かがやきを閉じ込めて (金平糖)いつもよりも軽い足取りで退社して家を目指す。
ちらりと仕事鞄の中を覗けば、かわいらしい桃色の巾着が目に入った。自分には似つかわしくないそれは、留守番してるいい子へのお土産だ。早く、早く帰って食べさせてやりたい。どんな反応をしてくれるだろうか。喜んでくれるだろうか。期待に胸を膨らませながら帰り道を急いだ。
「ただいま」と玄関の扉を開ければ、居間から「おかえり」とゲゲ郎が顔だけ出して迎えてくれる。靴を脱いで自分も居間へと入ると、鞄の中からずっと出番を待っていた桃色の巾着を取り出した。
「ほら、今日は土産があるぞ」
そう言って目の前にぶら下げれば、興味津々な視線が巾着へと注がれる。「手を出して」と言えばすぐ両手で皿を作ってくれた。本当に素直でいい子だな、と少し笑ってその上にぽんっと巾着を乗せてやる。
大事そうに、胸の位置までそれを下ろして眺めるゲゲ郎。
「開けてみろよ」
促せば、赤色の紐がゆっくりと解かれ、袋の口が開く。中には白や黄、緑、橙、青などの色とりどりの粒が入っていた。
「なんじゃこれは!」
「金平糖っていう砂糖菓子だ」
「こんぺいとう…!」
初めて出会ったものへの興味を隠さずに俺の言葉を繰り返す。袋の中から一粒つまみ出すと、くるくると手首を回しながらそのデコボコとした不思議な形を観察した。
「おもしろい形をしておるのう」
「だよな、俺もどうやって作ってるのかは知らないが」
「それに、きらきらしてて、まるで宝石みたいじゃ……」
うっとりとした表情で部屋の照明にかざしながらそう呟くゲゲ郎に、なるほどその発想は無かったな、と子どもらしい視点に関心する。
「食べてみろよ」
「ああ!」
ぱくっと先ほどまで観察していた一粒を口に含んで舌で少し転がした後、
「甘い!」
とその丸い瞳をきらきらと輝かせてそう言った。
そりゃ良かった、と帰り道で想像していた以上の反応をしてくれて俺も満足する。
「甘い!こんなに甘い宝石もあるとは……!」
目をぱちぱちさせながら嬉しそうにそう言って次の一粒へ手を伸ばすゲゲ郎。
瞼が開かれる度にきらきらと除く赤がまるでルビーみたいで、その瞳こそ宝石箱に閉じ込めておけたらいいのになと思った。