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    高校三年生の仙にょ越です。
    『それは、クラゲだけが知っていた』の続きです。
    ⚠️越野くんが女の子になっていますがあんまり女の子らしくないので普通に読めると思います。
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「海に向かって叫ぶ夢を見た」で始まり、「どうかお幸せに」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。

    #仙越

    いぬもくわない海に向かって叫ぶ夢を見た。
    「ばかセンドー!!」
    あれ、こんなに高かったかな、声。


    遊泳禁止の七里ヶ浜は波が高く泳ぎには適さないが、サーフィンやヨットといったマリンスポーツを楽しむ者たちには隠れた名所として人気がある。右手にはライトアップされた江ノ島のシンボルタワー、左手には三浦半島。マジックアワーの幻想的な空。そんな絶好のロケーションにそぐわない罵倒の叫び。
    「浮気者ー!!今度こそ別れてやるー!!」
    これは夢だ。そして先程から叫んでいるのは自分であると越野は理解していた。だが、それにしては声が高い。そして何よりも、
    『なんでスカートはいてんだ』
    スカートどころかセーラー服なのだが。
    「はっ?!」
    海面に浮上したかのように唐突に意識が戻った。
    「あれ?」
    腕を伸ばし、指先をぴんと掲げる。
    手入れされた爪には桜貝のような淡い色のネイルが薄くのっており、それは柔らかい曲線を描く女性の手だった。
    「…女装コンテストは、終わったよな」
    セーラー服もネイルも全て身に覚えがある。クラスの連中に面白半分に選出された文化祭の余興のひとつ。仙道だけが、『無理だ似合わんやめておけ』などと言って反対した。
    「越野!!」
    ひどく焦ったような声に何事かと振り向けば、国道から砂浜へ降りるコンクリートの階段を走り降りてくる仙道の姿があった。
    めずらしいこともあるものだ。
    こいつがこんなに慌てるなんて。
    (夢だからか?)
    波打ち際に佇む自分の元へ駆け寄る仙道を見ながら他人事のように思った。だが目の前で息を整え身を起こした男は、果たして大きく見上げるほどだっただろうか。
    「…おまえ、背、伸びた?」
    「はぁ?!」
    「だって、そんなに、」
    身長だけではなく、体格も、存在感も。思わず自分の手のひらを見つめる。
    (そうか 俺が小さくなったのか)
    おそるおそる自らの身体に触れる越野を仙道は訝しげに見ている。
    「おい、どこか痛いのか」
    「え、いや…別に」
    痛くは無いが、いくら自分でも女の身体だと思うとそうそう触れてはならない気がしてならなかった。
    「あ、えーと、それで、何か用?」
    いたたまれなくなり、越野は話題を変えるべく聞いたのだが、何故か仙道は困り果てた顔で越野の両肩を掴んだ。
    「あの子とは何でもないんだ、本当だ」
    「え?」
    「屋上で昼寝してたらいつの間にか隣にいて、変な流れになって離れようとしたらのしかかられて、そこにおまえがちょうど現れて」
    「その言い方だと俺が邪魔者みてぇだな」
    「そんなこと言ってないだろ?!」
    なおも弁明する仙道を、越野は不思議な面持ちで眺めていた。
    (なんでこんなに必死なんだ)
    ふと、そこで夢の冒頭を思い出す。

    ──別れてやる!
    ──今度こそ!

    (えぇー、俺、こいつと付き合ってんの)
    高校三年生になった今、もはや神奈川のみならず、日の丸背負って世界とやり合うほどのバスケットプレイヤーとなったこの男と、俺が。

    やめとけよ、俺。
    釣り合うわけねぇじゃん。
    つーかこんな爪してたらバスケできねぇじゃん。

    程よく伸ばして丁寧に磨かれた爪を眺めていたら怒ったようにその手を取られた。
    「越野、聞いてるのか」
    「聞いてない」
    「えぇ!?」
    「聞いてねえけど聞こえてる」
    心の中で、女の俺に。
    立てた両膝に顔を埋めて、涙は零さず泣いている。女になっても意地っ張り。さんざん傷付けられてきたのにな。いい機会だ、俺が浮気野郎に引導を渡してやる。
    「別れる」
    「だめだ」
    低い声に思わず顔をあげる。
    「絶対だめだ、別れない」
    (やめろよ、おまえの真顔、こえーんだよ)
    怯みながらも言い返す。
    「そんなこと言ったっておまえこいつのことほんとは何とも思っちゃいねーんだろ」
    「そんなわけないだろ」
    「じゃあなんで二度も三度も浮気すんだ」
    「全部誤解だ、浮気なんか一度もしたことねえ」

    おまえがいるのに
    おまえしかいないのに

    夢の中でもこの男は甘い言葉で俺を惑わす。
    騙されるなよ、俺。
    「俺が悪かった、もう絶対にほかの女に触らせない」
    そのセリフも何度目だ。
    一発殴ってやろうと拳をつくったところで、海に潜ったように意識が阻まれた。
    「…次やったら絶対別れるからな」
    (えぇー?!)
    おいおい!
    チョロすぎじゃねーか!
    しっかりしろ!俺!
    仙道は、越野の言葉に破顔し背を屈め顔を寄せてくる。越野は背伸びをしてそれを受け入れていた。
    (首、疲れそう)
    色気もへったくれもない感想を述べ、今度こそ映画のような絶好のロケーションで絵になる二人を眺めながら、やけになって越野は叫んだ。

    「どうかお幸せに!」
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    775

    DOODLE高校三年生の仙にょ越です。
    『それは、クラゲだけが知っていた』の続きです。
    ⚠️越野くんが女の子になっていますがあんまり女の子らしくないので普通に読めると思います。
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「海に向かって叫ぶ夢を見た」で始まり、「どうかお幸せに」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
    いぬもくわない海に向かって叫ぶ夢を見た。
    「ばかセンドー!!」
    あれ、こんなに高かったかな、声。


    遊泳禁止の七里ヶ浜は波が高く泳ぎには適さないが、サーフィンやヨットといったマリンスポーツを楽しむ者たちには隠れた名所として人気がある。右手にはライトアップされた江ノ島のシンボルタワー、左手には三浦半島。マジックアワーの幻想的な空。そんな絶好のロケーションにそぐわない罵倒の叫び。
    「浮気者ー!!今度こそ別れてやるー!!」
    これは夢だ。そして先程から叫んでいるのは自分であると越野は理解していた。だが、それにしては声が高い。そして何よりも、
    『なんでスカートはいてんだ』
    スカートどころかセーラー服なのだが。
    「はっ?!」
    海面に浮上したかのように唐突に意識が戻った。
    1912

    775

    DOODLE高校一年生の仙越未満です。
    ⚠️仙道さんに適当に遊んでいる女性がいます(説明だけで出てきません)
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「小さな嘘をついた」で始まり、「本当は知っていた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。
    それは、クラゲだけが知っていた小さな嘘をついた。
    ほんの出来心。
    引き止めたくて出た、咄嗟の苦し紛れのそれ。

    「事故物件?!」
    作文用紙に走らせたシャーペンの先がボキリと折れた。夏休みも終盤を迎える八月下旬、越野が仙道の部屋で課題の読書感想文を終わらせるべく奮闘していた時だった。あらすじと結末部分しか読んでいない本の感想を捻り出すのは容易では無く、うんうん唸っている時にそういえばさぁ、とひどくのんきに仙道が話し始めた。
    「うわ、ほんとだ…」
    越野はスマホで事故物件を集めたサイトを開き、少し緊張しつつ住所を入力して検索をかけると見事にこのアパートが引っ掛かった。
    「よく決めたな」
    「母さんにも言われたよ」
    田岡の熱心なアプローチのおかげで陵南へ進学を決めた仙道は、物件探しに父親と鎌倉へ訪れた。そこで案内された曰く付きのアパートは、築年数はそこそこ経っているがこの部屋だけはリフォーム仕立ての新築同然の内装で、しかも賃料は他の部屋に比べて驚きの格安物件だった。高校からも最寄り駅からも近く何より安い、おまけにリフォーム仕立てとくれば特段に断る理由は無かった。その場で諸々の契約書を交わし、東京へ帰る前に海岸沿いの定食屋で湘南名物のしらす丼を食べながら「掘り出し物件だったなぁ。母さんも喜ぶぞ」と笑っていた父だったが詳細を聞いて角を生やした母に雷を落とされていた。
    1985

    775

    MAIKING書きかけ仙越未満のお話。
    じわじわと続きを書いている…
    せめて、あらしのなかでは嵐の前の静けさ、なのだろうか。
    午前八時の陵南高校前駅は、陵南高校生、通称南高(ナンコー)生が一番多い時間帯だ。早朝からの雨が通学時間に本降りとなり、改札を通り億劫そうに傘を差す生徒達。住宅街の急な坂を上る塊の中に、ひときわ目立つ長身の男子生徒を目が良い植草は難なく見つけた。
    「福田、おはよ」
    「はよ」
    相変わらずの仏頂面だが、一年半と同じチームメイトとして過ごしただけあって決して機嫌が悪いわけではないことは分かる。だが機嫌が良いわけでは無さそうだ。
    雨のせいか?
    「どした。なんかあった?」
    「………」
    植草たち二年生は、夏の県大会後に魚住ら三年生が卒部したことで部内の最高学年になった。冬の選抜予選まで一人も残らなかったことは、戦力ダウンだけではない、何ともやり切れない思いだった。チーム内の精神的中枢、それは間違い無くエース仙道だ。だが、仙道にとっての精神的中枢は確かに魚住だった。言葉にこそしたことは終ぞ無かったが、植草は、夏の県大会最終試合に痛感させられた。だからという訳では無いが、植草はチームメイトの機微に少しばかり敏感になっている。特に福田のように、口数少なくストレスを溜め込んでしまうようなやつには。とにかく吐き出させて、少しでも心を軽くさせる。主将クラスには話しにくいことでも、植草なら話せることがある。自分の役割りだと、植草は密かに自負していた。
    3564

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    775

    DOODLE高校一年生の仙越未満です。
    ⚠️仙道さんに適当に遊んでいる女性がいます(説明だけで出てきません)
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「小さな嘘をついた」で始まり、「本当は知っていた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。
    それは、クラゲだけが知っていた小さな嘘をついた。
    ほんの出来心。
    引き止めたくて出た、咄嗟の苦し紛れのそれ。

    「事故物件?!」
    作文用紙に走らせたシャーペンの先がボキリと折れた。夏休みも終盤を迎える八月下旬、越野が仙道の部屋で課題の読書感想文を終わらせるべく奮闘していた時だった。あらすじと結末部分しか読んでいない本の感想を捻り出すのは容易では無く、うんうん唸っている時にそういえばさぁ、とひどくのんきに仙道が話し始めた。
    「うわ、ほんとだ…」
    越野はスマホで事故物件を集めたサイトを開き、少し緊張しつつ住所を入力して検索をかけると見事にこのアパートが引っ掛かった。
    「よく決めたな」
    「母さんにも言われたよ」
    田岡の熱心なアプローチのおかげで陵南へ進学を決めた仙道は、物件探しに父親と鎌倉へ訪れた。そこで案内された曰く付きのアパートは、築年数はそこそこ経っているがこの部屋だけはリフォーム仕立ての新築同然の内装で、しかも賃料は他の部屋に比べて驚きの格安物件だった。高校からも最寄り駅からも近く何より安い、おまけにリフォーム仕立てとくれば特段に断る理由は無かった。その場で諸々の契約書を交わし、東京へ帰る前に海岸沿いの定食屋で湘南名物のしらす丼を食べながら「掘り出し物件だったなぁ。母さんも喜ぶぞ」と笑っていた父だったが詳細を聞いて角を生やした母に雷を落とされていた。
    1985

    775

    DOODLE高校三年生の仙にょ越です。
    『それは、クラゲだけが知っていた』の続きです。
    ⚠️越野くんが女の子になっていますがあんまり女の子らしくないので普通に読めると思います。
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「海に向かって叫ぶ夢を見た」で始まり、「どうかお幸せに」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
    いぬもくわない海に向かって叫ぶ夢を見た。
    「ばかセンドー!!」
    あれ、こんなに高かったかな、声。


    遊泳禁止の七里ヶ浜は波が高く泳ぎには適さないが、サーフィンやヨットといったマリンスポーツを楽しむ者たちには隠れた名所として人気がある。右手にはライトアップされた江ノ島のシンボルタワー、左手には三浦半島。マジックアワーの幻想的な空。そんな絶好のロケーションにそぐわない罵倒の叫び。
    「浮気者ー!!今度こそ別れてやるー!!」
    これは夢だ。そして先程から叫んでいるのは自分であると越野は理解していた。だが、それにしては声が高い。そして何よりも、
    『なんでスカートはいてんだ』
    スカートどころかセーラー服なのだが。
    「はっ?!」
    海面に浮上したかのように唐突に意識が戻った。
    1912

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    MAIKING書きかけ仙越未満のお話。
    じわじわと続きを書いている…
    せめて、あらしのなかでは嵐の前の静けさ、なのだろうか。
    午前八時の陵南高校前駅は、陵南高校生、通称南高(ナンコー)生が一番多い時間帯だ。早朝からの雨が通学時間に本降りとなり、改札を通り億劫そうに傘を差す生徒達。住宅街の急な坂を上る塊の中に、ひときわ目立つ長身の男子生徒を目が良い植草は難なく見つけた。
    「福田、おはよ」
    「はよ」
    相変わらずの仏頂面だが、一年半と同じチームメイトとして過ごしただけあって決して機嫌が悪いわけではないことは分かる。だが機嫌が良いわけでは無さそうだ。
    雨のせいか?
    「どした。なんかあった?」
    「………」
    植草たち二年生は、夏の県大会後に魚住ら三年生が卒部したことで部内の最高学年になった。冬の選抜予選まで一人も残らなかったことは、戦力ダウンだけではない、何ともやり切れない思いだった。チーム内の精神的中枢、それは間違い無くエース仙道だ。だが、仙道にとっての精神的中枢は確かに魚住だった。言葉にこそしたことは終ぞ無かったが、植草は、夏の県大会最終試合に痛感させられた。だからという訳では無いが、植草はチームメイトの機微に少しばかり敏感になっている。特に福田のように、口数少なくストレスを溜め込んでしまうようなやつには。とにかく吐き出させて、少しでも心を軽くさせる。主将クラスには話しにくいことでも、植草なら話せることがある。自分の役割りだと、植草は密かに自負していた。
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