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    nekotakkru

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    #リョ三
    lyoto-3
    #SD腐

    口は災いの元「それ、みっともないからやめた方がいいッスよ」
    「あ?」

    宮城に指摘され、三井は反射的に喧嘩腰で返す。そんな威嚇に怯むことなく指さされた、それ、とは。
    指先を辿る先にあるのは三井の手の中のコーヒー牛乳のパック。大きな手の中ではパックが自販機で並んでいた時よりも小さく見える。これの何がみっともないのか。コーヒー牛乳と言うなら宮城の手の中にもある。加えて言うなら、自販機の前で何を選ぶか悩んでいた三井の隙をついてボタンを押された、ほとんど強奪された代物だ。しかし示された先は正確にはパックではなかった。パックに突き刺したストローと、それを齧る三井の口。これか?と尋ねるように敢えて口をい、と噛んでみせる。宮城の眉が物言いたげに上がった。

    「そう、それ」
    「あんだよ、うるへーなぁ。オメーは母ちゃんかよ」
    「んじゃアンタは赤ん坊かよ」
    「あん?」
    「ぁあ?」

    三井は上から見下ろすように、宮城は下から覗き込むように睨めつける。数秒の後、フンっと鼻を鳴らすとお互いそっぽを向いた。『もう二度とケンカをしない』と言う仏の言葉は未だ健在だ。




    ◇◇◇◇◇

    午後一番の授業は物理だった。ただでさえついて行けない授業ばかりの中、特に物理とは相性が悪い。サボろう。そう決断すると三井は予鈴が鳴る中、教室とは反対の方向へ向かった。
    今朝買ったばかりのバスケ雑誌のお供にと、飲み物を選ぶため自販機の前で熟考する。せっかくのいい天気に好きな雑誌、どうせなら最高のコンディションで読みたい。漸く商品も決め、いざボタンを押そうとした時、見計らったようなタイミングで下から手が伸びて先を越された。いつの間に潜り込んだのか、宮城が取り出し口からコーヒー牛乳を得意げに見せてきた。

    「あ、テメェ!」
    「あざーす」

    素早くストローをパックに刺して口をつける。悪びれることなくコーヒー牛乳を飲む宮城に拳を震わせながら、三井はもう一度自販機へ小銭を入れた。今度は迷いなくボタンを押す。物が落ちる音の後にコーヒー牛乳を取り出すと、まるで親切とでも言うように宮城はそれを差し出した。三井が忌々しげに受け取り、歩き出す。倣うように宮城もあとを着いてくる。着いてくんな、と一蹴しても、たまたま方向が同じなんスよと流された。自分の言うことを聞かないことは充分に承知している、三井はわざと大きな舌打ちをして、生意気な後輩の好きなようにさせた。
    体育館の裏へ行き、誰もいないことを確認して適当に腰を下ろす。人一人分の距離を空けて宮城も隣へ腰を下ろした。雑誌を開いて文字を追う三井とは対照的に、宮城は壁に頭を預けたまま行儀悪くパックの中を啜っている。何しに来たのかと様子を伺ってみるが、宮城は退屈そうに欠伸をするだけだった。
    読みたかったを記事を読み終え、余韻に浸るよう飲み物に手を伸ばす。待ってましたとでも言うように、宮城は雑誌を催促してきた。もはや何も言うまいと三井は素直に雑誌を渡す。体育館の中では体育の授業が行われているのか、床を擦る靴音が聞こえた。時折上がる掛け声に、部活の風景が重なる。ボールが床を弾む音、流れてくる汗、ぶつかる体やネットが揺れる音、全部を味わいたくて体がむず痒くなった。早くバスケしてぇな。無意識な欲求不満が仕草に現れていたのか、咥えていたストローを噛んでは舌で転がし、また噛んでを繰り返していたら、宮城の注意が飛んだ。

    「それ、みっともないからやめた方がいいッスよ」

    ◇◇◇◇◇




    注意されれば反発したくなるもので、三井は相変わらずストローを弄んでいた。雑誌を見ているフリをしてこちらを睨んでくる宮城に気付いてはいるが、止める気は無い。嫌ならどこかへ行っちまえと思っていたら、乱暴に雑誌が閉じられた。人の物になんてことを、と不満を漏らす前に宮城が三井の前に立ちはだかる。思わずたじろぐが逃げることはしない。と言うよりも出来ない。

    「な、なんだよ」
    「それ、やめろっつってんでしょ」
    「はぁ?」

    キレのいい手刀が紙パックを弾いた。まだ少し残っていた中身が漏れ、無様に転がる。傍らの雑誌に飛び出た液体がかかり、茶色い染みが滲んだ。文句を言おうと大きく開けた口にすかさず宮城の指が侵入する。無防備になった舌を中指と薬指で挟まれると無理やり外へと引っ張りだされた。

    「はがっ!」
    「さっきからチロチロチロチロ、何なんスかっ」

    不満を訴えるよう強弱をつけて舌を挟まれ、先端を親指の腹で撫でられる。日々の鍛錬で硬くなった皮膚と指紋のザラつきに、妙な感覚が三井の舌を刺激した。抵抗のため腕を掴むもピンと張られていては押し返すことが出来ない。噛めば逃げられるかもしれないが、大事な指を痛める訳にはいかなかった。
    親指が舌先から舌体へゆっくりと侵略を始め、塗り込めるように全体を撫でられる。自由になった人差し指は上顎の凸凹を確かめるようになぞった。嘔吐くことのない絶妙な奥から歯茎の先を何度も往復する。頭を振りたくなるが、歯が指を傷つけることを恐れてそれもままならない。掴んだ腕に力を込めることでやり過ごすしか無かった。
    時折、人差し指が前歯の付け根を手前に引いて刺激する。その度に治療後の為敏感になっているのか、はたまた失うことを思って故か、大袈裟に体が跳ねた。無理に開かされた口は絶えず涎を供給し、そのせいでどんどん指の潤滑を手助けしてしまう。垂れる雫を反射的に吸えば指も巻き込んでしまい、宮城の息が一瞬詰まった。
    指の猛攻が止まった隙に逃げようとしたのを悟られ、更に指が奥へと侵入する。口内で手の平が反転し、今度は人差し指と中指で無理やり横に開かれた。柔らかい内部を楽しんでいるのか、手前や奥、上下を余すことなく擦られる。行き場を失った舌で指を押し返そうとしても、あっさりと挟まれ逆にぐにぐにと扱かれる始末だった。ならばと、今度は抗議のために軽く歯を立て甘噛みしてみる。しかし指は止まるどころか、煽るように犬歯を撫でた。
    涎は止めどなく溢れ出し、息を吸うため、涎を吸うために、時折赤ん坊のように指に吸い付く。その度に僅かな安心感と甘い痺れが思考を鈍くさせた。無理やり暴かれ酸素が薄くなったのか、眠る前のような心地良さを錯覚する。このままでは駄目だと上目で睨めば、同じくこちらを見ていた宮城と目が合った。が、視線の先は三井と言うよりも三井の口を重視している。試合時のような、興奮して止まない熱を孕んだ目に、項の辺りがぞわりと総毛立った。

    どれほど時間が経ったのか。散々暴れていた指が満足したようで、ゆっくりと引き抜かれた。すっかりふやけた親指が口紅を引くように三井の唇をなぞる。離れる直前に意趣返しとしてちゅう、と吸ってやれば宮城の目が見開かれた。そのまま低くなった頭が影を作り三井の方へ寄せられる。鼻先が触れる寸前、チャイムの音と共に鈍い鈍痛が額を襲った。

    「っっってぇぇぇぇぇ!!!!」
    「─────は、ざまぁみろ!また差し歯にしなかっただけありがたいと思え!」

    三井と同じように額を抑えながら、宮城が得意げに指を指す。それを振り払って三井は口元を拭った。何しやがる、アンタがみっともない真似してるからから身をもって教えてやったんデショ、余計なお世話だ、等々、続く言葉は止まらず次第に声も大きくなる。騒ぎを聞きつけた他の生徒が二人を見つけ少し怯えた様子を見せた。教師を呼ばれては不味いと宮城はさっさと荷物をもって逃げるように生徒とは反対の方へと向かう。遅れて三井も荷物を持って宮城の後に続いた。互いが互いのせいにして、乱暴に小突き合いながら校舎の中へと逃げていく。自クラスの階まで来ると、三井は追い払うようにしっしっと手を振り、対して宮城は中指を立てた。

    「オメーのせいで散々な休憩時間だった」
    「授業中だよバーカ」

    最後まで憎まれ口を叩いてそれぞれの教室を目指す。自席に乱暴に座ると、三井は未だ感触が残る唇に触れた。散々に掻き回された口はひりひりと痛むのにどこか物足りなさを感じる。無造作に持ってきた荷物の中にはひしゃげたパックがあり、刺さるストローに目が奪われた。徐にそれを口に咥える直前、くそっ、と小さく漏らして三井は立ち上がる。憎たらしい後輩の顔と少しの劣情を振り払うべく、紙パックをゴミ箱に放り込んだ。
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