早起きの話 設定した時間通りに目を覚ました。体内の時計は正常だ。だけどいつもみたいに寝たいだけ寝て起きて、な朝より目覚めは良くない。ボディの回復が不充分とかなんとかってより、気分の問題だ。
でもしょうがない。どのくらい早く起きたら間に合うのか、わかんなかったんだもん。昨日の夜急に思いついたから。
さて果たしてボクは間に合ったのかな? ベッドの中でこっそりモゾモゾ動いて様子を伺う。
レプリロイドはほとんど寝返りを打たない……ので、動いてるのに気付かれたら起きたことが即バレてしまう。もちろん、バレるかバレないかってのもレッドが起きてるかどうかによるんだけど。でももしかしたら、レプリロイドの滅多にない寝返りくらいの振動で覚醒する設定でスリープモードに入ってる可能性もないとは言えない。
つまりコトは慎重に。ソロソロと動いて、隣にまだレッドが横たわってるのを確認する。
いる。センサーにも反応がある。で、次は寝てるかどうか。
起動してるのに瞼を閉じてベットの中に横たわってる可能性? どうかなぁ。これはもう試してみないとわかんない。例えば、触ってみるとか。
寝返りくらいなら大丈夫なんだから、起きたって多分大丈夫。ベッドの中で上体を起こして、レッドの顔を覗き込む。動かない。寝てる。被ってたブランケットがボクの肩からずり落ちる。今朝はちょっと涼しかった。レッドも素体のまま寝てるから、涼しさを感じてるかな。
頬に手を当てる。そのままそーっと首から胸まで、皮膚の上を指の腹でなぞる。
ひんやりしてる。よし。つまり、スリープモードだ。
「ふふん」
思わず小声で笑っちゃった。やった! 今日はボクの方が先に起きた!
そんだけのコトだけど。でもレッドの意識がないってことは、ボクのやりたい放題なんじゃない? どうしてやろうかな。なんかイイこと。
「碌でもないこと企んでる顔だ」
「あれ?」
考えて一瞬違うこと見てたスキに、レッドが起きた。目、開けてる。
「なんで? いつ起きたの?」
「ついさっきだよ。声が煩え」
「ンー。ボク、なんか喋ってたっけ」
「……笑い声が、聞こえた。お前の声はよく響くんだ」
「そっかなぁ。レッド、音に反応して起きるようにしてる?」
なんか納得がいかない。でももっと問い詰めようとしたら、どけって感じで鼻を摘まれた。