Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

    置いているものは順次くるっぷへ移動します。
    Tumblerもあるのでお好みで。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👏
    POIPOI 83

    105@海自艦擬人化

    ☆quiet follow

    404命名話。403目線。追いかけてきた存在と生まれたての子を同じ名前で呼ぶのを最初のうちは慣れないんじゃないかなと

    #擬人化
    Humanization
    ##本編
    ##3_affection

    次代への意思 夜からパラパラと降っていた雨は幸い止んだようだ。ただ、空を見上げるとまだ今にも降り出しそうな曇天が広がっている。天気予報を確認してみたところ残念ながら気温が上がる見込みはなさそうだったから、羽織るものを適当に掴んでから部屋を出た。
     普段であれば作業車が行き交い、多種多様な騒音が響く構内も、今日ばかりは式典に向け多くの人が段取りの指示を出し合っている声が聞こえるだけの静かな朝だ。まだ式の開始まではまだ少し余裕があると様子見へと足を進めた船台、その上の紅白幕と信号旗に飾られた艦本体の傍らに主役も見受けられた。しばらく様子を見ていたら気配を感じたのかパッと振り返り、そのまま駆け寄ってきたので抱き止めてやる。どうやら式の用意が整うにつれ緊張してきたらしい。ぎゅう、と腰にしがみついたまま離れようとしない。昨日までは楽しみで仕方なさそうな様子で飾り付けられた艦を飽きることなくきらきらとした眼差しで見つめていたものだが。顔を見ようとして触れた頬が冷たく、ひとます持ってきておいた羽織りをマントのようにして被せてやる。子供用の上着を用意してなかったから不格好ではあるのだが、一時凌ぎには十分だろう。落ち着かせようとトントン、と背を叩きながらどうしようかと思案する。そろそろこの場所には一般客が入る頃合いのはずだ。
    「このままこっち居るか?」
     試しにそう聞いて見ればこくんと頷いた。それならばと邪魔にならないよう端へと避けておく。しばらくしてざわざわと談笑する賑やかな声と期待に満ちた顔が溢れると、恥ずかしそうにしがみついていた腕をほどいた。温かくてちょうど良かったんだがと少し残念にも思うがそれは置いておこう。
     命名の時を待つ傍らの子は周囲の楽しそうな空気にようやく緊張が解けたらしく、よく知っているだろうに背伸びをしてまで見ようとしているので苦笑する。ひょいと抱き上げて肩に乗せてやると嬉しそうに笑う。しっかり掴んでおけよと声を掛け、自身も落とさないよう注意を払う。こうしていると父親みたいに見えるんだろうなぁと広報に来る親子連れの姿を思い返しながら、しっかりと預けられている温かな重さに応える。自分のことを子供好きな方ではないと思っていたが、身内となればどうやら別らしい。
     考えごとで進行を聞き逃したが、先程まで下がっていた幕が上がったことで命名されたことを知る。
    「ちよだ」
    「……ち、よだ?」
     書かれている名を読み上げた。それを復唱する、まだ小さくか細い声が耳に届く。名が無い内の空気のようだった存在がゆっくりと根付いていく。肩の重みが増したような気がしてゆっくりと地に下ろし、しゃがみこんで目線を合わせた。
    「うん。ちよだ。いい名前貰ったな」
     うまく笑い掛けてやれているだろうかと思う。ちよだの築いた多くのものを名前ごと継いでいく存在というのは喜ばしいものだろう。ただ、同じ名が付くのは追い掛けてきた背中が見えなくなることでもあるから。嬉しそうにはしゃぐ子供に気取られないようそっと鼻を啜る。
     横須賀でももう報せを受け取っただろうか。こちらからの連絡は呼び慣れるまでの時間を少しだけ置いた、その後で。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
    1383

    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
    703

    related works

    recommended works