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    性癖の話

    #くりつる
    reduceTheNumberOfArrows

    灼熱地獄 大倶利伽羅が湯浴みをしたあとに部屋へ戻ると、ちょうど同室である鶴丸が羽織を脱いでいる最中だった。
    「おかえり」
     頷きながら戸を閉める。鶴丸は昨日から遠征へ出ていたので、どちらかといえばその言葉を使うのは大倶利伽羅の方ではないかという思いも一瞬あったのだが、結局言わずに終わった。持っていた洗面用具を置き、再度部屋を出る。遠征に出ていた者のために残されていた食事と、お茶の入ったポットを手に取り、部屋へと戻った。大倶利伽羅が持っているものに気がついた鶴丸が、ぱっと顔を輝かせる。
    「ありがとよ。もうくたくただ」
     戦闘になるようなことはなかったのだろうが、退屈を嫌うこの男のことだ。何もない方が辛かったに違いない。ほぼ全裸の状態で大倶利伽羅の持ってきた握り飯に手を伸ばす。
    「おい、ちゃんと着ろ」
    「暑いんだよ」
     この男、羞恥心というものをどこかに捨て置いてきたのだろうか。あるいは、恋仲である大倶利伽羅の前だから単純に遠慮がないのかもしれない。冷えた茶を渡すと一気に飲んだので、もう一杯注いでやる。大倶利伽羅は自分の分の茶も飲みながら、食事をする鶴丸を眺めた。
    「……日焼け」
    「うん?」
    「腕、日焼けをしている」
     僅かではあるが、二の腕の一部分がくっきり日に焼けている。鶴丸はおにぎりを持った片手を持ち上げた。
    「ああ、向こうが暑くてな。堪らなくて羽織を脱いだんだ。しかし、こうしてみると間抜けな日焼け跡だな」
    「あんたも日焼けをするんだな」
     初めて意識したかもしれない。そう思っていると、鶴丸が笑う。当たり前だろう、と。
    「指の先も、むき出しの部分は若干だけど色が変わってるぜ。顔は光坊がうるさいから日焼け止めを塗ってるが、指なんかはすぐに取れるしな。けど、日焼けも火傷の一種だろう。いつもは手入れして治っているから気がつかなかったんじゃないか」
     今日は遠征だけだったから、手入れ部屋には入らなかった。鶴丸が言うように、指も数本だけ日に焼けている。しかし目を引くのはやはり二の腕の日焼け跡だった。今が全裸に近い状態であるから、余計、その不思議なコントラストは目立つ。
     視線を感じ、大倶利伽羅は顔を上げる。
    「……なにを見ている」
    「いや、見ているのはきみの方だろ」
     鶴丸は若干頬を赤らめ、視線を外した。
    「見られて恥ずかしいのなら服を着ろ」
    「つまらんやつ。どうせ脱ぐようなことをするんだからいいだろ」
     情緒もへったくれもない言葉に、馬鹿なことを言うなと溜め息を吐く。全裸でも恥ずかしくないかのように振る舞っているかと思えば、今のように変なところで赤くなったりする。肌が白い分、血が集まるとはっきりとわかった。
    「きみ、まるで獣のような顔をしている」
     つ、と鶴丸の指先が大倶利伽羅の頬を突いた。日に焼け、それでもまだ白さの残る指。
    「俺は、やらしいことなんてなにも知らないかのような、潔癖そうなきみの瞳に情欲の炎が宿るところを見るのが堪らなく好きだ」
     そう語る鶴丸の頬は赤らんでいる。それは先ほどのように、羞恥に依るものではなかった。
     どの口が、と大倶利伽羅は思う。まるで穢れの一切も知らないかのような、真白な存在。けれど実際には日焼けもするし、こんな風に欲望の色に染まるのを隠せていない。鶴丸の方が余程、大倶利伽羅に食らいついて離さなそうな顔をしている。頬を突いていた指が、そのままなぞりながら唇へと辿り着いたので、乞われるままにその指を舐める。
    「きみ、変なところで欲情するんだな」
     日焼け跡に興奮するだなんて初めて知った。くつくつと鶴丸が笑った。
    「どうせなら、きみの炎で焼いてくれ。その情欲をぶつけ、噛みつき、俺に痕を残しておくれ」
     断られると思ってなどいないのだろう。指は大倶利伽羅の口の中に入り込み、歯を撫で、舌を押す。溜め息を吐く代わりに、大倶利伽羅はその指を甘く噛んでやった。――それは返事の代わりでもあった。


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    DOODLEドッペルゲンガーだった鶴丸と一振り目の大倶利伽羅の話
    ドッペルゲンガー、恋を知る。第四話 窓辺に吊したてるてる坊主がこちらを見ている。
     鶴丸が顕現した春から季節は過ぎ、本丸には梅雨が訪れた。遠征先で雨は体験していたものの、毎日続く雨には驚きもなくうんざりとさせられる。じめじめとした湿気は気分を憂鬱にさせられるし、気晴らしに外へ出ることもできない。なにより、いつもの習慣であった大倶利伽羅との手合わせができないのは辛かった。道場は手合わせの相手を求める刀剣男士たちでいつもより溢れかえっていて、彼らと一汗流すのもよかったが、やはり大倶利伽羅との手合わせが鶴丸にとって格別なのだというのを再認識してしまうのだった。
    「ええと、これは、美術の棚か」
     書庫の中、鶴丸はワゴンを押す。
     青江の勧めに従って、鶴丸は書庫の管理人となった。司書と呼ぶには知識は足りないので、本当にただの管理人に近い。それでも返却された本を棚に戻したり、今まではなかった貸し出し管理簿を作ったり、やることはそれなりにある。特に、書庫の書籍をリスト化する仕事はなかなかやりがいがあった。鶴丸が顕現するまで本は適当に管理されていたらしいというのは青江から話には聞いていたが、終わるまでにどれくらいの時間がかかるものか。
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    PROGRESSセンチネルバース第三話 進捗報告 後半も書き終わったらまとめて推敲してぴくしぶにあげます
    忘れ草③進捗 耳を劈く蝉の鳴き声、じめじめと肌に纏わりつく湿気、じりじりと肌を焼く灼熱の陽射し。本丸の景色は春から梅雨、そして夏に切り替わり、咲いていたはずの菜の花や桜は気付けば朝顔に取って代わられていた。
     ここは戦場ではなく畑だから、飛沫をあげるのは血ではなく汗と水。実り色付くのはナス、キュウリ、トマトといった旬の野菜たち。それらの世話をして収穫するのが畑当番の仕事であり、土から面倒を見る分、他の当番仕事と同等かそれ以上の体力を要求される。
    「みんな、良く育っているね……うん、良い色だ。食べちゃいたいくらいだよ」
    「いや、実際食べるだろう……」
     野菜に対して艶やかな声で話しかけながら次々と収穫を進めているのは本日の畑当番の一人目、燭台切光忠。ぼそぼそと小声で合いの手を入れる二人目は、青白い顔で両耳を塞ぎ、土の上にしゃがみ込んでいる鶴丸国永だ。大きな麦わら帽子に白い着物で暑さ対策は万全、だったはずの鶴丸だが仕事を開始してからの数分間でしゃがんで以来立ち上がれなくなり、そのまますっかり動かなくなっていた。燭台切が水分補給を定期的に促していたが、それでも夏の熱気には抗えなかったようだ。
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