ張って視聴することしかできないが、その中に世界の動物たちという番組があったのだ。これが、なかなかに面白いので、短刀を中心に大人気なのである。
    「フラミンゴの和名は紅鶴というらしいから、案外、遠くないかもしれないな」
    「きみ、意外に詳しいな」
     無駄に知識が増えてしまった。
     それにしてもこいつは、真顔で面白いことを話すから、笑っていいのか困る。育て方を間違えたかな、とも思ったが、そんなことを言えば育てられた覚えはないと返されるだろう。可愛げのないやつ。それでも、まあ、可愛げがないところが可愛いと思えてしまうので、付き合いの長さとは恐ろしいものだ。
    「ああ、やめだ、やめ」
     きっときみとなら、地獄だって楽しくなってしまう。道連れには向かないだろう。
    「腹が減った、なあ」
    「穴が空いてるからじゃないか」
     冗談なのか本気なのかわからない返事に、鶴丸は思わず声をあげて笑った。痛いなあ、ちくしょう。


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