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    しもやけ

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    主にえむ・X(Twitter)百々秀

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    しもやけ

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    2人のオフの日に秀を水族館に連れ出す百々人の話。
    ※ちょっと暗い

    #百々秀

    回遊魚/百々秀「先輩は知ってますか? マグロは泳ぐのをやめると死んでしまうらしいですよ」
     
     水族館内に設置されたドーナツ型の大きな水槽を勢いよく泳ぐマグロを眺めながらしゅーくんはそんな話をした。
     展示物の魚たちが映えるようにあえて照明を落とされた館内は薄暗かった。その中で、水槽のマグロたちは水面の上から降り注ぐ光を一身に浴びてギラギラと青光りしていた。
     
     常に猛スピードで泳ぎ続けるマグロを水族館に展示するのは難しく、大きな水槽を必要とする。常設で展示している水族館は全国でも数箇所しかないらしい。今日訪れた水族館は偶然その一つだった。
    「その話なら僕も知ってるよ」
     
     マグロは、泳いで口に海水を入れ、それをエラに通すことで呼吸している。そのため、泳ぐのをやめると窒息して死んでしまうらしい。
     だから、生まれたその日から死ぬ時まで、眠っているときですら、一度も止まることなく泳ぎ続けているそうだ。
     
    「しゅーくんって、なんかマグロみたいだよね」
    「……、それって悪口ですか?」
     
     高速で泳ぐマグロを見て、彼をせっかちな奴だと言っていると思われたのか。それとも俗語的な悪いイメージが浮かんだのか。「マグロ」という言葉は彼の中では悪口判定されたようだった。
     僕はしゅーくんの言葉を聞いて、違うよ、と慌てて訂正して、眉尻を下げて落ち込んだ表情を見せる。それを見て彼は、冗談ですよ、とくすくすと笑う。
     
    「ねぇ、しゅーくん、僕たちはマグロじゃないから立ち止まっても死なないんだよ」
     
     僕の言葉に、しゅーくんは少しだけ悲しそうな顔をしてから、何も言わずに僕から目を逸らした。
     
     ここ最近のしゅーくんはアイドルとして、ユニット以外にも個人での仕事、それに生徒会の仕事も立て込んでいた。仕事だけなら問題はなくても、コソ練常習犯にとっては過密スケジュール。彼の睡眠時間は自然と削られた。
     そんな彼に少しでも息抜きをさせたくて。
     数ヶ月ぶりに被った僕たち二人の貴重なオフを僕の我儘で彼をこの水族館に連れてきた。しゅーくんは家で一人ゆっくり過ごす予定だって言ってたけど、今日だけは許してほしい。
     
     薄暗い館内の中、しゅーくんは泳ぎ続けるマグロをじっと見つめていた。
     
     水槽をライトアップする光にうっすらと照らされた彼の横顔に、「痩せた?」なんて無粋なことは聞けなかった。
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