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    shidu_k13

    @shidu_k13

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    shidu_k13

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    アイドル赤黒(でもアイドル要素はあまりない…)

    #赤黒
    redAndBlack

    きらめく君の一番星 うたた寝の中で、夢を見た。
     夢の中で、ボクたちは高校のユニフォームを着ていた。広い体育館では、ボールが弾む音と、靴底が擦れる音がする。声援を背に、ボクたちはコートを駆け回っていた。
     はらり、と赤い髪が揺れる。汗で濡れた額にその毛先が張り付いて雫が落ちた。しなやかな身体は美しく跳び、ボールは華麗にゴールへと吸い込まれていった。まるでドラマのワンシーンのようなシュートから、目が離すことができなかった。
     かと思えば場面は切り替わって、今度はぱちり、と盤面を叩く音がした。真剣な横顔は、息をするのも忘れるくらいに綺麗だった。迷いのない指先が、将棋の駒を運んでゆく。勝利だけを見据えた、強い眼差しだった。
     その次は、大きな会社の社長。かっちりとしたスーツを着込んだ彼は、背筋をぴんと伸ばして大勢の人前に立っていた。人を従えるカリスマ性のあるキミに、誰もが信じてついてゆく。
     どの瞬間も、キミは人を惹きつけて離さない。誰よりも輝いて圧倒的な存在感のあるキミだけれど、そんなキミをさらに際立たせられる、唯一の存在になれたら。そして、キミの輝きには敵わなくても、ボクも、誰かしらのひとすじの光になれたら。そう思って、ひたすら走り続けてきたのだ。
     まぶたの裏で、ペンライトの波が揺れている。ステージを照らす照明に、重たくきらびやかな衣装をひるがえす。そのたびにライトの中で埃がキラキラと舞って、熱気を表す額の汗が、今度はバミリの上にぽたりと落ちた。
     お揃いのイヤモニを通して、次の指示が飛んでいる。隣を見れば目が合って、赤く宝石みたいな瞳が美しく光る。溢れんばかりの歓声の中でも、その声は、はっきりと聞こえた。
    「黒子」
     おだやかなラブソングを紡ぐ歌声も、ファンサービスで甘い言葉を囁く低めの声も好きだけれど、一番は、その名前を呼ぶ、キミの声だ。世界で一番、大好きな声。

     優しい手つきに誘われて目を開けば、夢から醒めてもまだ夢のようなきらびやかさだった。
     楽屋のLEDライトの下も、まるでスポットライトに変わるよう。まばたきをするたびに、ちかちかと星が瞬くように光が溢れる。まだぼんやりとした、覚醒しきっていない視界では、本当に本物の王子様が現れたのかと思った。目を擦ろうとした手を、ぱっと取られる。
    「メイクがよれるよ」
    「あ、そうでした…すみません」
    「今機材のチェックしてるから、三十分後くらいに撮影だって」
    「わかりました。ありがとうございます」
     空いたパイプ椅子に腰掛けて、赤司君は小さく息を吐いた。
     ここ最近、いつもの雑誌撮影やインタビューに加えて、アルバム作成とツアー準備、グッズ制作もあって忙しい。赤司君は並行して映画撮影も行っているから、ボクよりずっと忙しいはずなのに、いつも疲れた顔ひとつ見せずしゃんとしていた。その合間を縫ってダンスレッスンとボイストレーニングも欠かしていない。しかも最近は英語はもちろん、他言語の勉強もしているし、クイズ番組に出てきそうな知識を片っ端から頭に入れているから、もう天は彼に色々と与えすぎだ。
    「赤司君、ちゃんと寝てますか」
    「寝てるよ。大丈夫」
     カメラの向こうには見せないような、少し子供っぽい笑顔で彼は笑った。
     でも、ボクは知っている。彼は、世界中の誰よりも努力していること。悔しい思いも、辛い思いもたくさんしてきたことを。彼の輝きは天性のものだけれど、その輝きを恒久のものにしたのは、間違いなく彼の努力だ。一番近くにいることを許されて、ずっとキミを見てきた。心から尊敬していた。だけど、背中を見てばかりではいられない。隣に立って、肩を並べる。キミばかりに、観客の視線を奪われてばかりではいたくない。その一心で、ひたすら走り続けてきた。
     じっと見つめていた視線が、ぱちりと交わる。
    「というか黒子、今日、その髪型でいくの?」
    「今回は自然でいこうかなと思って…。変ですか?」
    「変じゃないけど…。ちょっと触ってもいい?」
    「あ、はい。お願いします」
     今日はツアーグッズ用のフォトセット撮影の予定で、衣装以外はある程度自由でいいと言われている。だから今回はいつもより自然な感じでいこうと思ったのだけれど、赤司君はしっかりとヘアセットをしていた。いつもは下ろしている前髪を上げて、左で分けている。どんな姿も格好いいけれど、前髪を上げている髪型も新鮮でよく似合っていた。
     鏡の前に座らせられて、赤司君は近くにあったヘアアイロンのコンセントを入れる。彼の指先が、ボクの毛先をそっと撫でた。
     ファンの人は知らないかもしれない。彼の手は丁寧に手入れはされているけれど、マメが浮かんで、皮が少し厚くなっている。体温は、ボクより少し高い。
     温まったヘアアイロンを、赤司君がするするとボクの毛先に滑らせた。
    「そういえば黒子、さっき寝言言ってたよ」
    「え!?なんて!?」
    「よく聞こえなかったけど、すてきです、とか言ってたような」
     なんの夢を見てたの?と言って、赤司君は笑った。鏡越しの笑顔は破壊力がすごくて、眩しくて目を細めたくなる。けれど、それと同時にとても恥ずかしい。夢の中でも、赤司君に会っていたなんて。
    「笑わないでくださいよ」
    「うん。笑わない」
    「もう笑ってるじゃないですか…。色んな赤司君が、夢に出てきたんですよ」
    「…それは、どういうこと?」
    「ユニフォーム着てバスケしてる赤司君とか、着物姿で将棋を指してる赤司君とか、スーツで社長さんしてる赤司君とか…。でも、どの赤司君も格好良くて素敵でした」
    「……」
     一瞬の無言の間に、また赤司君はアイロンを滑らせる。右側で分けて、左に毛先が流れていった。まるで赤司君と対になるような髪型だ。鏡の中の自分が、みるみるうちに変貌を遂げてゆく。もちろん専属のスタイリストはつくけれど、赤司君はヘアメイクもとてもうまい。赤司征十郎の手によって変わってゆくと思えば、自分にとても自信がつくように感じた。
    「オレは、黒子のほうが格好いいと思うけどね」
    「またまた…」
    「本当だよ。嘘じゃない」
     これでどうかな、と言って、赤司君が毛先にバームを馴染ませる。彼と同じ匂いのバームだ。花のように甘い、けれど気品のある香り。
    「ほら、格好いい」
     両肩に手を添えられて、鏡の中の自分と、赤司君を見比べる。誰がどう見ても赤司君のほうが格好いいと思うけれど、でも、他でもない彼がそう言ってくれるのなら、ボクだって、胸を張ってカメラの前に立とうと思えた。
    「…夢にはまだ続きがあって」
    「うん」
    「そんな格好いい色んな赤司君を、ボクは隣で見ているんです。誰よりも近くで」
    「…うん」
    「これから先も、キミの隣で、格好いいキミと、色んな景色を見たいって。そう思いました」
    「もちろんだよ。見たことのない景色は、まだたくさんある」
     鏡越しに目が合って、それから、顔を見合わせて笑い合った。両肩に触れる大きな手のひらは、誰よりも頼り甲斐があって、描いた夢を勝ち取りに行く手だ。その手をずっと取って生きていきたいと、本気で思っている。ボクの人生は、赤司君のもの。赤司君の人生も、ボクのものだ。
     この世界には、知らない景色も、見たことのない場所もたくさんある。そこに二人で行くのだ。未来は不透明で不確定だけれど、二人でなら、どこまででもいけると信じている。
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