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    海老🦐

    しんじゃのSSまとめです。

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    海老🦐

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    院生シン様×学部生ジャーファル 6
    現パロ大学生シンジャです。続きです。

    準ミスに告られたことが学科内に知れ渡っている男、ジャーファル。

    ##現パロ大学生シンジャ

    ----------------



     その後、俺は自分からジャーファルに連絡できずにいた。連絡したとして何て言えばいいのかわからなかったし、向こうからも連絡はないまま、時間ばかりが過ぎていった。忙しさのせいにして俺は考えることをやめてしまう。運がいいのか悪いのか、学校で偶然出会うこともなかった。

    「あ、シンドバッドさんだ」
    「お久しぶりですー」
     研究室の前にゼミ生が集まっている。何人かが俺に気づいて手を振った。
    「久しぶり、どうしたの?」
    「レポートの提出期限なんです、今日」
     そう聞いてゼミ生たちの中に無意識にジャーファルの姿を探してしまう。けど、見当たらない。
    「ジャーファルは?」
    「ジャーファルくんですか? 今日は見かけてないですよ。レポートは先に提出したんじゃないかな」
    「へえ、相変わらず真面目だねえ」
     いないとわかるとなぜかほっとする。探したくせに。もしいたとしても、どんな顔で話しかければいいのかわからない。だからといってこのまま無視し続けるわけにもいかない。結局、自分から連絡するしかないのか。もうすぐ冬休みだ。年が明ければテストが始まって、その後は長い春休み。偶然を待っていたらいつまでたっても会えそうにない。
    「そういえば、聞いてくださいよ。ジャーファルくんといえば」
    「いま、話題なんですよー」
     急に女の子たちが声を潜める。
    「え、何?」
    「うちの学科にミスコンの準優勝がいるのって知ってます?」
    「知らないな、うちのゼミじゃないんだろ」
     準ミスに興味はないけど。というか、うちの大学、まだミスコンなんてやってるのか。
    「ゼミは違うんですけど。すっごくかわいくて。その子から告白されたらしいですよ」
    「こく、はく?」
     思わず声が裏返った。誰が? ジャーファル?
    「そう、すごい噂になってて」
    「やっぱり、合宿のとき攻めとけばよかったな~て。今さら後悔してるんです、この子」
     女の子がにやにやしながら、むすっとしてる隣の子の肩を小突いた。
    「もう、その話はいいよ~」
    「油断してるからだよ」
    「さすがに勝ち目ないって」
     女の子たちはきゃーきゃー言いながら笑い合う。飯盒炊さんのときのあのお喋りを思い出す。告白するとかなんとか、そういえば言ってたなーそんなこと。というか、なんだそれは。ジャーファルってそんなにもてるの? とてもじゃないがそんなふうには見えなかったぞ。
    「ということは、ジャーファルに彼女ができたんだ」
    「つきあってるかまでは知らないんですけど」
    「でも、断る理由がないよね!」
    「かわいい上に性格も結構いいもんね!」
     結構ってなんだよ失礼かよ。そうか、でも断る理由、確かにないかもしれない。だから連絡がなかったのか、そこで妙に納得してしまう。だったら余計に一言くらい何か連絡くれたっていいのに。だんだんムカついてきた。律儀なやつだと思っていたけど、こういうときは結構あっさりしたもんだな。それとも連絡しづらかったのか。それに関してはまあ、俺だってそうなんだが。
    「へえ、そうなんだ。あいつも隅に置けないね」
     なんて適当なこと言って合わせながら、内心では動揺しまくっているのを必死で隠す。さっさと別れたいと思ってた割には、いざ向こうからとなると全然おもしろくない。それも準ミスの彼女ができたから? て、なんだよその理由。夏からずっと悩まされてた問題がようやく解決したはずなのに、どうもすっきりしない。こんなあっけない終わり方はさすがに予測していなかった。嬉しいのか嬉しくないのかまったくもって複雑な気分だ。
     ジャーファルから連絡があったのはその三日後のことだった。

     よく晴れた日だった。授業の合間に十五号館前の広場で待ち合わせた。用件は聞かなくてもわかってる。俺は努めて冷静に、結果だけ静かに受け止めようと待ち合わせ場所に向かった。
     案の定、気まずそうな顔でジャーファルは「別れましょう」と言った。それから「すみません」と付け加えた。謝ることなんかない、俺はその言葉を待っていたのだから。本当は腹が立っていたけど、悪いのは明らかに俺だ。それにいずれこうなるのはわかっていた。いつまでも続く関係じゃない。終わりにしよう、その一言をジャーファルが言うか、俺が言うか、どちらかだ。
    「そうだな」
     それ以上の言葉が出てこなかった。本来なら謝るのは俺の方なのに。つきあおうと言ったのは俺なのに。ずるずるとずっと中途半端に引きずって、挙げ句、裏では他の子と遊びまくってたのに。ジャーファルにつきあっているという認識があった以上、これは立派な浮気になるだろう。例え俺にそのつもりがなくても。
    「本当はわかってたんです、冗談だったって。シンがわたしとつきあう気なんか少しもないって。それなのに、変な関係のまま長い間振り回してしまって」
    「そうなんだ」
     こいつ、ちゃんとわかってたんだ。俺はそこに驚いた。考えてみればおかしな関係だった。そんなの誰でもわかるか。
    「シンと一緒にいるのが楽しくて、つい。何かを期待してたわけじゃないんです。ただ、楽しかっただけで」
    「それはよかった」
    「今までありがとうございました」
    「うん、こちらこそ」
     ジャーファルが顔を上げる。ふわっと笑った。てっきり泣いてるのかと思っていたのに。この笑顔はそうだ、俺はあの暑い夏の日を思い出していた。教授のおつかいで今日は休みだと伝えに行った、夏休みの、誰もいない研究室の前で。こんな顔で笑うんだと知った、初めての、ああそうだ、この顔だ。あの日に戻ってもしやり直せるとしたら、俺たちはいい友人にでもなれただろうか。ふと考える。俺が調子にのって「つきあってみる?」なんて言わずに、ただの先輩と後輩として。そんな結果もあったのだろうか。
    「俺も楽しかったよ」
     ジャーファルはただうなずいた。今だったら言ってもいいかなと思った。誰にも話したことのない俺の秘密、でもこいつだったらきっと怒ったりせずに聞いてくれそうだし。
    「ずっと黙ってたけど、俺、本当はつきあってる人がいるんだ」
     ジャーファルはほんのわずかに目を見開く。
    「この間のスマホの子じゃなくて、あの子のことはほんとに誤解だから。ただの知り合い。それとは別に、ちゃんとつきあってる人がいる」
    「そう、だったんですか」
     さすがに驚いたのか、ジャーファルの声は途切れがちで微かに震えていた。
    「だからつきあおうって言ったのも冗談で。いつ本当のこと話そうか、ずっと迷ってたんだけど」
     本当のことなんか、本当は話さなくたってよかった。ずっと隠してきたのだから、誰に対しても。それなのにわざわざこんなこと言うのは、それはきっと最後くらいは誠実でありたいと思った俺の独り善がりで、決して傷つけたかったわけじゃない。
    「でもきっとそれは、俺もジャーファルといるのが楽しかったからなんだと思う」
     そうだったのか。自分で言って、自分で驚く。そうか、俺は楽しかったのか、こいつといるのが。気づかなかっただけで。それとも認めたくなかっただけなのか。
    「ずっと黙っててごめんな」
    「いえ、そんな。謝ることないです、だって」
     思ってたとおりジャーファルは怒ったりしなかった。ただ、俺がジャーファルのことをちゃんと知る前の、いつもつまんなそうにしていたあの頃の、そんな目で俺を見上げてはっきりと言った。
    「ただの冗談なんですから」
    「そうか、ありがと」
     なんだかちょっと寂しい気もしたけど、自業自得だ。それに何も失うものなんてない、ただ本来の関係に戻っただけなのだ。
    「友だちじゃだめなんだろうか俺たち。別に恋人じゃなくて、普通に、たまに飯食いに行ったり」
    「そうですね、そうですよね」
    「じゃあ、そういうことで」
    「はい、これからは友人としてよろしくお願いします」
    「うん、こちらこそ」
     俺が差し出した手をジャーファルが握る。俺もぎゅっと握り返す。そうして短い握手を交わし、長いようで短かった奇妙な関係はようやく終りを迎えた。これでめでたしめでたしじゃないか、傷つけることなく、傷つくことなく。さっぱりときれいに完結したんだ。そう自分に言い聞かせた。

     四十五階から眺める東京の夜景は相変わらずきれいだったし、ミシュランに選ばれた料理はどれもちゃんと美味しかった。けど、身の丈に合わないこういう贅沢も嬉しかったのは最初の頃だけ、最近はもう、どちらかといえば飽きてしまっている。年齢不詳のその人はいつもきちんとフォーマルにドレスアップして、味なんて大してよくわかりもしない俺をこうしてきちんとした店に連れて来る。それがきっと楽しいのだと思う。普通の学生なんか入店すら躊躇うような高級店であれこれ着せ替えごっこを楽しんで、一番気に入った一着を金額も見ずに買い与える。クローゼットにはとてもじゃないが大学になんか着ていかれないような服が死ぬほど溢れている。もったいないけど、それがこの人の好きな遊びで俺はただ人形みたいにそれにつきあうだけ。叩き込まれた作法で映画俳優のようにかっこよく完璧にエスコートするのが俺の仕事。その後で、お姫様みたいに丁寧にやさしく抱いて、とろけるような一晩の逢瀬を提供すればいいだけ。
     俺を選んだ理由は「見た目がいいから」、彼女ははっきりそう言った。
    「今日はなんだか機嫌が悪い?」
     歌うように軽やかに口ずさんで、思わせぶりにワイングラスを揺らす。口唇の端を少しだけ上げて意地悪そうに笑う。
    「いえ、全然」
     俺はただにこにこと笑ってるだけ。
    「どうして?」
    「だって、なんだかつまらなそうに見えるわよ」
     ソムリエがそっと近寄って来て、彼女のグラスにワインを注ぐ。血みたいに赤黒い液体。美味しいのか美味しくないのか、俺にはさっぱりわからない。
    「せっかくあなたと一緒に過ごしているのに、つまらないなんてそんなこと」
     思うわけがない。この人のことを嫌いではない。俺に今のすべてを与えてくれた人。大学院の学費、別宅と称した学校の隣のワンルーム、ブラックカード、数え切れないほどの服と靴と、もうお金には困らなくていい平穏な学生生活。だからといって別に好きでもない。
    「もしかして、好きな子ができたとか」
    「まさか」
     俺は首を傾げる。とても勘の鋭い人だけど、それはさすがに見当外れ。だってこの契約の大事な条件だから。誰も本気で好きになったらいけない。援助の代償。
    「約束したでしょ?」
    「はい」
    「遊びには目を瞑ってあげる。でも、本命はだめよ」
    「もちろん覚えてます。だから、それは勘違い。ちゃんとあなたのことしか見てませんよ」
     契約を違反したらこの関係はすべて終了。学費だって返済しないとならない。そう、特定の彼女をつくらないんじゃない、つくれないが正しい。これが俺の秘密。律儀にずっと守ってきた。世話になってるんだから、裏切りたくはない。
     帰りのタクシーの中で、もうそれは始まる。一連の儀式のようなもので、俺は英国紳士みたいに礼儀正しく体に触れて彼女を愉しませる。髪にやさしくキスをして腰に腕を回し、手をとって甲に口づける。指を絡ませて彼女の薬指に嵌められた指輪を撫でる。かわいい嫉妬を演出する。でもそれは俺にとって無機質なただの金属でしかない。顔を寄せて耳元にそっと呟く。
    「愛してる」
     この後、ベッドの中で朝まで繰り返し何度も囁く言葉。魔法の呪文。価値なんてあるのかないのか、俺にすらわからない。でもそうすることで、俺はたくさんのものをもらえた、この人から。

     短いスカートから伸びる太ももに手のひらを這わせる。色とりどり、くるくる変わる照明の下で皮膚の白さが艶かしく浮かび上がる。暖かくてやわらかい。その先に指を滑り込ませようとしたらぺちりと手を叩かれた。長い髪をかき分けて背筋をついっと指でなぞる。首筋に鼻を押し当てる。香水の匂いが鼻の奥に甘ったるく広がる。安心する。もう何杯飲んだかわからない。酔っぱらいすぎて頭がぐらぐら揺れる。フロアを震わせる重低音が鼓膜を突き上げる。大音量の音楽のせいで何も聞こえない。一周回って静かだ。ほっそい体をぎゅうっと抱きしめると女の子がきゃーっと笑う。
    「どうしたの、シン? 今日変じゃない?」
    「そんなことないよ」
     胸の谷間に顔を埋めれば、いいこいいこと頭を撫でてくれる。女の子はみんなやさしくてかわいくていい匂いがする。こうして甘えさせてくれる、受け入れてくれる。
    「もう出ない?」
    「どこ行くの?」
    「いいところ」
    「いいけど、ねえ何かあった?」
    「なんも」
    「そう?」
     そう、別に何もない。俺はいつもどおり。ただ誰かに甘えたいだけ。
    「んーー愛してる」
     名前も知らないこの子と、一晩だけ楽しむために俺が使う便利な言葉。決して安っぽくなんかない、だってたった今この瞬間は嘘じゃないから。例え明日の朝には忘れてたとしても。

    「あー、先輩! ちょっと、こっち来てください!」
     研究室を出たところでゼミ生の女の子に手招きされた。この間の子だ。廊下の突き当りの窓から下を見下ろしながら、早く早くと俺を急かす。
    「どうしたの?」
     彼女の頭の上から窓の下を覗けば、十五号館前の広場には巨大なクリスマスツリーを取り囲むように生徒がたくさん集まっていた。普段みんな忘れてるけど、うちの大学は一応プロテスタント系なので十二月になるとツリーを飾る。さらにクリスマス・イブにはイベントがあったりもする。というか、今さらけっこうどうでもいい。というか、そうか今日はクリスマス・イブなのか。
    「何? キャンドルサービス?」
    「それはどうでもいいんですけど」
    「どうでもいいんだ」
    「ほらあそこ、あそこ見てください! ツリーの右側に白っぽいコート着てる女の子いるじゃないですか」
     目を凝らす。あの子だろうか。
    「うん、見えるよ。誰? あ、」
     よく見ればその隣にいるのはジャーファル、じゃないだろうか。
    「あそこにいるのこの間言った女の子ですよ! うちの学科の」
    「ミスコン準優勝」
    「それです! しかもその隣にほら、ジャーファルくんが」
     やっぱりあれはジャーファルか。
    「あー、ほんとだ。いるねえ」
     俺はわざとのんきな声で答えた。十一階からは二人の様子はあまりよく見えなかった。だから実際に見たわけではないが、想像の中でジャーファルは笑っていた。隣の女の子に笑顔を向けて、ツリーを指差して何か言う。女の子も笑う。夕方だけど、辺りはもうすっかり暗くて、電飾で飾り立てられたもみの木はきらきら眩しい。ふと、クリスマスに家に誘われていたことを思い出す。ジャーファルの家、結局どこにあるのか聞くことはなかった。もしあのとき別れ話なんかされなかったら、今日はこの後二人であいつの家に行ってケンタッキーとかケーキとか食べてたんだろうか。俺はまた別れを切り出すべきかどうかうだうだと悩んで、それでできれば変な雰囲気になる前にさっさと退散しようと気を張って、でも結局心配したようなことは何も起こらなくて、タブレットで動画見ながらシャンパン飲んで、どうでもいい会話で盛り上がって、笑って、時間を忘れて終電逃して、そのままこたつで寝ちゃったりしてたんだろうか。ジャーファルは俺の代わりに今夜、あの子を連れて帰るのだろうか。どこか知らないけどひとり暮らしのジャーファルの部屋へ。
     なんだか急に腹がたってくる。それってどうなんだ? 俺のことふっておいて、自分は準ミスと楽しく聖なる夜を楽しむつもりなのか? そもそもあいつってそういうキャラクター?
     むかむかしすぎて胃がぎゅうぎゅう押し潰される。こういうのは性に合わない。考えるよりも先に、体が動いていた。エスカレーターに向かって走り出す。
    「先輩!? どこ行くんですか」
    「急に用事思い出したから帰る。じゃ、な、メリークリスマス!」
     右手に握りしめていたスマホがひっきりなしにメッセージを受信して震えている。どれもこれも、どうせ誰かからのお誘いだ。クリスマスの夜に俺と過ごしたい女の子はいくらだっている。みんな同じ顔で笑って、同じ声で名前を呼んで、同じ手で顔を撫でて、同じ体温で気持ちよくしてくれる。そう、だから予定なんか決めておく必要はない。今から適当にどれかに返信して、これから会おうかって言えば尻尾振ってついてくる。いつもどおりそうやってごまかして、本当は何が欲しかったかなんて考えずもせず流れに身を任せていれば、ジャーファルなんかいなくたって別に構いやしない。あいつと気まずいまま過ごすより、女の子とセックスしてるほうがずっと楽しいに決まっている。
     息が上がって苦しい。俺は肩で呼吸しながら準ミスの前に立ちはだかった。
    「こんばんは」
     準ミスは驚いた表情で俺を見上げた。間近で見た彼女は確かにかわいい。きれいな顔をしている。
    「はじめまして。きみ、かわいいね」
    「え、はい?」
     見知らぬ人に急に声をかけられて混乱している。さすがに怖いのかぎゅっと肩をすくめて一歩後ろに下がった。
    「ツリー見に来たの?」
    「はあ」
    「もしよかったらこの後、俺と、」
     最上級のつくり笑顔でにっこりと微笑みかける。
    「じゃなかった、俺に譲ってくれない?」
    「え、何を?」
     隣でぽかんと突っ立っているジャーファルの手首を掴んで持ち上げた。
    「こいつ」
    「え? え?」
     戸惑っている準ミスと俺の顔を交互に見比べながら、ジャーファルは小動物みたいにくりくりとした目を見開いたまま何も言わない。意味がよくわからないのか、それとも俺の行動にさすがに腹がたったのか、ただ黙って立ち尽くしている。表情からは何を考えているのか読み取れない。ぐいっと腕を引っ張ればジャーファルがよろけた。
    「いいかな」
    「ちょ、ちょっと待ってくださいシン、何を」
     慌てて俺の手を振りほどこうとするが、俺は放さない。
    「ごめんね」
     そう言ってもう一度にこっと女の子に笑いかける。ジャーファルの腕を掴んだまま、呆然としている準ミスをその場に一人残して俺は歩き出した。
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    海老🦐

    DOODLE院生シン様×学部生ジャーファル 10-2
    これで最後です。
    おつきあいくださりありがとうございました!
    ----------------



     ちょうど改札を出てくるところだった。手を振る前にこちらに気づいて、へらっと笑った顔がかわいかった。シンの、そういうちょっとした仕草が愛おしくてたまらない。
    「二次会、ジャーファルも来ればよかったのに。三年も結構来てるやついたぞ」
     駅構内にはまだ人がたくさんいるのに、シンは構わずに抱き寄せてくる。人前だろうがなんだろうが隠れたりしない。
    「いやですよ、だって絶対シンが酔ってべたべたしてくるもん」
    「なんでだよ、別にいいだろ。俺、みんなの前でおまえとつきあってるって言ってもいいよ。むしろ言いたい」
    「ぜったいにダメです」
     むーーっと口を尖らせて寄せてくる顔をブロックして体を引き剥がす。シンは抵抗ないのかもしれないけど、わたしはさすがにちょっと人前は。
    「ええ、何それひどくない? 俺とつきあってるって知られるのやなの?」
    「嫌ですよ、ゼミの中だけでもあなたのこと好きな女子が何人いると思ってるんですか? あなたは卒業したら関係ないかもしれないですけど、わたしはまだあと一年あるんですよ? いたたまれないですよ、そんなの」
    「へえ、ジャーファルってそう 4653