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    wan_himitsu

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    wan_himitsu

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    没になった学パロ太中の前半部分のみ供養
    全年齢です🙆‍♀️🙆‍♀️
    ⚠️執着/女々しい中/共依存(薄)/視点のごちゃつき/その他諸々注意なので何でも許せる方向け

    #太中
    dazanaka

    学だちゅ供養レースカーテンから差し込む陽の光。
    静かに空いている隣のシーツは冷たくて、中也はどうやら先に起きているらしい。

    そろそろ来るかなぁ、と思いつつも微かに開いた目を閉じて、逃げるように布団に顔を埋める。すると予想通り、直ぐに扉が開いた音がした。

    「太宰、朝」

    ほら、来た。

    柔らかい声で「起きろ」言いながら、布団越しにポンポンと体を叩かれる。開いた扉の向こうからは、朝食 の良い匂いが漂ってきた。

    「んー……もうちょっと、」

    「莫迦、遅刻すんだろ。朝飯できてんぞ」

    顔だけ出してそう言うと、中也は溜息を吐きながら空いている隣に腰を下ろした。
    さらさらと髪を梳く様に撫でると、太宰は目を瞑ったまま催促するように手に擦り寄ってくる。悪い気はしないので、そのまま撫でながら顔にかかった髪を避けてやる。無駄に綺麗な顔だな、と毎回思うが本人に伝える気は毛頭ない。

    「…………」

    漸く目を開いたと思えば、太宰は顔をじっと見詰めて無言のまま視線だけを寄越す。
    毎日これだな、此奴。溜息をこぼして、何も言わず太宰の額に軽く口付けた。
    満足か? と顔を見れば、太宰は「違うでしょ」と言いたげに、まだ黙ったまま微笑んでいる。
    ……俺は諦めて、太宰の唇へと触れるだけの接吻をすると太宰は満足したらしく、頬を緩ませて漸く体を起こした。

    「ふふっ、おはよう。中也」

    「……はよ。早く飯食うぞ。顔洗ってこい」

    今日の朝食は和食だった。
    昨日の晩に、私がリクエストした物だ。多少文句を言いつつも「仕方ねェな」と結局いつも言ったものを用意してくれる。

    「うん。今日も美味しい」

    「当たり前だろ」

    私が素直にそう言うと、中也は平常な様子を見せつつも、嬉しさを抑えきれないようで、にまにまと顔が緩んでいた。毎朝同じ様な会話をしては、また同じ様な反応をする。

    だが、つい先日に一抹の悪戯心で何も言わずに黙々と食事をした際には、チラチラと何度も繰り返し私の顔を伺っていた。
    食事も終わって片付いた頃に、不意に近付いてきて私の襯衣をそっと掴む。

    「…………今日、旨くなかったか……?」

    そう聞いてきた中也は、捨てられた仔犬のように酷くしょげていた。
    勿論、私の為に作られた料理が不味い訳も無く、「ううん。今日もとても美味しかったよ」と伝えると、それでも中也は眉を落として、故意か無意識か、上目遣いで私を見た。

    「……本当か……?」

    僅かに瞳も潤んでいて、健気な姿が酷くいじらしくて愛らしい。
    その後に確りと謝って、本当に美味しかったと伝えて抱きしめたら、中也は漸く安堵して子供っぽく笑った様は、特に愛おしかった。



    「太宰。そろそろ行くぞ」

    「はぁい」

    準備を終えて、玄関に向かった中也の後を追い掛ける。

    互いに二人暮しの為、ほぼ毎日、中也の家に太宰が泊まり、一緒に寝て、一緒に食事をし、一緒に学校へ向かう。それが、二人の生活だった。

    *

    歩きながらも、まだ眠そうにしている太宰の欠伸に、俺も吊られて欠伸を噛み殺した。

    「今日は座学ばかりだから休んだって良いのになぁー」

    「どう言う理屈だよ。普段からどうせ寝てンだろ? なら、出席ぐらいしとけ」

    「それだよそれ。どうせ寝るなら家のベッドで寝たいじゃない」

    「莫ァ迦。出席する事に意味があンだよ」

    他愛も無い話をしながら歩を進める。

    家から学校までそう遠くは無い距離なのに、二人の登校はいつも予鈴ギリギリだった。その所為か、お陰か、登校している他の生徒は殆ど居ない。
    前に、少しだけ早めに登校した時は、通学路だけなことはあって他の生徒も多く、喧しい程に多方面からチラチラと視線を感じて酷く居心地が悪かった。
    凡そ、太宰に気がある女子と俺を恐れる……又は、借りがある奴らの目だろう。
    ギリギリになってしまうのは太宰が寝汚いのが悪いのだが、この時間の登校は俺も落ち着けて、何かと丁度良い。


    「今日もお昼に屋上でね」

    そう言って手を振ると中也はこくりとひとつ頷いて、隣の教室へと入っていった。それを確認して、私も自分の教室に入ると丁度予鈴が鳴り、周囲からの挨拶を適当に返しながら席に着く。
    いつも態と遅く登校しているのは、これも理由の一つだった。
    余裕を持って席に着くと、誰かしらに囲まれてしまい相手をしなくてはならない。だからと言って中也と一緒に居ようとしても、たった一瞬、一人になっただけで群がりが出来てしまうのだ。
    まぁ、最もな理由は、二人で過ごす時間を増やす為なのだが。

    残念ながら中也とはクラスが違い、常に一緒に居ることは出来ない。本当は空き時間の度に構いに行きたいのだが、これまた授業が終わったと同時に囲まれてしまう為、そうもいかなかった。
    だからこそ、時間の長い昼時間だけは中也と屋上で待ち合わせをし、一緒に昼食を取る事にしているのだ。というのも、屋上は普段立ち入り禁止で誰も人が立入ることは無い。私ともなれば、鍵が無くとも簡単に開けられてしまうので、他者が侵害しないその場所は都合が良かった。


    教師の声と黒板を叩くチョークの音を背景音楽に、私は机に突っ伏した。テストの結果が毎回良いお陰か、寝ていても注意される事は稀だ。

    早くお昼にならないかなぁ……

    そう考えながら、時間が過ぎるのを只管に待った。

    数回の振鈴を聞き、刻々と針を刻む。
    恐らく三限目の時間、何となく窓の外から運動場に目をやると、丁度中也のクラスが授業をしていた。
    日に照らされて、緩やかに巻き跳ねる黄丹が輝かしく閃いて見える。手は抜いているが案外真面目に受けている……と思いきや、サボれるところは確りとサボっているのでちゃっかりしているな、と笑ってしまった。
    気付かないかなぁ、と暇そうに欠伸をしている中也をじっと見詰めていると、不意に此方を見上げてきて、窓越しにバッチリ目が合った。私も驚いたが、中也はそれ以上に驚いたらしく目を見開いて、此方からでも分かるくらいに肩を跳ね上げた。それが面白くてひらひらと手を振ると、中也は振り返すことなく、目の下に指を当て、べーっと舌を見せてきた。紛れもない照れ隠しだ。
    私はまた笑うと、中也は友人に呼ばれたらしく走って行ってしまった。体操着の上着を着込んだ背中を見送り、私は再び机に沈む。

    (昨晩もかなり無理させたのに、あんなに元気とは……流石筋肉莫迦)

    首周りの痕を隠しながらの着替えは屹度、苦労しただろう。
    後で如何やったのか話を聞こう、と緩む口角を隠すように机に突っ伏した。




    「何で此方見てんだよ、彼奴……」

    何と無しに太宰のいる教室を見たら、此方を見ている不真面目野郎と目が合ってしまった。確実に俺を見ていたあの生暖かい視線がどうもむず痒くて、厭に恥しい。
    あんな目でずっと見られていたと思うと僅かに身体が熱くなったのは、きっと陽射しの所為だ。そう、屹度そうに違いない……と必死に自分に言い聞かせて、視線を振り払う様に俺は走り出した。


    *

    やっとの思いで退屈な授業を終え、漸く昼時間になった。

    人が集まってくる前に、早く屋上に向かおう。そう思って廊下に出た……途端に、女生徒数人に声を掛けられ、あっという間に囲まれてしまった。
    普段から誰かしらに声は掛けられるのだが、今日は特段運が悪いらしい。
    全く見覚えのない女生徒達が、まるで知り合いの様に話しかけてくる。「太宰君、今日も授業中に寝てたでしょ〜!」だとか「そう言えば、昨日話したカフェのこと何だけど〜」だとか……駄目だ。誰一人、何一つ覚えてない。

    「あー、ごめん。少し急いでいるから、」

    早く会いに行きたくてそう言ったのだが、女子の耳には届いていないらしく、相も変わらずベラベラと喋りかけてくる。普通の男なら喜ぶであろう、さり気ないスキンシップや下心丸見えの甲高い猫撫で声が一等不快で、私の頭の芯は一瞬で冷え切った。それでも、その様子には気が付かない様で、相変わらずな囲いに、如何したものかと頭を悩ませる。

    そんな時だった。

    「廊下塞いでんじゃねェ。目障りなんだよ、糞鯖野郎」

    鬱黒くドスの効いた声に女子達は小さく悲鳴を上げ、控えめに私に縋り付いてきた。声の主は予想通り、中也だった。
    だが、朝の様子とはまるで違う。
    眉間に皺を深く刻み、空の様な三白眼は私をキッと睨み付ける。
    中也の手には鞄とお弁当の包み。

    「やぁ、中也。今から丁度行こうと」

    思っていた、と言う前に、中也は舌打ちを合図に歩き出す。その方向は屋上では無く、玄関へと向かう階段だった。

    「あれ、帰るのかい? お昼まだだし、午後も授業が――」

    中也へ伸ばした手が、パシンッと乾いた音を鳴らし、叩き落とされる。

    「五月蝿ェな、手前には関係無いだろうが。触んじゃねェ、気持ち悪ィ」

    冷たい声でそう言うと、中也は振り返ることなく歩いて行ってしまった。

    如何やら本当に帰ってしまうらしい。
    私の「待って」を遮ったのは中也では無く、態とらしく私に縋り付いていた女子生徒達の声だった。

    「太宰君、大丈夫!?」

    「中原君……学校には来てるみたいだけど、喧嘩ばっかりの不良生徒だって有名だよね……」

    「噂で聞いたんだけど、この間、他校の人と喧嘩して問題になったんだって!」

    「えー!? こわ〜い!!」

    きゃあきゃあと騒ぎ出した女子生徒達を極めて冷ややかな目で見下ろす。
    本質を何も分かっていない癖に噂だけには敏感で、それでいてアピールするのはか弱い自分だ。これだから関わりたくないんだよなぁ……
    盛り上がっていて私の様子に気付かなかった様子の女子の一人が「そう言えば、」と此方を向いた。

    「太宰君ってよく中原君とお昼食べてるんだよね?」

    「……あぁ、そうだよ」

    簡潔にそう言うと、周囲の女子達は再び騒ぎ出す。

    「大丈夫なの?恐いことされてない?」とか「気にかけてあげてるんだ。太宰君優しい〜!」とか何を考えているのか分からない、全く的外れな感想を並べ出していた。
    ……そろそろ本格的に面倒になってきた。それに、恐らく帰ったのであろう中也を追い掛けなければならない。

    「もうこんな時間だ。其れじゃあ皆、話はまた放課後にでも」

    そう適当に言い捨てて、私は周囲の女子生徒を宥め、颯爽とその場から離れる。
    早々に荷物をまとめて、担任に体調が優れないと適当に理由をつけて早退届けを出してから、私は校舎を後にした。

    *

    「中也、入るよ」

    家に鍵は閉められていなくて、私はインターホンを鳴らすことなく扉を開く。電気はひとつも付いていていない。昼時だがカーテンが全て閉められており、僅かに薄暗かった。
    気配の無いリビングを素通りし、私は迷うこと無く寝室へと向かう。
    声も掛けずにゆっくりと扉を開けると、これまた薄暗い寝室で、ベッドの布団がこんもりと盛り上がっているのが見えた。

    「中也」

    その山にそっと触れ、名前を呼ぶ。するとピクリと動き、中也はゆっくりと顔を覗かせた。

    「太宰……?」

    どうして、と目を丸くした中也に「早退してきちゃった」と言うと、私が早退した理由を察した中也は後悔したように青ざめてから、それでも嬉しかったのか、少し頬を緩ませて眉を落とした。

    「体調でも悪いかい?」

    私は態とそう聞くと、中也は起き上がり、ぶんぶんと首を左右に振り、ぎゅうっと布団を握り俯いた。

    「…………悪い……俺また……あんなこと、言うつもりじゃなかったのに……ごめん、太宰……」

    微かな声でそう言った中也は見るからに落ち込み、萎れた様子。先程の冷ややかな姿とは、まるで別人だ。

    「私は大丈夫だよ」

    「…………本当か……?」

    中也は此方を窺うようにチラリと私の顔を見た。嘘のように幼げでそう言って首を傾げる中也は、酷く愛らしい。
    ……だからこそ、少し意地悪したくなってしまうのだ。

    「うん、私は全く気にしてないよ。……でも、あの子達は怖がってしまっていたみたいだけど。私に縋り付いてきて、大変だったなぁ」

    「っ……」

    嘘では無い。実際、あの子達は怖がっていた様だし、縋り付かれて迷惑だったのも事実だ。
    それでも、こう言ったら中也は悲しむだろうなぁ、と思って態々言葉にしてみた。そうしたら案の定、中也は見るからにショックを受けた顔をして、握る掌の力が強まるのが見て取れる。
    そんな様子が可愛くて、私の舌は止まらなかった。

    「それに、いつも一緒の中也が居ないからお昼も一緒にどうか、って誘われてさ。今日はもう帰るって言ったんだれど、そうしたら、来週から一緒にってせがまれちゃって」

    「ッ駄目だ!!」

    中也は私の腕を掴み、そう声を荒らげた。
    反射的だったのだろう。直ぐに、はっとして俯いてから、それでもゆっくりと私に抱き着いた。

    「…………嫌だ、太宰……」

    涙ぐんだ声でそうか細く呟き、すりすりと私の肩口に顔を埋める。
    私は上がる口角を抑えきれず、中也を抱きしめ返して、黄丹の髪を梳いてやった。

    「勿論、了承なんてしてないよ? お昼は中也と一緒に屋上で、って決まっているからね」

    「ほんとか……? 来週からも、俺と一緒?」

    「本当だよ」と微笑むと、中也は安堵したようで幸せそうに息を漏らし、舌足らずに私の名前を呼び、再度確りと抱きついてきた。

    「約束したでしょう? お昼は二人きりで一緒に食べるって。今日は食べ損ねちゃったから、また後で食べようね」

    こくんと中也は頷いて、甘えるように私の体へ頬を擦り寄せる。また少し意地悪しすぎたかなぁ……と考えていたのだが、嬉しそうに身を寄せる中也を見て、まぁ良いかと思ってしまった。


    「中也」

    「ん……? っン……!」

    呼ばれて顔を上げた中也の顎を掬って、唇を合わせて塞ぐ。唐突な接吻に多少驚いたものの、中也は容易に受け入れた。

    顎から頬へ、そして耳にかけてをゆっくり撫でてやると、うっとりとして私の甲に手を重ねる。
    引っ込んでいた舌も直ぐに姿を現して、素直に甘える様に私の舌を追い掛けた。
    上顎や中也の善い所に触れると、鼻から抜ける声が漏れて、抵抗すること無く快感に酔いしれる。

    名残惜しくも唇を離すと、熱い呼吸を吐きながら、中也は私の手の甲に頬を寄せた。

    「太宰、手、痛くないか……?」

    そう心配そうに尋ねてくる。屹度、学校で叩いてしまったのを気にしているのだろう。乾いた音さえ鳴ったが、痛みは全く無かったのだが。
    大丈夫と言うと、中也は「良かった」と眉を下げ、私の手に擦り寄った。

    こんなにもしおらしく、愛らしいのは今だけだ。
    二人きりの時だけ、中也は一等素直になる。

    人がいると何かと嫉妬をしてしまい、如何しようもなく私に冷たく当たってしまう。そして、家に帰り二人きりになると、毎回今の様に「ごめん」と後悔して涙ぐむのだ。
    私は、その様が酷く愛らしくて堪らない―― だから、態と中也の前で他人と関わってみたりもするのだが……当然、本人には内緒だ。

    「かわいいね、中也」

    これは、圧倒的な優越感。そして、確かな独占欲。
    他人から見たら歪んだ愛情だとも言えるのだろう。だが、それが何だ。

    「もっともっと、私を見て」


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